輸出時の消費税:日本
質問
輸出における消費税の免税と還付手続きについて教えてください。
回答
国内取引では7.8%の消費税(国税)と2.2%の地方消費税、合わせて10%の消費税がかかります。しかし、輸出取引にあたる場合は、消費税が免除されます。これは消費税は国内で消費されるものに対して課税するが、外国で消費されるものには課税しないという考えに基づくものです。これを輸出免税といいます。
輸出免税はモノの輸出以外にも、国際輸送、国際電話など、外国に向けて行うサービスに対しても適用されます(消費税法第7条)。
税務署に届け出た消費税の課税事業者は、輸出のための仕入商品に課せられた消費税、および輸出業務や事業のために支出した諸経費への国内消費税を、所轄の税務署長に申請し還付を受けることができます。輸出取引の区分に応じて輸出許可書等の証明書が必要です。
I. 輸出免税の概要
主として国内において行う以下の輸出取引については、消費税が免除されます。
- 本邦からの輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け
- 外国貨物の譲渡又は貸付け
- 国内及び国外にわたって行われる旅客又は貨物の輸送(国際輸送)
- 外航船舶等の譲渡又は貸付けで船舶運航事業者等に対するもの
- 外航船舶等の修理で船舶運航事業者等の求めに応じて行われるもの
- 専ら国内と国外又は国外と国外との間の貨物の輸送の用に供されるコンテナーの譲渡、貸付けで船舶運航事業者等に対するもの又は当該コンテナーの修理で船舶運航事業者等の求めに応じて行われるもの
- 外航船舶等の水先、誘導、その他入出港若しくは離着陸の補助又は入出港、離着陸、停泊若しくは駐機のための施設の提供に係る役務の提供等で船舶運航事業者等に対するもの
- 外国貨物の荷役、運送、保管、検数又は鑑定等の役務の提供
- 国内と国外との間の通信又は郵便若しくは信書便
- 非居住者に対する無形固定資産等の譲渡又は貸付け
- 非居住者に対する役務の提供で次に掲げるもの以外のもの
- 国内に所在する資産に係る運送又は保管
- 国内における飲食又は宿泊
- a.又はb.に準ずるもので国内において直接便益を享受するもの
なお、免税とは、事業者にとっては、相手に対する当該代金の請求の際に消費税を加算する必要がないことを意味しています。従って、輸出先への代金請求に際して消費税を加算する必要はありません。
II. 輸出商品の仕入れにかかった消費税の還付
海外で消費される「輸出取引」等では消費税は免除されますが、輸出のために仕入れた商品代等(課税仕入れ)には消費税が含まれています。
そのため輸出企業(実際の輸出者)は、確定申告をすることで仕入れ時に支払った消費税額の還付を受けることができます。この課税仕入れの金額には、商品などの棚卸資産の購入代金のほか、その輸出事業のために支出した諸経費(事務用品の購入や交際費、広告宣伝費など)も含まれます。
消費税の還付を受けるには「課税事業者」でなければなりません。基準期間の課税売上高が1,000万円以下の企業は、消費税免税事業者ですが、課税事業者を選択する旨の届出を行うことで輸出商品の仕入れにかかった消費税の還付を受けることができます。
還付申請の概要と手続きは次のとおりです。
- 消費税課税事業者
消費税の還付を受けるには、消費税課税事業者であることが条件です。消費税課税事業者は改正消費税法で次のように定義されています。
- 事業年度の前々事業年度(以下、「基準期間」)における課税売上高が1,000万円を超える法人事業者
- 前々年の暦年(基準期間)における課税売上高が1,000万円を超える個人事業者
- 新設会社のうち、その事業年度の開始の日における資本金の額、または出資の金額が1,000万円以上の法人事業者
既存の消費税課税事業者は、所轄の税務署長に「消費税課税事業者届出書」を提出していることが還付を受ける前提となります。
- 消費税免税事業者
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の法人事業者および個人事業者、新設会社のために売上実績のない法人事業者(資本金または出資の額が1,000万円未満)および個人事業者が、消費税免税事業者として、消費税の納税義務が免除されます。免税事業者は、消費税額の控除ができないので輸出商品の仕入れにかかった消費税の還付は受けられません。
免税事業者が消費税の還付を受けるには所轄税務署長に「消費税課税事業者選択届出書(第1号様式)」を提出し、課税事業者になる必要があります。 - 消費税の還付申請書類
- 消費税課税法人事業者
課税期間の末日の翌日から2カ月以内に下記書類を所轄税務署長へ提出し還付申請します。
- 「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」
