米商務省、輸出管理対象の新リスト「軍事エンドユーザー・リスト」発表
(米国、中国、ロシア)
ニューヨーク発
2020年12月25日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は12月21日、輸出管理規則(EAR)に新たに「軍事エンドユーザー・リスト(MEUリスト)」を加えると発表した。米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を軍事転用する恐れがある外国事業体を特定したリストで、中国籍で58、ロシア籍で45の計103の事業体が掲載された。これら事業体に指定された米国製品を輸出・再輸出・国内移送(以下、輸出など)する場合はBISの許可が必要となるが、「原則不許可(presumption of denial)」となる。正式には12月23日の官報で公示し、同リストも同日から有効となっている。
BISによるとMEUリストは、BISが2020年4月末に発表し6月末から有効としている中国、ロシア、ベネズエラ向けの輸出管理強化の新規則(2020年5月7日記事参照)を補足するもの。BISは新規則の施行に当たってパブリックコメントを募集したところ、MEUの特定を求めるコメントがあったことから、今回それに応えたとしている。新規則はEARの第744条21項で規定しており、BISが指定した品目を当該3カ国のMEUに輸出などする場合は、「原則不許可(presumption of denial)」になるとしている(注1)。同規則における輸出管理対象の品目は第744条の補足文書第2号(Supplement No.2)で輸出管理分類番号(ECCN)に基づいて特定しているが、MEUについては広範に解釈できる定義を記載しているのみだった。
BISは今後もMEUリストを更新する可能性があるとしている。また、同リストは網羅的なものではなく、掲載がない事業体も注意が必要な場合があるとしている。例として、米国防省が1999年度国防授権法第1237条に基づいて指定した事業体(注2)への指定品目の輸出などは注意すべきとしている。
今回指定された事業体には、中国の国有航空関連メーカーである中国航空工業集団(AVIC)の関連企業7社や、ロシアの航空機メーカーのイルクートなど、航空宇宙関連企業が多く含まれている。
(注1)EAR第744条21項に関する「よくある質問集」はBISのウェブサイトで確認できる。
(注2)国防省はこれまで、2020年6月と8月、12月にいずれも中国企業計35社を「共産主義中国の軍事企業」として指定している。トランプ政権は別途、米国人によるこれら中国企業への証券投資を禁ずる大統領令を11月12日に発令している(2020年11月16日記事参照)
(磯部真一)
(米国、中国、ロシア)
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