第3弾の対中追加関税で公聴会、国内産業界から強い反発

(米国)

ニューヨーク発

2018年09月07日

米通商代表部(USTR)は8月20~24日と27日に、1974年通商法301条(以下、301条)に基づく対中輸入関税賦課に関する公聴会を開催した。第3弾の追加課税措置として発表されている2,000億ドル相当の6,031品目PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(HTS8桁ベース)を対象としたもの(2018年8月3日記事参照)。

証言した300を超える企業・団体の大半が、追加関税賦課に反対の姿勢を示した。関税対象には、中国政府の産業政策「中国製造2025」の対象となるハイテク製品に該当しない品目が多数あり、これらは除外されるべきとの声が多数上がった。また、多くの消費財も対象に含まれており、関税は最終的に消費者の負担につながるとの批判が相次いだ。

全米小売業協会(NRF)バイスプレジデント(サプライチェーン・税関政策対応)のジョナサン・ゴールド氏は、対象品目には家具やかばん、トイレットペーパーなどの日用品から食料品に至る多数の消費財が含まれており、本措置は米国の企業と消費者に対する関税賦課に等しいと述べ、強い反対の姿勢を示した。さらに、25%の追加関税が賦課された場合、消費者にとって年間に総額で家具46億ドル、かばんなどの旅行用品12億ドルの負担増につながるとの試算を紹介した。

「エコノミスト」誌(9月8日号)は、クリスマスシーズン向けの発注を中国に行っているバッグ業者を取り上げ、中国のサプライヤーと再交渉はできず、追加関税が賦課されれば卸価格が10~25%高くなるとの声を紹介し、追加関税分は米国人が負担することになるとしている。

ディスカウントストア大手、ダラー・ツリーのゲイリー・フィルビン最高経営責任者(CEO)は、追加関税は主な顧客である中・低所得者層への影響が非常に大きいと述べた。同社は大半の製品を3ドル以下で販売しており、追加関税が課されると値上げは避けられず、供給が困難になる可能性があると述べた。さらに、同社が販売する低価格のローテク商品は、「中国製造2025」が掲げるハイテク製品や中国の知的財産侵害には関連しないとし、対象からの除外を求めた。

掃除ロボットの開発元で知られるアイロボット(iRobot)のコリン・アングルCEOは、中国に代わるサプライチェーンへの切り替えは難しく、関税が賦課された場合のコスト上昇分は消費者に転嫁せざるを得ないと述べ、さらに、ロボット開発における米国のリーダーシップを損なうことにつながるとの懸念を示した。

米国石油協会(API)のスティーブン・コムストック氏は、中国政府の報復関税に液化天然ガス(LNG)が含まれていることに強い懸念を示した。米国にとって中国は3番目のLNG輸入国だが、報復関税により中国市場における米国産LNGの競争力が低下すれば、オーストラリアやロシアなどの競合国にシェアを奪われると述べた。LNG需要が拡大している中国での米国産LNGの需要低下は国内の産出量減少につながり、LNGプラントの建造計画にも影響を及ぼすとの懸念を示した。

公聴会を受け、NRFをはじめとする米国の150以上の業界団体は9月6日、USTRに対して、301条に基づく対中輸入関税賦課に反対するコメントPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出した。業界団体は、製造業、農業、小売り、テクノロジー、石油など幅広い業界を代表する団体で構成されている。6日が公聴会後のコメント提出の最終日だった。

(須貝智也)

(米国)

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