日本の出汁を世界の“DASHI”に
2021年10月07日
「世界は今」のアクセシビリティ対応について
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ドイツにある日本食材販売店では、ビーガンやベジタリアンも意識して「出汁」の素材として、「椎茸」を扱うことにした。一方、北海道のある昆布製品の製造販売業者は、海外で親しまれている和食に昆布出汁がほとんど使われていないことから、その良さを理解してもらう活動を行っているほか、成分の含有量に対して輸入規制のある国に向けた対応商品の開発も進めている。まだ十分に知られていない「出汁」となる食材で、地道に販路開拓に取り組む企業を取材した。
(11分36秒)
テキスト解説:視覚障害のある方のための文字おこしテキストです。
映像説明: ジェトログローバルアイオープニングタイトル。 フランス・パリのエッフェル塔や凱旋門、アニメキャラクターのコスプレをした20代くらいの海外の女の子や、渋谷のスクランブル交差点の写真など、世界中の12枚の写真が画面の奥から飛び出してくる。水色を基調としたコンピューターグラフィックの背景に、中が空洞になった緑色(みどりいろ)の地球儀が回転しながら現れる。画面右側で地球儀が回転し、左側に紺色の文字で「世界は今 JETRO Global Eye(ジェトロ グローバル アイ)」と書かれたタイトルテロップが表示される。
映像説明: スタジオ。横長の背景モニターに緑色(みどりいろ)を基調とした地球儀と「世界は今 JETRO Global Eye(ジェトロ グローバル アイ)」のロゴが映し出されている。前方にも小さいモニターが置いてあり、白い皿に載せられたのりを巻いた2個のおにぎりと赤い箸が上に置かれた味噌汁が入った木製の器が並べて置かれた映像が映し出されている。モニターの左側、スタジオ中央に女性キャスターが座っている。ピンク色のブラウスと白いスカートを着ている。
女性キャスター: 世界は今、ジェトログローバルアイ。
映像説明: 薄い黄緑色(きみどりいろ)のモニターを背景にした女性のバストショット。
テロップ: 江連 裕子(えづれ ゆうこ)
江連(えづれ)キャスター: 今や「和食」は世界中で親しまれ、和食を扱うレストランの数は増え続けています。
映像説明: スタジオ。江連(えづれ)キャスターが左のほうに体の向きを変える。画面の左側に江連(えづれ)キャスター。右側に小型モニターがあり、鍋に沸かした湯の中で昆布(こんぶ)で出汁を取っている様子、薄いグレーのテーブルの上に並べて置かれたパッケージに「真昆布(まこんぶ)」「だし昆布(こんぶ)」「とろろ」などと書かれた6種類の昆布商品(こんぶしょうひん)や干し椎茸の商品が映し出されている。江連(えづれ)キャスターが話を続ける。
テロップ: 出汁
テロップ: 日本の出汁を世界の「DASHI」に
江連(えづれ)キャスター: その和食のうまみの決め手となるのが出汁。日本ならではの出汁の、その味わいを海外に伝えようと奮闘する企業を取材しました。
映像説明: 青空の下の道路を黒い車が走っていく。歩道には街路樹が植えられ、道路の両脇には十数台の車が駐車している。道路の突き当りには、出入り口に「OPEN」と書かれた三角屋根に塔がついた赤茶色の建物が建っている。画面左下の四角い枠にドイツの地図。ドイツは、東側はポーランド、西南側はフランス、北部はバルト海に面していて緑色(みどりいろ)で示されている。ドイツ東部に位置する首都ベルリンが赤い星印で示されている。
テロップ: ベルリン
ナレーション: ドイツの首都、ベルリン。
映像説明: 白い壁と扉、木目調の床の部屋。白いベッドにオレンジ色(いろ)の布団がしいてあり、扉の取っ手にはグレーのリュックがかけられている。白い扉のある出入り口の近くの床にはピンク色の豚の貯金箱が置いてある。 部屋の一角にある白い壁のキッチン。グレーの冷蔵庫が置いてあり、赤い扉の棚が備え付けられている。グレーのTシャツと紺色のハーフパンツを着てひげをはやした男性がシンクで電気ポットに水を入れたり、包丁で食材を切っている。
サイドテロップ(画面右上にほぼ常時表示): ベルリンでブーム? 出汁から味噌汁作り
テロップ: アンジェロさん
