米商務省、カナダ産針葉樹材に相殺関税を暫定適用-米加針葉樹紛争再燃(1)-

(カナダ、米国)

トロント発

2017年05月15日

 米商務省は4月24日、カナダ産針葉樹材に対して3.02~24.12%の相殺関税を適用する仮決定を行い、4月28日から米国税関・国境警備局で預託金の徴収を始めた。最高で24.12%の相殺関税が課せられるほか、カナダの4大企業を除く製材企業に対しては90日間さかのぼって適用される。連載の前編。

国有林伐採は実質的な補助と主張

米商務省の相殺関税適用の仮決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、米国の製材企業・団体など13者からなる「製材国際貿易調査・交渉活動監視委員会(COALITION)」の申し立てに基づいている。米国企業の私有林伐採に比べ、カナダ企業の国有林伐採は実質的に補助を受けているに等しいとの主張に基づき、同省は2016年12月から調査を行ってきた。

米商務省では、カナダ産針葉樹材に対する相殺関税の調査と並行してアンチダンピング(AD)関税の調査も行っており、6月23日までに仮決定を下した上で、両関税の本決定は遅くとも9月6日をめどに行われる予定。各企業の関税支払いは、最終的な関税率決定に伴って預託金で調整される。

カナダと米国の針葉樹材をめぐる対立は1980年代から続く貿易問題で、2006年に締結した針葉樹材協定が2015年10月12日に失効後、1年間の貿易救済措置の発動制限期間を経て、2016年10月以降に動きがあるとみられてきた(2015年10月19日記事参照)。

暫定相殺関税率は3.02~24.12%

米商務省は、カナダ製材企業の米国への針葉樹材輸出に際して以下の暫定相殺関税率を適用する(表参照)。

対象企業名と暫定相殺関税率(単位:%)
企業名 暫定相殺関税率
ウエスト・フレイザー・ミルズ〔ブリティッシュ・コロンビア(BC)州〕 24.12
レゾリュート・ FP ・カナダ〔ケベック(QC)州〕 12.82
トルコ・マーケティング・アンド・セールス、トルコ・インダストリーズ(BC州) 19.50
キャンフォー(BC州) 20.26
JDアービング〔ニューブランズウィック(NB)州〕 3.02
その他 19.88

(出所)米商務省プレスリリース

カナダの林業シンクタンク、ウッド・マーケッツの針葉樹材生産量調査によると、JDアービングを除く4社はカナダの4大製材企業で、合わせると2016年のカナダの製材生産量の約40%を占めた。COALITIONは、ノバスコシア、プリンス・エドワード・アイランド、ニューファンドランド・ラブラドールのカナダ東部3州の針葉樹材は私有林伐採によるものなので調査対象外とするよう申し立てを変更していたが、米商務省の仮決定ではこれら3州の製材企業に対しても規模の大小にかかわらず一律19.88%の暫定税率が適用されることになった。一方、ニューブランズウィック州の主要製材企業であるJDアービングは3.02%と低率だったが、同社が米商務省の調査に自主的に協力し、ワシントンの弁護士事務所に依頼した上で9,000ページを超える書類を提出したことなどが報じられている(CBCニュース4月26日)。

一部の大企業以外には相殺関税を遡及適用

米商務省は、JDアービングおよびその他の企業からの輸入について「緊急事態」の仮決定を行い、暫定相殺関税の適用開始日から90日間遡及(そきゅう)して預託金の支払いを求めている。

カナダの4大製材企業のみが遡及適用を免除され、JDアービングのみが低い相殺関税を適用されていることについて、2006年に当時の保守党政権下で国際貿易相として針葉樹材協定の交渉をまとめ、2017年2月にブリティッシュ・コロンビア州政府から針葉樹材協定交渉の特使に任命されたデービッド・エマーソン氏は「大企業とその他企業に異なる制裁を課すことで、業界としての連帯感を絶ち、混乱を促すことを目的に揺さぶりをかけているのではないか。小規模の独立事業者やカナダの各地域が互いを敵対視するように計算された極めて不愉快なやり方だ」とコメントしている(「グローブ・アンド・メール」紙4月30日)。

(飯田洋子)

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