輸入者側で貨物の保険を手配する際の留意点:日本

質問

海外のメーカーからCFR条件で建材を輸入しようと考えていますが、輸入者側で貨物の保険を手配する際に留意すべき事項について教えて下さい。

回答

輸入者側が日本の損害保険会社の外航貨物海上保険を付保することは、保険の内容や保険会社の選択を十分検討することができ、事故にも即対応できるため、輸出者に付保依頼するより有利になることがあります。

I. 保険条件の検討と付保

  1. 保険条件

    輸入者は、商品にもっとも適当と思われる保険条件を選びます。その商品が一般工業製品の場合は、2009年改訂協会約款(Institute Cargo Clause)では、ICC(A)(1963年協会貨物約款ではAll Risks=A/Rに相当)が一般的です。バラ積建材の場合は商品によりICC(B)(同分損担保、with Average=W/A)やICC(C)(同分損不担保FPA=Free from Particular Average: FPA)が適当な場合もあります。特約の付加も検討します。事前に積地、揚地、貨物の種類や荷姿、梱包を保険会社に伝えて打ち合わせます。1,000G/T(総トン数)以下の船や老齢船の場合、在来船の甲板積みの場合は保険料が割増になるので注意が必要です。また必要に応じ、戦争危険(War Risks)やストライキ危険(Strikes, Riots, Civil Commotions Risks)などに対する特約もあわせ付保します。

    ロンドン保険業者協会およびロイズ保険業者協会は、1963年版協会貨物約款の構成と文言が複雑難解であるとの批判に応え1982年1月、新保険証券および新協会貨物約款を制定しました。その後更に、2009年1月1日、英国保険市場において1982年協会約款を改定した「2009年改定協会約款」が正式導入されました。この「2009年改定協会約款」は我が国の保険会社各社でも、概ね被保険者に有利な条件となっていること、昨今の貿易環境の変化に対応したものであること、文言の平易化がなされていること等の理由から、同年6月頃から導入も始まり、切り替えが拡大しました。
    新協会貨物約款(新ICC Clause)ではオールリスク(A/R)がICC(A)、分損担保(W/A)がICC(B)、 分損不担保(FPA)が ICC(C)に対応しています。詳細については保険会社にお問い合わせ下さい。

  2. 保険金額

    保険金額は、CFR(Cost and Freight、運賃込み)条件で輸入する場合、CFR価格に保険料を加算してCIF価格を算出し、これに期待利益分の10%加算した額で付保するのが通常です。

  3. 輸入税保険

    輸入貨物で輸入関税が課せられる貨物については、輸入税保険(Duty Insurance)を付保するか否か検討します。輸入通関が済み、国内指定倉庫に搬入された際に損害が発見された場合、既に納入した関税の還付は実質的にほとんど認められていないのが実態です。輸入税保険はこの場合の輸入税の損失を補償するものです。輸入税額が高額になる場合、その関税損失の補填に備える必要があります。

    上記を検討のうえ、船積前に入手している範囲の情報で予定保険を付保し、船積後確定保険に切り替えます。

II. 保険期間の開始と終了

  1. 輸入貨物の保険の開始時期

    貨物海上保険は、「Warehouse to Warehouse Clause」(倉庫間約款) に基づき、「貨物が保険証券記載の船積地倉庫その他の保管場所から搬出された時に開始し、証券記載の揚地にある最終倉庫またはその他の保管場所に搬入された時に終了」します。しかし、輸入貨物の保険始期は、輸出貨物の始期と異なりますので注意が必要です。CFR条件での輸入貨物については、「FOB Attachment Clause」が適用され、インコタームズ上のリスク移転時期、すなわち貨物を輸出本船の甲板に置いた時点が、保険の始期となります。したがって、船積完了までは海外側サプライヤーによる保険付保が必要です。

  2. 売買契約と保険始期との整合

    日本の保険会社は、FOB、CFRで輸入される貨物の保険を引き受ける時には、「FOB Attachment Clause」という約款をつけて引き受けています。「FOB Attachment Clause」は、本来買手が付保する必要のない通常の保険でカバーする現地倉庫搬出から本船積込(FOB)までのリスクを、填補の範囲から外すことで、買手のリスクに即した保険にすることを通じて、保険料の過負担を排除するために適用されるものです。

  3. その他

    輸入者が保険を引き続き延長利用したい場合など、保険をオーダメイドにすることも可能ですので、事前に保険会社と相談してください。

III. コンテナ貨物への対応について

コンテナ輸送の場合、コンテナバンニング・運送人への引き渡し時より内部貨物の事故の有無の確認が行われません。保険期間内の事故か否かの判断が難しい場合があるので、リスク管理上、売買条件をCPT(Carriage Paid to)にすることが望ましいです。このようなコンテナ貨物や国際複合輸送貨物に対応するための約款として、「Free Carrier Attachment Clause」があります。貨物が仕出国の内陸地におけるファースト・キャリアに引き渡され、その運送人の管理下におかれた時点から危険開始の旨を規定しています。工場バンニングでのシッパーズパックや売主の内陸地の倉庫からのトラック輸送などの「危険の移転」と「保険始期」の整合をとり被保険者無保険状態にならないように約款をつけます。また、コンテナシールに異常の見られない場合のコンテナ内貨物の数量不足は「不積み」と判断されるのでサプライヤーに求償することが必要です。

調査時点:2011/08
最終更新:2017/11

記事番号: A-010735

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