- 「仕入控除税額に関する明細書(法人用)」
- 「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」
- 消費税課税個人事業者
課税期間の翌年3月末日までに下記書類を所轄税務署長へ提出し還付申請します。
- 「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」
- 「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」
- 消費税課税事業者が輸出取引と国内取引を併営している場合
還付消費税と納付消費税が発生します。その還付税額と納付税額は上記の「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」の中で同時申告され、還付税額と納付税額が相殺されます。消費税課税事業者はその差額を還付分として得る、もしくは納付します。
なお、各届出書は税務署で入手でき、また申告書の書類などは申告時期前に税務署から送付されます。また、この手続きは電子納税申告システム「e-Tax」を利用して行うこともできます。
控除不足還付税額のある還付申告書を提出する場合、「消費税の還付申告に関する明細書」を添付する必要があります(平成23年度改正後の消費税法施行規則第22条3項)。同明細書には、従来の「仕入控除額に関する明細書」の記載事項に加えて、課税資産の譲渡や輸出取引にかかわる項目等も記載します。
新様式(第28-(8)号様式、第28-(9)号様式)および記載要領等は国税庁ウェブサイトで確認できます。また、所轄の税務署でも入手できます。
- 消費税課税法人事業者
- 消費税の還付申請時期
一般の法人課税事業者は事業年度の課税期間に対する「事業年度分の消費税の確定申告書」による税務申告の際に上記書類を税務署長に提出します。個人課税事業者は暦年の課税期間に対する「事業年度分の消費税の確定申告書」による税務申告の際に上記書類を税務署長に提出します。輸出専業や輸出比率の高い課税事業者の場合は、税務署長に「消費税課税期間特例選択・変更届出書(第13号様式)」を提出すれば課税期間は1カ月または3カ月ごとに短縮され、1年に12回または4回の還付申請ができます。 - 関係書類の保存
輸出免税の適用を受けるためには、輸出取引等の区分に応じて輸出許可書、税関長の証明書または輸出の事実を記載した帳簿や書類を整理し、納税地等に7年間保存します。
帳簿や書類とは、輸出許可が必要な物品の場合には輸出許可書が、サービスの提供などの物品以外の場合にはその契約書などの一定の事項が記載されたものを指します。 - 消費税還付のための会計処理
輸出品に関し国内での商品・原材料の調達や諸経費の支払で既に課税された消費税還付は、以下のように会計処理します。
- 通常、企業会計では、国内の売り先に商品等を販売した時に受取った消費税の額を「仮受消費税」等の科目に記帳します。輸出の売上では、免税で消費税の受取りがないため、こうした科目への記帳は不要です。
- 商品、原材料、諸経費、その他に関し調達先・サービス元等に払った消費税の全額は、「仮払消費税」の科目に記帳します。この場合、支払いのどれが輸出にかかわるかを考慮せずに、納付した消費税の全額が記帳されます。
- 決算の際に、事業年度内に受取った仮受消費税と納付した仮払消費税をそれぞれ積算し、「仮受消費税年度額」と「仮払消費税年度額」を算出します。
- 前者より後者を差し引き、その差がプラスであれば、その差額を貸借対照表の「未払消費税勘定」に計上し、決算後税務署に納税します。マイナスであれば、その差額を「未収消費税勘定」に計上し、税務署より還付を受けることになります。ただし、納付または還付の税額算出の際に非課税売上が多い場合等は、必ずしも積算された差額で納付または還付されるとは限りません。
- 売上高の中の輸出と国内販売の比率によっては消費税が還付されることがあります。 輸出の場合は受け取る仮受消費税がなく、仮払消費税の積算額には、輸出用、国内用の区別がないためです。売上が全額輸出の場合は、納付した消費税の積算額が還付対象となります。
詳細は税務署にお尋ねください。
関係機関
関係法令
国税庁:
消費税法基本通達(第7章第2節「輸出免税等の範囲」)
消費税法施行規則
参考資料・情報
国税庁:
タックスアンサー No.6551 輸出取引の免税
タックスアンサー No.6451 仕入税額の控除の対象となるもの
輸出取引に係る輸出免税の適用者
国内に営業所を有する非居住者に対する役務の提供
e-Tax
税関:
カスタムスアンサー 5003 消費税の輸出免税について(事業者の場合)
調査時点:2017年1月
最終更新:2020年1月
記事番号: J-120102
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