信用状取引の特徴および信用状で使用される用語の解釈:日本

質問

信用状統一規則には「信用状独立の原則」および「書類取引の原則」があると聞きました。どういうものか教えてください。また、実務上の留意点について教えてください。

回答

信用状取引に関する国際的ルールとして、国際商業会議所(International Chamber of Commerce: ICC)が「荷為替信用状取引規則および慣例(Uniform Customs and Practice for Documentary Credits: UCP)」を制定しています。2007年に改訂されたICC出版番号600が最新版でUCP600と呼ばれています。UCP600では、前版のUCP500(1993年制定)から信用状の独立抽象性と書類取引性が明確化されました。

I. 信用状独立の原則および書類取引の原則

信用状は、売主と買主が売買契約等を締結し、それをもとに発行されるものですが、信用状が一旦発行されると、売買契約やそれに付随する各種契約等から完全に独立して取引されます。これを「信用状独立の原則」と呼んでいます(UCP600第4条)。また、信用状は書類を取り扱うものであり、書類が関係する荷物、サービスおよび行為を取り扱うものではないとされ、これを「書類取引の原則」と呼んでいます(同5条)。

この2つの原則は、信用状取引規則の根幹をなすものであり、信用状の有するファイナンス機能を円滑にすることを目的とし、これらの原則により売買される商品についての専門知識のない銀行が提示書類のみにより判断することを可能にしています。なお、書類の有効性に関する銀行の責任は排除されています(同第34条)。

  1. 輸入者にとって留意事項

    輸入取引の場合では、信用状どおりの書類が提示されていれば輸入者が実際に受け取った荷物と売買契約書に定めている品質等が異なったとしてもそれを理由に発行銀行は信用状に基づく支払いを拒否することはできません。信用状は信用状条件に合致する書類の提示を条件とする発行銀行の受益者に対する支払い確約があることから書類上の不備や矛盾等がない限り発行銀行は受益者に対し支払うことになっているためです。

    したがって品質相違等によるクレームについては、信用状取引とは別に、売買契約書等に基づいて売主と買主で解決すべきであり、そのための条項を契約書に盛り込んでおく必要があります。第三者の検査証明書を信用状の要求書類に入れるなど対策を講じることもできますが、その場合には検査機関や検査証明書について具体的に明記する必要があります(同第14条f)。その上で必要以上の書類の要求は控えるべき(同第4条b)で、輸出者も合意できる信頼できる検査機関を指定することが必要です。また、輸出者の信用調査等を事前にしっかり行うことも大切です。

  2. 輸出者にとっての留意事項

    輸出取引の場合は、信用状が到着したら直ちに内容を細かくチェックし、契約書と矛盾がないか確認します。もし矛盾があれば修正(アメンド)を要求するなどの対応が必要です。信用状内容に問題がなければ信用状条件どおりに船積を履行し、船積書類を買取銀行に提示します。

II. 信用状で統一されている用語の解釈

信用状で使用される用語については、UCP600の第3条にてその解釈が示されています。日付関連についての解釈は次のとおりです。

  1. on or about

    on or aboutまたはこれと類似の表現は、5暦日前から5暦日後までの期間で、最初の日および最後の日を含む期間

  2. to, until, till, from, between, before, after

    船積期間を決定するために用いられる場合、to, until, till, from, betweenは、記載された日を含み、before, afterは記載された日は除外される

  3. from, after

    支払期日を決定するために用いられる場合は、記載された日は除外される(fromに関しては、船積期間と支払期日で解釈が異なる)

  4. first half, second half

    first halfは、1日から15日まで、second half は、16日からその月の末日まで

  5. 5. beginning, middle, end

    月について使用される場合、beginning は1日から10日、middleは11日から20日まで、endは21日からその月の末日まで

その他の用語に関してもUCP600ならびに「荷為替信用状に基づく書類点検に関する国際標準銀行実務(ICC-ISBP)で解釈が定められているものがありますので、詳細についてはUCP600およびISBPにてご確認ください。

関係機関

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参考資料・情報

国際商業会議所(ICC):
荷為替信用状に関する統一規則および慣例
荷為替信用状に基づく書類点検移管する国際標準銀行業務(IDBP)

調査時点:2011年8月
最終更新:2017年9月

記事番号: A-A10938

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