輸入関税は鉄鋼25%、アルミ10%-メキシコとカナダは除外、3月23日から課税-
(米国)
ニューヨーク発
2018年03月09日
トランプ大統領は3月8日、1962年通商拡大法232条に基づき、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の輸入関税を課すことを決定した。3月23日から課税される。メキシコとカナダについては、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で譲歩を迫ることを視野に関税適用を留保した。一方、日本やEUなどその他の国は除外されておらず、適用を除外されるためには米通商代表部(USTR)と個別に交渉する必要がある。
メキシコとカナダにはNAFTAでの譲歩求める
トランプ大統領は3月8日、1962年通商拡大法232条(注、以下232条)に基づき、鉄鋼とアルミニウムの輸入に関税(従価税)を賦課する大統領布告に署名した。税率は、1日に行われた鉄鋼業界幹部との面談で大統領が公表したとおり、鉄鋼が25%、アルミニウムが10%に設定されている。課税は3月23日から実施される。
なお、関税適用の期限については定められていない。大統領布告は商務長官に対して、鉄鋼とアルミニウムの輸入状況を監督し、措置の強化または撤廃を大統領に提言することを求めている。措置の撤廃は、商務長官の提言に基づき大統領が決定する。
メキシコとカナダについては、NAFTAの再交渉の中で鉄鋼やアルミニウムの輸入に関する問題に対応することが必要かつ適切と判断したとして、関税賦課を一時的に(at least at this time)留保した。ただしトランプ大統領は、米国の労働者や農業界などの利益につながるかたちでNAFTAが合意できない場合には両国からの輸入に関税を課すことも示唆しており、適用除外と引き換えにNAFTA交渉での譲歩を迫る姿勢を示している。
除外求める国はUSTRと交渉
日本やEUなどその他の国は課税対象から除外されていない。米国と同盟関係にある国からの輸入については、米国の安全保障を脅かさないような代案が提示された場合に限り除外を認めるとし、除外をめぐる交渉についてはUSTRが担うとしている。トランプ大統領は「関税適用までには15日間ある」として、交渉を促した。さらに「どの国がわれわれを公平に扱っているかをみる」「豊かな国でも軍事費の負担をしていない国がある」と述べ、同盟国に対してもさらなる負担を求めていく考えを示している。
なお、大統領布告によれば、適用除外の国が増えた場合には、それ以外の国に対する関税の税率が引き上げられる可能性もある。
鉄鋼・アルミとも広範な製品が対象
関税賦課の対象製品は、商務省の調査結果で示されたものと変わっておらず、広範な製品が設定されている。
鉄鋼製品は、6桁のHSコードで720610~721650、721699~730110、730210、730240~730290、730410~730690が対象となる。製品分野としては、(a)炭素・合金フラット製品(Carbon and Alloy Flat Products)、(b)炭素・合金ロング製品(Carbon and Alloy Long Products)、(c)炭素・合金パイプおよびチューブ製品(Carbon and Alloy Pipe and Tube Products)、(d)炭素・合金半製品(Carbon and Alloy Semi-finished Products)、(e)ステンレス製品(Stainless Products)に主に属するものが含まれる。
アルミニウム製品は、HSコードで7601(アルミニウムの塊)、7604(アルミニウムの棒および形材)、7605(アルミニウムの線)、7606〔アルミニウムの板、シートおよびストリップ(厚さが0.2ミリを超えるものに限る)〕、7607〔アルミニウムのはく(厚さは補強材の厚さを除いて0.2ミリ以下のものに限るとし、印刷してあるかないか、または紙、板紙、プラスチックその他これらに類する補強材により裏張りしてあるかないかを問わない)〕、7608(アルミニウム製の管)、7609(アルミニウム製の管用継手)、7616995160(その他のアルミニウム製品:キャスティング)、7616995170(その他のアルミニウム製品:フォージング)に主に属するものが対象になる。米国の通関統計から対象製品の2017年の対日輸入額をHS上位4桁でみると、鉄鋼は16億6,312万ドル(約1,800億円)で、全体の5.7%を占めている。一方、 アルミニウムは2億7,941万ドル(約300億円)で、全体の1.5%となっている。
ただし、鉄鋼とアルミニウムについて、国内製品の供給量や品質が十分でない、あるいは米国の安全保障上認められる品目については、商務長官が他の関係機関との協議の上で認可すれば、関税適用の対象から除外できるプロセスが設けられている。しかし、この申請は今回の措置により直接的な影響を受ける在米企業に限られた。同プロセスの詳細は、10日以内に商務長官によって示される予定だ。
(注)1962年通商拡大法232条は、輸入が米国の安全保障を損なう恐れがあると商務省が判断した場合に、当該輸入を是正する権限を大統領に与えている。ウィルバー・ロス商務長官は2017年4月に鉄鋼とアルミニウムの輸入に関する調査を商務省に要請し、商務省はそれぞれの調査結果を2018年1月に大統領に提出していた。2月16日に公表された調査結果は、鉄鋼とアルミニウムの輸入が米国の安全保障を損なう恐れがあると判断し、是正措置として関税や輸入数量割当の導入をトランプ大統領に提言した(2018年2月23日記事参照)。大統領は商務省の内容には縛られず措置の内容を決定できるため、どのような措置が導入されるか注目されていた。
(鈴木敦)
(米国)
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