「メード・イン・ヨーロッパ」のAI開発に向けて動き出す欧州

(EU)

ブリュッセル発

2018年12月10日

欧州委員会は12月7日、EU加盟国のほか、スイス、ノルウェーとも連携し、欧州発の人工知能(AI)技術の開発を進めるプロジェクト計画を明らかにした。欧州委はAI技術の活用に向けた戦略を4月25日に発表している(2018年4月27日記事参照)が、「投資拡大」「データ活用」「人材育成」「社会的信頼醸成」の4点を重点課題に設定し、欧州地域として世界最先端のAI開発を進める。

連携することの「理」を説くEU

欧州委は、2020年末までに官民で少なくとも200億ユーロの投資拡大を目標に掲げ、優先投資分野としては、医療、運輸(交通)・モビリティー、セキュリティー、エネルギーなどを想定している。

ドイツ(2018年8月7日記事参照)やフランス(2018年12月5日記事参照)などEU主要国でも、国家プロジェクトとしてAI開発が進められているが、欧州委は投資効率の極大化や、共通方針に基づく課題対応の重要性を指摘。欧州地域として連携することのシナジー効果を追求する必要があるとしている。

欧州委はAI分野のEUへの投資の現状について、米国や中国と比較して「低調で分散し過ぎている」との認識を示し、各国投資の不足をEUが補完する考えを明らかにした。このため、欧州委は2020年までに15億ユーロを拠出、その後も2021~2027年の中期予算枠組みで少なくとも70億ユーロを投資すると提案した。同時に加盟国に対して、AIに関する国家戦略を2019年半ばまでに策定し、予算規模や具体策を明らかにするよう要請している。

また、欧州委は「AI技術の開発には、大規模で安全かつ豊富なデータベース活用が不可欠」との認識を示し「欧州共通データ・スペース」の創設を提唱。EU「一般データ保護規則(GDPR)」の順守を前提としつつ、プロジェクト参加国間で自由にデータ共有するシステムを構築する必要があるとしている。

このほか、高等教育機関でのAI技能教育の強化や、AI分野の高度技能者を欧州に招致するための(当該人材の在留・就労許可手続き簡素化を認める)ブルーカードの活用、AI技術に対する社会的信頼醸成のための倫理ガイドライン策定なども提案している。

欧州委の今回の発表に対し、欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体、デジタルヨーロッパは12月7日付で声明を出し、歓迎の意向を示した。この団体によれば、欧州地域としてのAI開発は、温室効果ガス削減や個別化医療の技術向上などへの貢献が期待できるという。

(前田篤穂)

(EU)

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