ナレーション: この町で暮らすアンジェロさんは、何やらキッチンで料理の真っ最中。
映像説明: アンジェロさんが透明の袋から乾燥椎茸を取り出してこちらのほうに見せる。
テロップ: 乾燥椎茸
ナレーション: 取り出したのは、乾燥椎茸。
映像説明: 調理スペースに黄緑色(きみどりいろ)の四角いボールが、シンクには水色のボールが置かれている。アンジェロさんが水の入った水色のボールに乾燥椎茸を入れる。 乾燥椎茸が水色のボールの水一面に浮かんでいる。 アンジェロさんが椎茸の入った出汁を水色のボールからコンロに置いた鍋に移している。 コンロの前で木製のおたまを口に運ぶ。
ナレーション: 日本の文化が好きだというアンジェロさん。自ら和食も作るようになり、味噌汁は出汁を取るところから本格的に作っている。これまでに、かつお節や昆布(こんぶ)を試したことがあるが、今回は椎茸に初挑戦だ。まずは出汁のテイスティング。
映像説明: コンロの前で木製のおたまを持ち、アンジェロさんが味の感想を言っている。
アンジェロさん・日本語: おいしい。
アンジェロさん・ドイツ語吹き替え: かつお節の出汁と同じくらいおいしいよ。 かつお節は魚の香りがするけど、椎茸の出汁もおいしいね。 自然の風味があるよ。
映像説明: 豆腐とワカメの入った鍋に味噌を溶かしている。
ナレーション: 具材が煮えたら味噌を加えて…。
映像説明: ステンレスの台の上に豆腐とワカメの味噌汁が入った木製の器が置いてある。木製の器には木製のスプーンも添えられている。
テロップ: アンジェロさん特製 椎茸の味噌汁
ナレーション: アンジェロさん特製、椎茸の味噌汁が完成だ。
映像説明: 白い壁の部屋。画面右側に黒いソファーがあり、その前に置かれた黒いテーブルにアンジェロさんが座っている。テーブルには木製のスプーンが添えられた木製の器のほかに、白い皿に載せられたのりを巻いた2個のおにぎりと赤い箸が置かれている。おにぎりの奥には器に盛られたキュウリのような物が見える。
アンジェロさん・日本語: いただきます。
映像説明: 白い壁の部屋。アンジェロさんが木製の器からスプーンで味噌汁を口に運ぶ。白い皿に載せられたおにぎりに手を伸ばし、1口食べたあと、右手の親指と人差し指で丸を作る。グレーと黒のまだら模様の猫がテーブルの上に飛び乗り、おにぎりに鼻を寄せる。
アンジェロさん: おいしい。
映像説明: 石畳の歩道。薄紫色(うすむらさきいろ)の上着を着た女性が自転車に乗って通過する。クリーム色(いろ)の外壁に大きなガラス窓の店舗の外観。窓には白い日本列島(にほんれっとう)のイラストや白い文字で「JAPAN」「FOOD & TRAVEL in BERLIN(フード アンド トラベル イン ベルリン)」などと書かれている。外壁の上部には白と青で「HIS(エイチアイエス)」と書かれた看板が掲げられている。歩道には黒板に茶色の枠がある看板や木製の天板と緑色(みどりいろ)の脚がついたテーブルとベンチが置かれている。
ナレーション: 和食好き(わしょくずき)のアンジェロさんが、よく食材を買いに訪れているのがこちらのお店。
映像説明: 白い壁で木製の床の店内。白塗りの着物を着た女性や竹林のポスターが飾られている棚にさまざまな商品が並べられている。 六角形の柄(がら)の布がかけられた台にしょう油やふりかけが入った瓶、梅干しが入った丸い容器、袋に入った昆布(こんぶ)や乾燥椎茸、さんしょうの粉が入った缶などの商品が並んでいる。
テロップ: HIS JAPAN FOOD&TRAVEL in BERLIN(エイチアイエス フードアンドトラベル イン ベルリン)
ナレーション: 今年2月、旅行代理店の「HIS(エイチアイエス)」が、「食」を通じて日本の魅力を発信するアンテナショップとしてオープン。
映像説明: 木製の棚に大小の茶色い日本酒(にほんしゅ)の瓶やおちょこが並んでいる。 スチール製の棚には日本の観光名所を紹介するパンフレットが並べられ、手前には茶道の道具が並べられた小上がり(こあがり)の畳が設けられている。
ナレーション: 新型コロナによる海外への移動制限が解除されたあと、日本への旅行につなげるためだ。
