ミシェル常任議長、EU首脳会議に先立ち復興パッケージの修正案提示

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月13日

欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長は7月10日、ブリュッセルで同月17、18日に開催する特別欧州理事会に向けた独自案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをEU加盟国に提示した。同理事会の主要議題となる復興基金「次世代のEU」と2021~2027年の次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)からなる復興パッケージ案(2020年5月28日記事参照)の修正点や方向性を示したもの。常任議長は、6月19日にオンラインで開催された首脳会議(2020年6月22日記事参照)で「パッケージ案への強い反対が明らかになった」とし、その後、加盟国首脳や欧州議会と議論を重ねてきたことを明らかにした。

次期中期予算を260億ユーロ縮小、復興基金の規模は現行案を再確認

ミシェル常任議長は、復興パッケージへの政治合意を得るために、次の6つの構成要素の適切なバランスを取る必要があると述べた。

  1. MFFの規模:欧州委員会が5月27日に提案した1兆1,000億ユーロから260億ユーロ縮小した1兆740億ユーロを提示。
  2. 加盟国分担拠出金の払い戻し(リベート制度):デンマーク、ドイツ、オランダ、オーストリア、スウェーデンの5カ国について、現行予算における分担拠出金の支払い額を調整し、2020年ベースで算出した相当額を一括で払い戻すことを確認。この提案には、5カ国がEU予算から享受する利益を拠出金が超過しており、リベート制度の維持を求めていることが背景にあるとみられている。
  3. 復興基金の規模:欧州委が最大7,500億ユーロを金融市場から調達する現行案を再確認。
  4. 復興基金における補助金(grant)と融資(loan)の比率:現行案(返済不要の補助金5,000億ユーロ、融資2,500億ユーロ)のバランスを保持することを提案。
  5. 「復興・回復ファシリティー」の分配:「新型コロナウイルス危機」による影響が大きい加盟国に優先的に割り当て、復興基金のうち5,600億ユーロを占める同支援策について、総額の70%を欧州委の提案する分配方式に基づいて2021年と2022年中に支援内容を確定させ、残りの30%は、2020年と2021年の各国GDPの変動を考慮して2023年に確定させると提案。実際の支出は2026年までに完了するとした。
  6. ガバナンスと付帯条件:各加盟国には、ヨーロピアン・セメスター(EU加盟国間の経済・財政政策の協調枠組み)に基づく復興計画の提示や、気候変動対応、法の支配といったEUの政策方針と基本原理の順守が求められることを確認。

さらに、ミシェル常任議長は、復興基金として調達した資金の償還を欧州委の提案より2年前倒しして2026年に開始することを提案し、返済の原資となるEUとしての新しい独自財源を確保する必要性を強調した。新しい独自財源としては、既に提案されている廃プラスチック負担金(リサイクルされないプラスチック廃棄物の重量に応じた加盟国負担金)のほか、炭素国境調整メカニズム、デジタル課税などを挙げた。

(安田啓)

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