下院で増税議論、経済発展省は2019年のGDP予測を下方修正
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2018年07月13日
ロシア下院で、付加価値税(VAT)の引き上げや年金支給年齢改定(2018年6月15日記事参照)など各種税制改正に関する議論が開始された。経済官庁、中央銀行、研究機関などは増税の影響を反映した経済予測やコメントを発表。2019年のインフレ率は中銀が目標とする4.0%を超える見通しで、経済発展省は2019年のGDP成長率予測を1.4%へ下方修正した。
下院は7月3日、政府が6月中旬に提出した税制改正に関する第1読会を開催。2019年1月に予定するVAT税率の引き上げ(18%→20%)が注目されている。アンドレイ・マカロフ予算・税制委員長(与党・統一ロシア所属)は、プーチン大統領が設定した2024年までの政策目標(2018年5月8日記事参照)達成のため、今後6年間(2024年まで)安定した税制が必要と発言した。2004年以前はVAT税率が20%を超えており、(VAT税率が18%になった)2004~2018年に、企業は2%分を毎年「節約」できた、と独自の見解を述べた。中小企業団体、経営者団体、商工会議所の代表と議論を行い、社会貢献として2%分を「返還」することで全団体が一致したとした。年金改革やVATの早期還付制度の対象納税額の引き下げ〔70億ルーブル(約126億円、1ルーブル=約1.8円)以上から20億ルーブル以上へ〕、雇用主負担の被雇用者の社会保険料率(現在は30%、注1)の無期限固定など、20の関連法案を7月に一括して審議・採択する予定だ。
アントン・シルアノフ第1副首相兼財務相は、今回のVAT税率引き上げで2019年にインフレ率が当初予想よりも1~1.5ポイント増の4~4.5%に上昇する見通しに言及した。中銀は、アナウンス効果(注2)により2018年内にも物価が上がり始める可能性を指摘。ガイダル経済政策研究所およびロシア国民経済公務アカデミーの共同研究によると、インフレの加速で家計購買力の低下や資本の収益性低下による投資減少を招き、経済活動主体が増税を前提とした行動を取らない場合に比べ、2019年の経済成長と家計消費は0.2~0.35%減、投資は0.4~0.7%減、輸入が0.35~0.45%減と予測。一方、2018年は駆け込み需要から、家計消費が0.15~0.3%増となる可能性を指摘する。
経済発展省は最新の経済予測(7月4日)で、耐久消費財を中心とした駆け込み需要でインフレ率が上昇すると予測している。2018年は3.1%と前回(2.8%)より上方修正し2019年末は4.3%、2020年末は3.8%(いずれも前年末比)と予測した。2018年のGDP成長率は1.9%と変わらず、2019年は1.4%に下方修正した(前回予測は2.1~2.2%)。実質給与の伸びの低下などが原因としている。生産性向上、中小企業育成、非資源分野やサービス輸出の拡大、人材育成などを総合的に進めれば、プーチン大統領が掲げる政策目標(注3)達成に必要な3%の成長率を2021~2024年の間は維持できるが、もしもそれができない場合は1.5~2.0%の成長率にとどまるとしている。
(注1)雇用主は被雇用者給与額の30%(内訳:年金基金22%、社会保険基金2.9%、連邦医療保険基金5.1%)を社会保障費として負担。同30%は2021年までの軽減税率で、本来は34%(年金基金の料率は26%)。今回の法改正で30%の負担率を無期限化する。
(注2)予測や計画などの公表が一般の人々の経済活動に変化を与えること。
(注3)プーチン大統領は2024年までにGDP総額でロシアを世界5位以内にするとしている。
(高橋淳)
(ロシア)
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