欧州議会、次期欧州委員会の3委員候補を認めず
(EU)
ブリュッセル発
2019年10月11日
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン次期委員長は10月10日付声明で、欧州委が提案した26人の次期欧州委員候補者(2019年9月11日記事参照)のうち、フランス、ハンガリー、ルーマニアから指名された3人は欧州議会・公聴会(2019年9月27日記事参照)で十分な支持を得られなかったことを明らかにした。
利益相反や過去の不正疑惑で,迫られる人事案の見直し
該当の3人は次のとおり。
- フランス:シルビ・グラール(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)
- ハンガリー:ラズロー・トロチャニー(欧州近隣政策・拡大交渉担当)
- ルーマニア:ロバナ・プルンブ(運輸担当)
ラズロー・トロチャニー氏とロバナ・プルンブ氏については、公聴会が始まった9月30日の時点で、所掌ポストとの関連で各候補の財務状況報告を精査した結果、利益相反が確認されたとして、欧州議会の法務委員会が不適任とする判断を下していた。
また、シルビ・グラール候補については、10月2日に行われた1回目の公聴会で、欧州議員だった時期(2014年7月~2017年5月)のスタッフ給与の支払いをめぐり、フランス当局と欧州不正対策局(OLAF)の捜査対象となっていた件や、米国のシンクタンクから得ていた報酬をめぐる疑惑が浮上。所掌職務遂行に関わる質問への回答ともに書面で釈明を行っていた。10月10日に開かれた2回目の公聴会でも議論が集まり、同候補は上述の件について起訴されていない点を強調したが、公聴会出席者の疑念を払拭(ふっしょく)するには至らなかったものとみられる。
ブレグジットや通商摩擦など喫緊の課題を抱える次期欧州委のフォン・デア・ライエン委員長は、欧州議会のダビド=マリア・サッソーリ議長や同議会主要会派代表との協議を続け、事態打開の道筋を模索している。しかし、10月23日に最終人事案を欧州議会本会議に提案しなければならない中、新たな候補者の調整や欧州議会・常任委員会との協議などもあり、残された時間は限られる。
なお、グラール候補を欧州委員会委員とする人事案に反対を表明している、欧州議会第4位の会派である欧州緑の党・欧州自由同盟(GREENS/EFA)グループは10月10日付の声明で、「欧州議会議員の副収入に関する規制や、こうした問題を独立して取り扱う倫理委員会の導入を検討する必要がある」などと指摘している。
(前田篤穂)
(EU)
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