2019年の世界経済成長率はリーマン・ショック以降最低の3.0%、IMFが見通しを発表
(世界)
国際経済課
2019年10月18日
IMFは10月15日発表の「世界経済見通し」で、世界経済の成長率(実質GDP成長率)は2019年に3.0%、2020年に3.4%になるとし、いずれも7月の見通しから下方修正した(表参照)。2019年上半期の成長の弱さや、米国および中国による相次ぐ追加関税措置などを反映したものだ。3.0%という数値は、リーマン・ショックが起きた2008年(3.0%)および翌2009年(マイナス0.1%)以来の低水準となる。
貿易摩擦の激化のみならず、地政学的な不透明感、新興・途上国における景気減速(注)、先進国での高齢化や生産性の伸び悩みといった構造的要因なども、低成長の背景にある。2020年の成長率は3.4%へとやや持ち直すが、多くの新興・途上国で前回予測よりも成長率が下方修正されており、力強い回復は見込まれていない。
貿易摩擦は2020年の世界経済を最大0.79ポイント下押し
IMFは今回の見通しで、米中間の追加関税の影響に関する試算をアップデートした(添付資料参照)。これまでの試算と同様に、追加関税措置の直接的な影響のみならず、景況感の悪化や市場の反応といった二次的な影響の大きさが懸念されている。既に発動済みの措置に加えて、企業心理が悪化して投資が減退し、金融市場に負の影響が及ぶ、さらには産業間の資源再配分により生産性が落ち込むことを想定した最悪シナリオでは、2020年に約7,000億ドル(世界のGDPの0.79%、スイス1カ国の経済規模に相当)が喪失される見通しだ。同様に、米国は最大0.58ポイント、中国は1.97ポイント、日本は0.43ポイント、それぞれ成長が下押しされるとの試算結果が示された。日本へのマイナス効果は避けられない。
IMFは、今回の予測以上に世界経済が減速する可能性も十分にあり得るとし、これを阻止するために政策面では、貿易摩擦の解消および多国間協力の必要性があると指摘している。
(注)特にインドは、当初予測よりも内需が弱かったことを受け、2019年の成長率は6.1%と、前回見通しよりも0.9ポイント下方修正された。
(吾郷伊都子)
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