バイデン米大統領、気候変動対策の大統領令署名、気候変動危機を外交・安全保障の中心に

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月29日

ジョー・バイデン米国大統領は1月27日、国内外での気候変動対応に関する大統領令に署名した。大統領令で、気候変動が外交政策と国家安全保障の中心になることを明記した。バイデン大統領は署名に先立ってホワイトハウスで会見し、「クリーンエネルギーの未来を見据えることで、米国は世界をリードする」と述べ、「2035年までに炭素汚染のない電力部門構築を達成する」とした。また、クリーンエネルギーにかかる新技術が経済成長を促し、より多くの雇用を創出すると強調した。

今回の大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと同時に公表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに記載している主な事項は以下のとおり。

  • 気候変動危機を米国の外交政策と国家安全保障を検討する上で中心に据える。
  • 気候変動問題への意識を高め、11月に予定されている第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)やその先の取り組みに貢献するため、4月22日(地球の日)に気候変動サミットを大統領が主催する。
  • ホワイトハウスに国内の気候変動対策を調整する部署を設置し、同部署を率いる国家気候変動担当大統領補佐官(注1)のポストを新設する。
  • 国家気候変動担当大統領補佐官は、政府調達権限を用いて2035年までの炭素汚染のない電力部門の構築や連邦・地方政府による排出ガスゼロ車両の調達を促進する計画を策定する。環境諮問委員会議長、政府一般調達局(GSA)局長、行政管理予算局(OMB)局長に対して、商務長官や労働長官、エネルギー長官らと連携して同計画の策定を支援するよう指示。
  • 内務長官に対して、石油・ガス開発のための連邦所有地・水域の新規リースを一時停止し、リース許可・手続きの包括的な見直しを行うよう指示(注2)。
  • 各政府機関に対し、化石燃料に対する補助金を特定し、連邦予算が化石燃料に直接充てられることがないように保証するための措置を講じるよう指示。OMB局長に対しては、2022会計年度以降の予算要求で化石燃料補助金の削減に取り組むよう指示。
  • 内務長官に対して、洋上風力発電を2030年までに倍増させるために、連邦所有地・水域で再生可能エネルギー発電を増やす施策を特定するよう指示。また、同じく内務長官に対して、2030年までに連邦所有地・海域の30%を保全するための施策を提出するよう指示。

日本時間28日未明に行われた日米首脳の電話協議では、菅義偉首相から米国のパリ協定への復帰決定を歓迎するとともに、両首脳は気候変動問題などについて日米で緊密に連携することで一致したとされている(1月28日付日本外務省発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注1)バイデン大統領は12月、同ポストにジーナ・マッカーシー元環境保護局(EPA)長官を指名した(2020年12月22日記事参照)。

(注2)米メディア報道によると、バイデン大統領のこの決定に関し、コロラド州デンバーに本拠を置くウェスタン・エナジー・アライアンスは、大統領には連邦所有地のリースを禁止する権限はないとして、石油・天然ガスを生産する200社を代表して訴訟を起こしている〔国営放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)1月28日〕。

(宮野慶太)

(米国)

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