映像説明: すだれ状の敷物が敷かれた机の上に「ほんだし」、「かつおだし」、乾燥椎茸、昆布(こんぶ)などの商品が並べられている。 グレーのTシャツを着た男性と、グレーの服の上に青い法被を着て眼鏡をかけた男性が話をしている。2人ともマスクをつけている。 グレーの服の上に青い法被を着た男性がすだれ状の敷物が敷かれた机の上に並んだ「ほんだし」、「かつおだし」、乾燥椎茸、昆布(こんぶ)などの商品を手に取り、位置を整えている。
ナレーション: 店内には味噌汁の材料を集めたコーナーが設けられ、スタッフが作り方も教えてくれる。最近、こちらの店では、味噌汁の作り方を聞かれることが増えてきたという。
映像説明: パンフレットが並んだスチール製のラックの前にグレーの服の上に青い法被を着て眼鏡をかけ、マスクをつけた男性が座り、インタビューに答える。背後の窓からは歩道がみえる。 すだれ状の敷物が敷かれた机の上に、パッケージに「ほんだし」「かつおだし」「こんぶだし」と書かれた商品や乾燥椎茸、八丁味噌、豆腐、ワカメなどの商品が並べて置かれている。 グレーの服の上に青い法被を着て眼鏡をかけ、マスクをつけた男性が話を続ける。
テロップ: HIS JAPAN FOOD&TRAVEL in BERLIN(エイチアイエス フードアンドトラベル イン ベルリン) ライナー・シュトッペ さん
ライナーさん・ドイツ語吹き替え: 新型コロナの流行で(自粛期間に)自宅で外国の料理を作ってみたいなど、新しいレシピを求めるお客さまが多くなりました。 私たちの店では日本の食材を扱っていることもあり、 味噌汁を作りたいというお客様がやってきて、ベストな調理方法を聞かれたりします。
映像説明: 室内。アンジェロさんがIHコンロでワカメと豆腐、出汁の入った鍋におたまとスプーンで味噌を溶いている。 店内。グレーの服の上に青い法被を着てマスクをつけたライナーさんが、商品が並んだ棚を背景に、商品を手に持ちながら接客をしている。
テロップ: 重要なのは出汁
ナレーション: 味噌汁は、お湯に味噌を入れるだけだと思っている客も多いため、実は重要なのは「出汁」だということを丁寧に伝えている。
映像説明: すだれ状の敷物が敷かれた机の上に置かれた竹製のザルに真空パックの乾燥椎茸が入っている。 さまざまな商品が並んだ棚。ライナーさんが乾燥椎茸などが置かれた机の前で接客をしている。
ナレーション: そうしたなか、この夏からは乾燥椎茸も取り扱うことになった。それは、あるニーズに応えるためだと言う。
映像説明: グレーの服の上に青い法被を着たライナーさんがパンフレットが並んだスチール製のラックの前に座り、インタビューに答える。 レース編みの青い服を着てマスクをつけた女性が商品の乾燥椎茸を手に取って見ている。 透明の袋に入った乾燥椎茸。 グレーの服の上に青い法被を着たライナーさんが話を続ける。
テロップ: HIS JAPAN FOOD&TRAVEL in BERLIN(エイチアイエス フードアンドトラベル イン ベルリン) ライナー・シュトッペ さん
ライナーさん・ドイツ語吹き替え: ビーガンやベジタリアンのお客さまからは、例えば魚を使わないものなど、ビーガンの人が食べられる味噌汁について聞かれます。 そこで、野菜をベースにした出汁を探して、この椎茸が喜ばれるのではないかと考えました。
映像説明: こげ茶色(こげちゃいろ)の布が敷かれたテーブルに乾燥椎茸の商品が置かれている。商品のそばに茶色の飲み物が入ったグラスが置かれ、白地に赤、青、グレー、オレンジ、紫色など色とりどりのキノコの柄(がら)が入った服を着た男性がノートパソコンに向かっている。奥には木製のラックと観葉植物と窓がみえる。
サイドテロップ(画面右上にほぼ常時表示): 日本のDASHIを世界へ 原木椎茸(げんぼくしいたけ)で挑む
テロップ: 東京
テロップ: 椎茸祭(しいたけまつり) 竹村 賢人(たけむら けんと) 社長
ナレーション: この乾燥椎茸の商品を開発・販売しているのは、椎茸祭(しいたけまつり)の竹村さん。
映像説明: 男性が銀色のスティック状の袋の商品や水色とピンク色の丸いシールを貼った薄茶色(うすちゃいろ)の紙の袋に入った商品を持ちながら話をしている。 手に持たれた銀色のスティック状の袋の商品と水色とピンク色の丸いシールを貼った薄茶色(うすちゃいろ)の紙の袋に入った商品。 こげ茶色(こげちゃいろ)の布が敷かれたテーブルにしょうゆが入ったボトル、透明の袋に入った乾燥椎茸、水色とピンク色の丸いシールを貼った薄茶色(うすちゃいろ)の紙の袋に入った商品が並んで置かれている。
