英国政府、移行期間終了後の対EU物流対策を強化
(英国)
ロンドン発
2020年10月27日
英国政府は10月22日、移行期間終了後の物流混乱リスクを最小限に抑えて貿易の流れを維持するための一連の措置を発表した。
政府は8月に産業界と行った協議結果を踏まえ、EUとの玄関口であるイングランド南部ケント州の高速道路M20の円滑な運行を維持するための計画「オペレーション・ブロック」を、必要に応じて実施すると発表した。同計画は当初、合意なきEU離脱(ノー・ディール)となる場合の対策として計画されていた(2019年10月16日記事参照)。2019年10月31日に施行された現行法を改正するかたちで、2021年1月1日から実施可能にする。
ハイウェイズ・イングランド(交通管理局)は、高速道路M20のジャンクション8~9の区間の道路の路肩に、可動式分離帯を設置する作業を進めている。これにより、専用車両を使って数時間以内に、貨物車両の専用路線を確保することが可能になる。
政府はまた、国境運用モデルの改定版(2020年10月15日記事参照)を2020年10月8日に公表しており、ドーバー港または英仏海峡トンネルを経由してEUに向かう7.5トン超の重量物車両(HGV)が、国境を越える前にEU側の輸入関連書類を用意できているかを確認するオンラインサービス「重量物車両の確認(Check an HGV)」を12月までに導入するとしている。また、同サービスを通じて「ケントアクセス許可証(Kent Access Permit: KAP)」を取得することを運転手に義務付ける。KAPは24時間有効で、同サービスを使用しない場合や不正な申告をした場合は、300ポンド(約4万1,100円、1ポンド=約137円)の罰金が科される可能性がある。
さらに政府は、生鮮または生きた水産品や生まれたてのひよこなど、特に時間的制約が大きいものの輸出を行うHGVを優先することも発表。また運送業者に対しては、欧州運輸大臣会議(ECMT)許可(注)を申請することも奨励している。
これらの発表について、物流業界団体のロジスティクスUKは「物流事業者が、2021年1月1日以降のサプライチェーンの混乱に対処するための対応策が導入されることを再確認できた」と評価する一方で、「事業者が効果的な計画を立てるために必要な詳細の多くが不足している」と続け、特にECMT許可取得の要否や申請方法について明確な情報が示されていない、との懸念を示した。また、英国農業者連合(NFU)は、鮮魚やひよこに限らず、さらに多くの産品に優先的地位を与えるよう強く求めてきたことが聞き入れられなかった、と不満を表明している。
(注)ECMT参加国での輸送を許可するもので、キプロスを除くEU加盟国やその他欧州の国が枠組みに参加している。
(宮口祐貴)
(英国)
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