EUカナダ首脳会議でCETAに調印

(EU、カナダ)

ブリュッセル発

2016年10月31日

 EUカナダ首脳会議が10月30日、ブリュッセルで開催され、紛糾していた「EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)」が調印された。同会議の中で、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は、自由貿易協定に対する一般のコンセンサス形成の重要性に言及した。CETAは双方の議会承認を経て暫定発効する見通しだ。

<土壇場で交渉破綻を回避>

 欧州理事会(EU首脳会議)のトゥスク常任議長と欧州委員会のジャン・クロード・ユンケル委員長、そしてカナダのジャスティン・トルドー首相は1030日、ブリュッセルで第16EUカナダ首脳会議を開催、「EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)」および「EUカナダ戦略的パートナーシップ協定(SPA)」に調印した。CETAについては、ベルギー南部(フランス語圏)のワロン地域政府が署名承認に反対したため、1018日に開催されたEU外相理事会では署名承認ができず(2016年10月24日記事参照)、1027日に予定されていたEUカナダ首脳会議は開催延期となった経緯がある。その後、ワロン地域政府の同意を得ることに成功、何とか今回の調印にこぎ着けた格好だ。

 

 トゥスク常任議長は同首脳会議で、カナダを「欧州域外で最も欧州的な国」と称賛し、土壇場で交渉破綻を回避したCETAEUにとっての重要性を訴えた。

 

<コンセンサス形成の重要性を認識と議長>

 また、トゥスク常任議長はCETAをめぐる混乱を「闘争(Battle)」と表現。この闘争の中で、「事実や数字はそれだけでは意味を持たず、現代社会では印象や情緒の方がいかに重要か明らかとなった」と指摘した。自由貿易やグローバル化が貧困から数百万の人々を守ってきたことは事実だが、それを誰も信じようとしないことが問題、と同議長は述べ、自由貿易が大企業だけではなく、一般の人々の利益にかなうということを彼らに理解してもらうように努めなければならない、との認識を示した。

 

 首脳会議終了後に発表された「共同声明」でも、「公共の利益の観点、特に公共サービスや環境配慮、労働者の権利保護などの分野で、(当事)政府が規制する権限は、自由貿易協定においても守られることを原則として確認する」とあらためて明記した。

 

 なお、CETA発効に伴う利益は非常に大きいことから、(双方の議会承認を経て)暫定発効を急ぐ方針も確認された。

 

 このほか、トゥスク常任議長は当初CETAに留保を表明したブルガリア、ルーマニアについて、両国からカナダへの渡航者に対する査証(ビザ)取得義務を2017年後半までに撤廃することに、カナダが合意したことを歓迎すると発言、政治的約定があったことを示唆した。

 

(前田篤穂)

(EU、カナダ)

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