テロップ: 椎茸の出汁をベースにした商品展開
ナレーション: 乾燥椎茸以外にも椎茸の出汁をベースにした商品を展開している。
映像説明: 木が生えた場所の写真。椎茸の原木が斜めに組まれ、並べて置かれている。 原木(げんぼく)から1本の椎茸が生えている写真。 原木(げんぼく)に生えた1本の椎茸の茎を水色の服を着た人がつまんでいる写真。(画像提供 椎茸祭(しいたけまつり))
テロップ: 原木椎茸(げんぼくしいたけ)
ナレーション: 竹村さんがこだわっているのは自然の環境の中で、天然の木を使って栽培する原木椎茸。ハウス栽培に比べ、手間はかかるが、風味や香りに優れ、育てられた山によって味わいが変わる。
映像説明: グレーの服の上に青い法被を着たライナーさんが味噌や酒が並んだ冷蔵コーナーの棚の前で花柄の服を着た女性の接客をしている。背後には大きな窓がみえる。 レース編みの青い服を着た女性が商品の乾燥椎茸を手に取って見ている。
テロップ: 天然由来の栽培法 需要増
ナレーション: 今、欧米では、ビーガンの需要が広がるとともに、こうした天然由来の方法で作られた製品を好む客が増えているという。
映像説明: 木製のラックと窓のある部屋。色とりどりのキノコの柄(がら)の服を着た竹村社長がインタビューに答える。 原木(げんぼく)に1本の椎茸が生えている写真。(画像提供 椎茸祭(したけまつり)) 木製のラックと窓のある部屋で竹村社長が話を続ける。
竹村社長: 原木栽培(げんぼくさいばい)の椎茸って、ほとんど日本(にほん)にしかないんですね。 日本(にほん)にしかない、その原木椎茸っていうものが、世界中に広げられるチャンスかなと思ってますし、 あと、片一方でマーケットとして、そのビーガンとかプラントベースっていうものの食品の需要っていうのは高まっているので、 そういう意味でも椎茸というのはすごい出汁だったりとか、もちろんそのまま食べるマッシュルームの仲間としても使えますけど、 そういう意味でも広がりがあるのかなというふうに思ってます。
映像説明: 雲が浮かぶ青空の下。こげ茶色(こげちゃいろ)のレンガ造りの倉庫が数棟建っている。手前には緑のつたが壁に茂った倉庫が建ち、奥には木々(きぎ)の茂った山が見えている。 港へとまっすぐに伸びる2車線の下り坂。左右の歩道には街路樹が植えられている。港の奥には街並みが見えている。
サイドテロップ(画面右上にほぼ常時表示): 老舗企業の挑戦 昆布出汁の使い方
テロップ: 北海道 函館市
ナレーション: 一方こちらは、全国有数の水産都市、函館。
映像説明: 高いところから見下ろした海沿いの町。海沿いに民家が立ち、奥には海が広がっている。
ナレーション: ここにも、和食に欠かせない「出汁」がある。
映像説明: 漁港。漁船の上で昆布(こんぶ)が溢れるほど入った網がつり上げられている。 陸揚げされた茶色い昆布(こんぶ)。 石を敷き詰めた干場。5人の男女が茶色い昆布(こんぶ)を並べている。 室内。マスクを着け、チェック柄のエプロンを着けた女性が作業台の上で干した深緑色(ふかみどりいろ)の昆布(こんぶ)をスポンジのようなもので軽くふいて折りたたんでいる。作業台の上には折りたたまれた深緑色(ふかみどりいろ)の昆布(こんぶ)が積まれている。
ナレーション: 夏、繁忙期を迎えるのが昆布漁(こんぶりょう)だ。国内生産の昆布(こんぶ)はほとんどが北海道産で、全体のおよそ95%を占めている。
映像説明: 漁港。白いTシャツの上に赤いライフジャケットを着てタオルを首に巻いた男性が声をかけて手を振り、マスクを着ける。
テロップ: 丸善納谷商店 納谷 太郎 専務
映像説明: 航行する漁船の上。マスクを着け、白いTシャツの上に赤いライフジャケットを着た納谷専務が漁船の進む先を見つめている。手前には、たも網が立てかけられている。
ナレーション: この日、港にやってきたのは、この地で100年以上、昆布(こんぶ)の加工販売を行ってきた丸善納谷商店の納谷さんだ。
