EU・英、将来関係協議の第3ラウンドも進展はわずか
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年05月18日
欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は5月15日、EUと英国との将来関係協議の第3ラウンド(5月11~15日)を終えて声明を発表した。英国側が漁業分野のテキスト案を示すなど、ほぼ全ての分野で双方の提案が出そろったとし、前回ラウンド(2020年4月27日記事参照)から一定の前進があったことを認めた。しかし、公平な競争条件の確保や将来関係のガバナンス、犯罪に関わる司法・警察協力というEU側が重視する交渉議題では、「若干の提案があったことを除いて、いかなる進展も得られなかった」と失望感を表した。
移行期間延長なしでの将来関係合意のポイントは3点
同首席交渉官は、英国が2020年末までの移行期間の延長を求めないという立場を変えないのであれば、EUとしても短期間で成果を目指す用意があるとしつつ、その達成のためにEU側が中核に位置付ける要素として以下の3点を挙げた。
(1)例外品目のない完全な無関税、無割り当ての自由貿易の達成
例外品目のない貿易自由化は、EUのどの自由貿易協定(FTA)でも達成できていないものの、特別な関係にある英国との貿易協定はカナダや日本、韓国といった第三国とのFTAの「コピー・ペースト」であるべきではないとの立場を示した。
(2)通商交渉の現代的要素の考慮
前時代的な関税障壁の撤廃以外でEUがとりわけ重視する要素として、持続可能な発展を挙げ、その実現には社会的・環境面の基準において、両者の公正な競争条件が確保されなければならないと指摘。同首席交渉官は、英国はこの点を受け入れず、EU側の提示する条件の緩和を求めるために例外のない貿易自由化の追求を放棄することも示唆した、と述べ、貿易自由化に例外品目を認めれば日本やカナダとのFTA交渉のように何年も複雑な交渉を重ねる必要が生じ、移行期間の延長なしには合意は不可能と結論付けた。
(3)モノ・サービスの貿易を超えた幅広いパートナーシップの実現
幅広いパートナーシップの実現には、個人データ保護などを含むあらゆる課題で並行的に解決策を見いださなければならず、英国は課題を取捨選択して単一市場の「良いとこどり」を目指すのではなく「現実的にならなければならない」と迫った。
次回の交渉ラウンドは6月1日の週に開催される。
(安田啓)
(EU、英国)
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