IMF、世界経済成長見通しを下方修正

(世界)

国際経済課

2020年01月21日

IMFは1月20日発表の「世界経済見通し(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」で、世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を2019年に2.9%、2020年に3.3%、2021年に3.4%とした(表参照)。2019年10月に発表した見通し(2019年10月18日記事参照)で示した、2019年を底に回復していくシナリオに変わりはないが、2019年と2020年はそれぞれ0.1ポイント、2021年は0.2ポイント下方修正した。

表 世界および主要国・地域の経済成長率

世界経済の見通しが下方修正された要因としては、インドの成長予測が大幅に引き下げられた影響が大きい。非銀行金融部門の信用問題や与信の伸びが鈍化したことなどで、内需が予想以上に減速しており、2020年は1.2ポイント、2021年は0.9ポイント引き下げた。

一方、中国の2020年の成長見通しは、0.2ポイント上方修正された。米国との間で第1段階となる経済・貿易協定が署名されたことにより、短期的な景気循環の弱さが緩和するとの見込みだ。しかし、米中経済関係に関する広範な未解決案件や、中国国内で必要になっている金融規制の強化が、引き続き経済活動の重しになる、と分析した。

好材料みられるも、リスクバランスは引き続き下向き

最新の経済見通しでは、製造業の活動が安定化する兆候、金融緩和へとかじを切る動き、さらには米中貿易交渉で好材料が出ている点などを指摘し、世界経済が深刻な結果に終わる可能性は薄らいでいる、とみている。しかし、同見通しは、世界経済は下振れリスクが依然として優勢だとする。

まず、米国とイランの関係を代表例として挙げ、地政学的な緊張の高まりが、原油供給の不安定化、景況感の悪化、企業投資を弱体化させる可能性に言及した。また、米中間などにおける貿易・技術分野での緊張が持続的に解決される見通しは不透明との見立てを示した。さらに、米国とEUの関係を例に挙げ、米国と貿易相手国・地域との間で経済関係が悪化することなどにより、世界の製造業と貿易が底打ちしつつある兆候を台なしにし、世界経済成長率が予測を下回る懸念を示した。

(朝倉啓介)

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