離脱延期も、英国の混迷は一層深まる

(英国、EU)

ロンドン発

2019年03月22日

3月21日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)で、英国のEU離脱(ブレグジット)が3月29日から5月22日(英国とEUのブレグジット合意案が3月25日の週に英国議会で可決された場合)か、4月12日(合意案が否決された場合)に延期されたことを受け、英国政府は週明け早々にも、EU離脱法が規定する離脱日(英国時間3月29日午後11時)の修正を上下両院に諮る見込み。他方、EU条約の下での離脱先送りが欧州理事会で決まったため、3月29日の合意なき離脱(ノー・ディール)はひとまず回避された。

欧州理事会はこのほか、英国のテレーザ・メイ首相と欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長が3月11日に合意した付属文書(2019年3月12日記事参照)を正式に承認した。付属文書の承認は、メイ首相が3月20日に欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長に宛てた書簡の中で、合意案が採択された場合の6月末までの離脱延期とともに、EUに要請していた。首相はこれにより、ブレグジット合意案に実質的な変化があったと主張して、ジョン・バーコウ英国下院議長の裁定で保留を余儀なくされた(2019年3月19日記事参照)3度目の合意案採決に臨む考え。

ただ、合意案が議会を通過する見通しは極めて厳しい。メイ首相は3月20日夜に官邸で声明を発表し、「これまで議会は決定を避けるためにあらゆる手を尽くしてきた」などと議員を手厳しく批判。直後から与野党や強硬・穏健両派を問わず、議員からの激しい反発が起こっている。首相は欧州理事会後の記者会見で、「議員もまた不満を募らせていることを理解している」と述べ、歩み寄る姿勢を示したものの、3度目の採決で首相を支持しようとする議員は一時より減っているとの見方が広がっている。

3度目も否決されれば、4月12日に向けてノー・ディールの懸念が再び高まることになる。英国産業連盟(CBI)のキャロライン・フェアバーン事務局長と英国労働組合会議(TUC)のフランシズ・オグラディ書記長は3月21日、欧州理事会に先立ってメイ首相に宛てた連名の書簡を発表。英国は非常事態に直面しているとして、(1)ノー・ディール回避、(2)合意実現につながる離脱延期、(3)「ディール(合意)かノー・ディールか」の二者択一ではない新たな選択肢、の3つのステップを踏むべきと主張し、首相に会談を要求した。労使が共同で首相に書簡を突きつけるのは異例で、経済界の不満は限界に達している。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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