欧州委、航空機補助金をめぐる米国の報復関税に対抗姿勢示す
(EU、米国)
ブリュッセル発
2019年10月21日
欧州委員会のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は10月18日、米国のトランプ政権がエアバスに対するEU補助金の問題で、対EU報復関税措置を発動(2019年10月16日記事参照)したことを受け、EUとしても対抗措置で臨む姿勢を明らかにした。本件について、同委員は「関税賦課は誰の長期的利益にもならない」とくぎを刺す一方、欧州企業・農家および消費者の保護を約束すると明言。米国によるボーイングへの補助金措置への報復も辞さない姿勢だ。
交渉を通じた問題解決がEU側の本音
マルムストロム委員は、今回の米国による報復関税措置発動の結果、EU側としても対抗措置を講ぜざるを得なくなったと指摘。「EUと米国の航空機産業の間で高度に統合されているサプライチェーンに極めて深刻な損失をもたらす上、その他の現在の通商摩擦によって既に影響を受けている多くの産業に二次被害を及ぼす」と語った。
他方、同委員は現状、EUと米国双方がWTO協定に違反した状態にあることから、共同責任として、報復関税の応酬ではなく交渉を通じた事態打開を目指すべき、との認識を示している。EUは7月にも米国に対して、航空機産業向けの補助金問題打開のための具体案を提示するなど、協議に前向きな姿勢を示し、対話を呼び掛けていた。
今後、欧州委は今回の米国による報復関税措置発動に伴う欧州の産品、特に農業分野における影響を調査するとしている。欧州ワイン産業協議会(CEEV)は10月3日付の声明で、米国が10月18日からフランス、ドイツ、スペイン、英国を含むEU産のワインに25%の追加関税賦課を決定したことについて、遺憾の意を表明。「(ワインに関わる)米国側の輸入者、消費者にも追加関税の影響は及ぶ」と警告した。
なお、欧州議会の穏健リベラル会派「リニュー・ヨーロッパ」の有力者であるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は10月18日にツイッターに「トランプ大統領の就任以降、米国は信頼できる同盟国ではなくなった。(米国に依存せず、EU独自の安全保障体制のため)欧州軍の検討を進めるべき段階に入った」と投稿。対米関係について厳しい現状認識を示した。
(前田篤穂)
(EU、米国)
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