EU・英、将来関係協議の第4ラウンド「実質的な進展なし」
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年06月08日
EUと英国との将来関係協議の第4ラウンドが6月2~5日にかけてビデオ会議形式で実施された。欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は6月5日、協議を終え、前回協議(2020年5月18日記事参照)からの実質的な進展がなかったとする声明を発表した。移行期間の延長を一貫して拒絶する英国の立場に言及した上で、批准手続きにかかる時間を考慮に入れると、本年10月末までに最終合意に達しなければならないと述べ、移行期間の1年ないし2年の延長の「扉は開かれている」とするEU側の立場を繰り返した。
合意済の政治宣言に合致しない英国の交渉スタンスを批判
これまでの協議では、両者の主張の隔たりが顕著となっている。今回、バルニエ首席交渉官は、2019年10月に両者が離脱協定とともに合意した政治宣言(2019年10月18日記事参照)の幾つか項目を根拠に、英国の交渉スタンスを批判した。具体的には、(1)公平な競争条件の確保(政治宣言第77項)、(2)原子力安全性(同第66項)、(3)マネーロンダリングおよびテロ活動への資金供与への対策(同第82項)、(4)分野横断的な単一の制度的枠組みを基礎とする両者の将来関係(同第118項)の4点を挙げ、英国の交渉における立場は同宣言の合意内容に合致していないと指摘した。
産業界からは合意が達成されない場合のEU英国間貿易への影響を懸念する声が挙がっている。例えば欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)ら3団体は6月4日、合意なしに移行期間が終了するリスクを懸念する共同声明を発表した。
今後の日程としては、政治宣言第141項に従い、6月中にハイレベル(首脳級)でこれまでの交渉の進捗評価のための会合を開催する(日程未定)。協議の第5ラウンドは6月末または7月の早い時期に開催の予定。
(安田啓)
(EU、英国)
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