日英FTA交渉開始、デジタル貿易などEU上回る協定目指す
(英国、EU、日本)
ロンドン発
2020年06月10日
日本と英国両政府は6月9日、両国間の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を正式に開始した。茂木敏充外相とエリザベス・トラス国際通商相がビデオ会議で対面。英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間が終わる2020年末までに妥結・批准し、2021年1月1日の発効を目指す。
2019年2月に発効している日EU経済連携協定(EPA)を土台に交渉を進める。英国は交渉開始に先立つ5月12日に対日FTAの交渉方針を発表(2020年5月14日記事参照)。両国間の自由なデータ移転などを含むデジタル貿易などで、日EU・EPAを上回る野心的な取り決めを目指すとしている。他方、物品貿易では交渉目的の中で、農産品や繊維製品などで対日輸出拡大を目指す考えを表明。日本側では農産品の輸入数量割り当てや、自動車・同部品などの英国輸入関税の早期撤廃などが争点となる。トラス国際通商相は協議の冒頭で「両国が世界に誇るサービス産業や革新的な中小企業、そして、英国の消費者などに裨益(ひえき)する(日EU・EPAよりも)多くのものを自由に追求できる」と述べるなど、交渉期間が限られる中でも幅広い分野で日EU・EPAを上回る対日FTAに期待を示している。
両国労組などから英EU交渉にも注文
交渉開始を受け、日本自動車工業会と英国自動車製造販売者協会(SMMT)は6月9日、双方トップの共同声明を発表。交渉開始を歓迎するとともに、移行期間終了後はすぐに新協定を発効させるよう求めた。他方、英国の労働組合会議(TUC)と日本の連合も同日、TUCのウェブサイトで両組織代表の共同声明を発表。日本企業が英国で投資を継続するには、英国とEUとの間で関税・非関税障壁のない通商協定を締結する必要があると述べ、目立った進展がない英EU間の将来関係交渉(2020年6月8日記事参照)を早期にまとめるよう、英国政府に注文を付けた。
英EU関係をめぐっては、日産自動車のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)が6月3日にBBCの取材に、「(英EU間で)関税が徴収されるようになれば、当社の英国と欧州の全ての事業が存続不能になる」とコメント。多くの在英日系企業が英EU間の通商交渉の行方を懸念している。
(宮崎拓)
(英国、EU、日本)
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