政府がエネルギー転換の進捗状況を発表、今後に課題も

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2019年06月21日

ドイツ政府は6月6日、ペーター・アルトマイヤー経済エネルギー相が提出した2回目のエネルギー転換の進捗状況報告書を採択した。報告書は、政府によるエネルギー転換(Energiewende)の現状と今後の課題を紹介するため、3年ごと作成されている。アルトマイヤー経済エネルギー相は「既に幾つかの点で大きな進展があったが、課題はまだ残っている」とした上で、「将来的には、エネルギー転換と環境保全を考慮することがビジネスモデルを成功に導く必須条件になるだろう」と指摘。さらに、エネルギー転換はエネルギー政策の中心的なプロジェクトであるだけでなく、企業の立地先としての事業環境近代化という観点からも、ドイツにとって最も大きいプロジェクトの1つだとし、同政策が新たなビジネスチャンスと雇用を創出するとの見方を示した。

報告書では、温室効果ガス排出量が2017年に前年比で0.5%減少、2018年に4.5%減(予測値)と大きく減少したことが取り上げられたほか、電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合についても2018年に37.8%(暫定値)を占め、2020年の目標を既に上回ったことが指摘された。一方、報告書を評価した専門委員会は、温室効果ガスの排出量について、2020年および2030年の削減目標が未達になる可能性を指摘しており、一層の努力が必要としている。

また、特にエネルギー効率の向上に関する目標について、達成を危ぶむとの指摘がなされた。2017年の1次エネルギーの消費量は、2008年比で5.5%の減少にとどまり、2020年の目標値(20%減)の達成は困難としている。さらに、建築物における熱需要量も、2020年の目標(2008年比で20%減)に対し、2017年時点で6.9%減にとどまっており、優遇税制などのさらなる施策が必要とした。交通分野の最終エネルギー消費量については、2017年は前年比で2.4%増加と、5年連続で増加した。2005年に比べても6.5%増加しており、2020年の目標(対2005年で10%減)の達成は難しい状況だ(表参照)。

再生可能エネルギーの導入についても、失速傾向にあると指摘している。特に現在、再生可能エネルギー拡大の柱となっている風力発電に関し、自然保護団体による訴訟や再生可能エネルギー拡大への理解不足に由来する住民の用地利用への反対などを背景とした利害の衝突により、陸上風力発電の拡大が停滞しているという。また、既存の送電網の最適化や送電網の拡大を加速させることも必須としている。

表 エネルギー転換の現状および目標

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(ドイツ)

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