EU首脳テレビ会議開催、復興対策の実質的な議論はこれから

(EU)

ブリュッセル発

2020年06月22日

欧州理事会(EU首脳会議)メンバーによるテレビ会議(オンライン)が6月19日に開催された。シャルル・ミシェル常任議長は会議後に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、中心議題となった復興基金「次世代のEU」(2020年5月28日記事参照)および次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)について、「さまざまな点においてコンセンサスが生まれつつあるのは前向きな要素だが、同時に、多くの困難が待ち受けることを過小評価すべきでない」と所感を述べた。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も声明にて「初回の議論としては、非常に前向きに見えるものだった」と表現。議論が初歩的な段階にとどまっていることがうかがわれた。

7月中旬に対面形式での首脳会議開催へ

加盟国間で意見の相違が見られた主な論点として、フォン・デア・ライエン委員長は、復興基金の規模およびそのうち返済不要な補助金(grant)と融資(loan)とのバランス、各国への分配方式、EUとしての新しい独自財源のあり方などを挙げた。欧州委の提案では「次世代のEU」は総額7,500億ユーロの規模で、内訳は補助金が5,000億ユーロ、融資が2,500億ユーロとなっている。補助金のうち3,100億ユーロは「復興・回復ファシリティー」として、イタリア、スペインを筆頭に新型コロナウイルス感染拡大の影響が特に大きい加盟国に多く分配される内容だ。

ミシェル常任議長は、「これからが加盟国との実質的な交渉となる」との認識を示し、そのために「7月中旬頃にブリュッセルで対面形式での首脳会議を開催したい」と明言した。新型コロナウイルス感染拡大後、初めてEU首脳が実際に集う機会となる。

今後は、7月中に復興基金とMFFに合意できるかが焦点となる。同日のEU首脳会議後、EU政策を専門とするベルギーのシンクタンクである欧州政策センター(EPC)が開催したウェビナーで、EPCのファビアン・ズレーグ所長は、「EU議長国となるドイツは、合意が秋にずれ込むことを避けたい意向だ。ドイツのかじ取りにかかっているが、7月の合意は可能」との見方を示した。ドイツは半年交代の輪番制に基づき、現議長国のクロアチアから引き継いで7月1日から2020年下半期のEU議長国に就く。

(安田啓)

(EU)

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