欧州委、経済成長率予測をさらに下方修正
(EU)
ブリュッセル発
2019年05月08日
欧州委員会は5月7日、春季経済予測を発表し、2019年のEU28カ国の実質GDP成長率を1.4%、ユーロ圏については1.2%とし、2018年11月に発表した秋季経済予測(2018年11月9日記事参照)からそれぞれ0.5ポイントと0.7ポイントずつ下方修正した(表1、2参照)。特に、ドイツ(1.8%→0.5%)、イタリア(1.2%→0.1%)、オランダ(2.4%→1.6%)などユーロ圏主要国での下方修正が目立った。2020年については、EU28カ国は1.6%、ユーロ圏は1.5%(ともに0.2ポイント下方修正)との予測を示した。欧州委は、2月に中間見通しとして発表した冬季経済予測でGDP成長率の予測値を下方修正していたが(2019年2月13日記事参照)、さらなる引き下げとなった。
EU加盟28カ国の2019年の失業率は6.5%、2020年の失業率は6.2%、2018年11月の秋季経済予測からともに0.1ポイント引き下げた。また、ユーロ圏についてはそれぞれ7.7%と7.3%とし、ともに0.2ポイント引き下げた(表3参照)。
世界貿易・経済の減速、先行き不透明感が影響
欧州委は下方修正の要因として、世界貿易と経済の減速と通商政策の先行き不透明感に加え、一部の加盟国における自動車産業など製造業の落ち込みを挙げた。EUの経済成長は域内の経済活動に依存する傾向があるが、欧州委は失業率が引き続き改善し、賃金上昇と抑制されたインフレ率、低金利、一部加盟国の拡張的な財政政策によって域内需要が押し上げられると分析。緩慢な成長が継続するとの予測を示した。さらに、2020年には域外経済の成長再開などにより、EU経済の成長も上向くとの見立てだ。
欧州委は、ダウンサイド・リスク(今回の予測のさらなる下振れ要因)として、保護主義と世界貿易・経済の低迷の長期化の可能性に言及。特に、中国経済の成長が期待を下回る場合の影響に警戒感を示した。域内については、英国のEUからの合意なき離脱と製造業の落ち込みの長期化を挙げた。
(村岡有)
(EU)
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