米USTR、フランスのデジタル課税法に関する301条調査を開始
(米国、フランス)
ニューヨーク発
2019年07月12日
米国通商代表部(USTR)は7月10日、フランス議会がIT関連の大手企業を対象に、フランス国内市場での年間総売上高の3%を課税する法案(デジタル課税法案)を審議した(2019年4月10日記事、5月28日記事参照)件に対して、1974年通商法301条(注)に基づく調査の開始を発表した。フランス議会の下院は既に同法案を可決しており、USTRの調査開始が上院での審議に影響を与えるかが注目されていたが、7月11日に上院も可決した。USTRは今後行われる公聴会や調査の結果を踏まえて、対抗措置を取るか判断する。
USTRは米国企業を狙い撃ちする法律と批判、議会も支持
フランス議会が可決したデジタル課税法案は、世界での売上高が7億5,000万ユーロ以上で、かつフランス国内での売上高が2,500万ユーロ以上のIT企業が対象となる。ライトハイザーUSTR代表は同法案を「米国企業を不公正に狙い撃ちするもの」と批判し、米議会上院で通商を所管する財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)とロン・ワイデン少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)もそろって、政権の動きを支持する声明を出している。USTRは今後、下記の予定に沿って、企業などからも意見を聴取する。
- 8月12日 公聴会での証言申し込みと証言の要約提出期限
- 8月19日 USTRの301条委員会による公聴会開催(場所:ワシントンDC)、パブリックコメントの提出期限
- 8月26日 証言に対する反証を含む、書面でのパブリックコメントの提出期限
米業界団体はOECDを通じた多国間ルールの制定に期待
米国企業もUSTRの動きを支持しつつ、フランスが単独でデジタル課税の動きを進めることに否定的な声明を出している。今回の法案で対象となり得るアップルやアマゾン、グーグル、フェイスブックなども加盟する米国情報技術産業協議会(ITI)は7月10日、「デジタル課税について一方的な措置を検討しているフランスやその他の国は、それぞれ措置を取り下げて、既に進行しているOECDでの議論に再度注力すべきだ」との声明を出している。OECDはG20の指示を受けて、2020年末までにデジタル経済に対応した国際課税ルールに関して最終合意をすべく、ルールの見直し作業を進めている。
(注)通商法301条は、貿易協定違反や米国政府が不公正と判断した他国の措置について、貿易協定上の特恵措置の停止や輸入制限措置などの貿易制裁を行う権限をUSTRに与えている。
(磯部真一)
(米国、フランス)
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