米USTR、EUのエアバス補助金への報復追加関税引き上げと対象品目の追加を検討

(米国、EU)

ニューヨーク発

2019年12月10日

米国通商代表部(USTR)は12月6日、EUによる航空大手エアバスへの補助金に対する報復措置として賦課しているEU製品への追加関税について、対象品目や税率の見直しを行うと発表した。追加関税の対象としている民間航空機や食品飲料以外の幅広い品目についても、最大100%の関税が課される可能性がある。正式には近く官報で公示する予定だ。

米国は、10月14日に年間約75億ドル相当の対EU報復措置をWTOから承認され、同月18日からフランス、ドイツ、スペイン、英国産の大型民間航空機に10%、ワイン、チーズなどのEU産品に25%の追加関税を賦課している(2019年10月16日記事参照)。今回のUSTRの発表は、WTOが12月2日にEUがエアバスへの不正な補助金を拠出し続けているとの報告を発表したことを受けたもの。米国は、問題解決に向けた進展が見られないとし、今回の追加関税対象品目と税率の見直しを行うとした。

近く公示する官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、1974年通商法301条(注1)に基づき、追加関税が賦課されている品目に加え、4月と7月に対象候補として発表した品目群(2019月4月11日記事7月2日記事参照)についても、関税の適用、100%を上限とする税率引き上げの対象となる可能性がある。上記品目群のうち、関税が現在課されていない品目には、民間用の航空機部品やヘリコプター、銅板などの工業製品のほか、ブランデーやスパークリングワイン、パスタなどの食品も含まれる。USTRは今後、見直しに向けたパブリックコメントを2020年1月13日まで受け付ける予定だ(注2)。

今回の発表に際して、USTRのロバート・ライトハイザー代表は、EU側が無益な提訴を繰り返しているとして、「市場をゆがめる補助金の撤廃が今後のEUの利益になるとEUを納得させるための強い措置が必要」と述べた。他方、EU側も対抗措置を辞さない構えを見せており、米航空大手ボーイングへの米国の補助金に関するWTOの判断次第で対米関税を賦課することを発表している(2019年10月21記事参照)。

(注1)通商法301条は、貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの制裁を行う権限をUSTRに与えている。

(注2)パブリックコメントを含めた提出先は連邦ポータルサイトhttp://www.regulations.govのドケット番号USTR-2019-0003となっている。秘密情報を含む場合は、E-mailで301aircraft@ustr.eop.govまで提出することとなっている。

(藪恭兵)

(米国、EU)

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