IMF、2020年の世界経済見通しを上方修正

(世界)

国際経済課

2020年10月14日

IMFは10月13日発表の「世界経済見通し(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」で、2020年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)をマイナス4.4%とした(添付資料表参照)。前回(6月時点)見通しのマイナス5.2%(注)から0.8ポイント上方修正した(2020年6月25日記事参照)。第2四半期(4~6月)のGDPが予想を上回る結果になったことと、第3四半期(7~9月)に強固な回復を示す指標がみられることを反映した。2020年の経済減速が想定よりも緩和されたことなどを受け、世界の2021年の成長率見通しを前回予測から0.2ポイント引き下げ、5.2%とした。

国・地域別に見ると、先進国の2020年の見通しをマイナス5.8%と2.3ポイント上方に修正した。とりわけ米国とユーロ圏の見通しの引き上げを反映した。一方、新興・途上国をマイナス3.3%と0.2ポイント下方に修正した。中国の見通しを引き上げたものの、インドなどを引き下げたことが影響した。

IMFの基本シナリオ(ベースライン予測)は、社会的距離確保(ソーシャルディスタンシング)は2021年に入っても続くものの、新型コロナウイルスのワクチン接種の広がりや治療法の改善とともに解消するという想定。また、2022年末までに局所感染が低水準に抑えられることを前提にしている。

他方で、ベースライン予測のリスクバランスを定量的に評価することは難しいとしながら、下振れリスクは依然として大きいと指摘。予測が下振れる要因として、感染爆発(アウトブレーク)の再発、政策的支援の時期尚早な撤回、財務状況の再逼迫化、流動性の不足と倒産、社会不安の激化、地政学的緊張、貿易政策の不確実性と科学技術面での摩擦、気象関連の自然災害を挙げた。上振れ要因については、経済悪化がそれほど深刻ではないことが判明すること、財政対策の延長、生産性向上の加速、治療法の進展、安全で効果的なワクチンの製造を挙げた。

IMFは、ワクチンや治療など新型コロナウイルスとの「闘い」の進展に応じた下方と上方の両シナリオも同時に試算した。下方シナリオは、ワクチンなどあらゆる面で、ベースライン予測よりも進展に遅れが生じた場合を想定。接触機会が多い「接触集中型」分野の活動悪化などにより、2021年の成長率はベースライン予測から2.9ポイント下振れる。想定よりも早く進展する上方シナリオでは、2021年の成長率が0.5ポイント上振れるとした。

(注)世界経済成長率を算出する際に用いられる国・地域GDPの基準となるPPP(購買力平価)が変更されたため、6月発表時(マイナス4.9%)と値が異なる。

(朝倉啓介)

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