新型コロナ経済対策第3弾、休業従業員給与の8割を補助

(英国)

ロンドン発

2020年03月23日

英国政府は3月20日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた新たな経済対策を発表した。3月11日の2020年度(2020年4月~2021年3月)予算案に盛り込んだ第1弾(2020年3月18日記事参照)から9日後、総額3,500億ポンド規模の大型対策となる第2弾(2020年3月18日記事参照)からわずか3日後と、異例の速度での発表となった。内容は以下のとおり。

  • 企業規模・営利非営利等問わず全事業者に対し、休業を余儀なくされる従業員の給与の80%を、一人当たり月2,500ポンドを上限に政府が補助。3月1日に遡り、当面3カ月間実施する(延長の可能性あり)。当制度向けの政府予算枠は、上限を設けない。担当は歳入関税庁(HMRC)で、4月末までの支給開始を目指す。
  • 中小企業を対象とする国営英国ビジネス銀行の8割保証による銀行借入制度(2020年3月18日記事参照)について、国が補助する利払いの期間を6カ月から1年に延長。3月23日から開始。
  • 6月末までVAT支払いを繰り延べ、会計年度末までの支払いを認める。これに伴う企業キャッシュフロー上の効果は300億ポンド(GDP比1.5%)と試算。
  • 低所得者向け社会保障給付(「ユニバーサル・クレジット」)の基準支給額に今後12カ月間、年額換算で一人当たり1,000ポンドを上乗せ。
  • 個人事業者に対し、自己隔離が必要になった場合はユニバーサル・クレジットを通じ、法定病欠手当と同額を支給。また自己評価税(所得税)支払いを21年1月まで繰り延べ。
  • 地方自治体の住宅補助とユニバーサル・クレジットの増額により、低所得者の住宅賃料支払いを支援。10億ポンド規模。

イングランド銀行も2度目の緊急利下げ

イングランド銀行は、政府が第3弾の経済対策を発表した前日19日に、世界金融危機後初の緊急利下げ(2020年3月18日記事参照)からわずか8日で、政策金利を0.25%から過去最低の0.1%に再度引き下げた。加えて、国債等の緊急買い入れによる2,000億ポンドの量的緩和も発表。更に中小企業向け融資拡大のための銀行向けインセンティブ供与の拡充も表明している。

感染が急速に拡大する中、街では人通りが大幅に減少しており、3月20日には飲食店も持ち帰り客への提供を除き店内での営業を中断するよう政府から要請された。感染例が集中するロンドンでは地下鉄やバスの利用も厳しく自粛を求められ、運行本数も削減されている。経済活動の変調が顕在化する中、政府、イングランド銀はともに、英国史上例のない財政・金融政策で危機に対応する。

(宮崎拓)

(英国)

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