連邦政府が気候変動対策パッケージを発表、効果に疑問の声も
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2019年10月01日
ドイツ連邦政府は9月20日、2030年までの気候変動対策パッケージを採択した。政府は同パッケージで、ドイツの温室効果ガス排気量の目標(1990年比で55%減)(2019年6月21日記事参照)の達成に向けた具体的な政策を決定した。同パッケージの政策は、(1)建築物・住宅、(2)交通・運輸、(3)農業、(4)工業、(5)エネルギー産業、(6)研究開発の6つの分野に分けられる。毎年、専門委員会の協力の下で目標の達成の進捗および政策の効果を計り、目標の達成が難しいと評価された分野については、担当省庁が3カ月以内に目標達成に向けた調整プログラムを策定する内容も盛り込まれた。連邦政府は同パッケージに対し、2030年までに数千億ユーロ規模の予算を支出する。2019年内に、政府は同パッケージの具体的な法制度化を進める予定。
具体的政策としては、2021年に新たに運輸分野と暖房分野に二酸化炭素(CO2)の排出権取引を導入する。排出量1トン当たりの固定価格は10ユーロで、2025年までに1トン当たり35ユーロに引き上げられる。2026年からは、一定の価格帯内で市場原理に基づく変動価格となる。この制度による歳入は気候変動対策に再投資するほか、国民の負担軽減や支援プログラムのかたちで国民に還元する。運輸分野では、2030年までに電気自動車(EV)充電スタンドを100万カ所に増やすため、公共充電スタンドの整備を支援する。また、全てのガソリンスタンドに充電器設置を義務付け、不動産のオーナーは借り主が充電器設置を希望した際に容認しなければならないといった法制度も整備する。連邦政府によるEV・ハイブリッド車・燃料電池車の購入補助金を期間延長するとともに、4万ユーロ以下のEVに与える補助金を拡大するなどの対策により、2030年までにEVの車両登録台数700万~1,000万台を目指す。
多くの主要経済団体が上記のCO2排出権取引導入を歓迎する一方、これら団体や経済研究所からは、設定された取引価格が低いため排出量削減の効果が限定的となるとの意見や、同パッケージが包括的な政策ではなく、個別の政策・支援で構成されているため、一部の措置についてはコストが高くつくこと、排出権取引の円滑な実施を阻害する政策が含まれていることを指摘する声も出ている。
(ベアナデット・マイヤー、木場亮)
(ドイツ)
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