映像説明: 航行する漁船の上。納谷専務が漁船の進む先を見つめている。手前にはたも網が立てかけられている。 停泊している漁船の上。納谷専務と白いTシャツに青い胸付ズボン(むねつきずぼん)を履いた男性が茶色い昆布(こんぶ)を漁船に引き上げている。 納谷専務が引き上げた茶色い昆布(こんぶ)を広げて眺めている。 白いTシャツに青い胸付ズボン(むねつきずぼん)を履いた男性が漁船の先を指さし、納谷専務が男性が指さした方向を見つめる。
ナレーション: 納谷さんは、数年前から海外への販路拡大に精力的に取り組んでいる。国内では需要が減少している昆布(こんぶ)だが、海外では和食の人気が高まっているからだ。しかし…
映像説明: クリーム色(いろ)の壁の室内。透明の袋に入った乾燥昆布(かんそうこんぶ)の商品とノートパソコンが置かれた机の前で、納谷専務がインタビューに答える。
納谷専務: 実際にですね。まあ輸出先の国に行きますと、和食といったらですね、刺身、焼き鳥、豚カツ、ラーメン。 全然、昆布出汁を使わないんですよ。
映像説明: 室内。8人の外国人の男女が調理台を囲むように立っている。白いブラウスを着て眼鏡をかけた女性が手に紙を持ちながら話をしている。 調理台の前に4人ほどの外国人男性が立っている。カーキ色(いろ)の服を着て眼鏡をかけた外国人男性が、手ぶりを交えながら話をしている。
テロップ: 2018年 ロンドン UMAMIセミナー 開催
ナレーション: そこで納谷さんは、2018年、ロンドンの一流シェフを集めてUMAMIセミナーを開催した。
映像説明: セミナー会場。奥の壁には森林の壁紙が貼られている。手前には調理台があり、料理が盛りつけられた皿があり、コンロには具材が入った片手鍋、まな板の上には包丁やスプーンなどが置かれている。中央に置かれた机を囲むように10人ほどの外国人男女が座っていて、調理台のほうを眺めている。 セミナー会場の一角。調味料やコンロの上に寸胴鍋などが置かれた調理台を囲み、8人の外国人男女が立っている。眼鏡をかけ、柄(がら)の入ったシャツを着た外国人男性が黒い器に入った調味料をスプーンですくい、指でつまんで口に運ぶ。白とグレーのストライプ柄のシャツを着た外国人男性が黒い器の調味料をスプーンですくおうとしている。
ナレーション: 和食にこだわらず、まずは昆布(こんぶ)の出汁について知ってもらい、フレンチなどの西洋料理にもアレンジしてもらおうと考えたのだ。
映像説明: 木製の机の上に置かれた両手鍋とイタリアンパセリとディルの写真。両手鍋には透明の液体の中ににんじん、皮が付いたままの玉ねぎ、肉、ローリエなどが入っている。
テロップ: 西洋の出汁
テロップ: 何種類(なんしゅるい)もの材料を長時間 煮込む
ナレーション: 西洋料理の出汁は、ブイヨンなど、何種類(なんしゅるい)もの材料を長時間煮込んで作る。
映像説明: 黒い机の上に白い粉が付いた乾燥昆布(かんそうこんぶ)、白い皿にもられた煮干し、乾燥椎茸、竹皿に盛られたかつお節(かつおぶし)が置かれている写真。 銀色の雪平鍋に入った澄んだ黄金色(こがねいろ)のスーを銀色のおたまですくっている写真。
テロップ: 日本の出汁
テロップ: 素材が持つうまみの成分を短時間で抽出
ナレーション: 一方、日本の出汁は、素材そのものが持つうまみの成分を短時間で抽出する。
映像説明: 白い石造りで外壁に彫刻などがある古い建築様式の建物の外観。前の歩道には街路樹が植えられていて、人々が歩いている。出入り口の上部には「THE CLOVE CLUB」と書かれた立体文字が掲げられており、紺色の扉がある。
サイドテロップ(画面右上にほぼ常時表示): 日本のDASHI世界へ 一流レストランで舌鼓
テロップ: ロンドン
映像説明: 白い壁の店内。白いテーブルクロスが掛けられた丸テーブルが並べられている。テーブルにはグラスやナプキンが置かれ、花瓶にベージュ色(いろ)の草花が飾られている。
テロップ: The Clove Club
ナレーション: こちらのレストランに、そのときのセミナーに参加したシェフがいるという。ミシュランガイドにも掲載されている、一つ星レストランだ。
映像説明: 紺色のタイル壁のちゅう房。白いコックコートを着て眼鏡をかけた外国人男性がコンロに置かれた銀色の寸胴鍋を揺らしながら中を見ている。壁際の棚からスプーンを取り、寸胴鍋の中の具材を混ぜている。
テロップ: The Clove Club アイザック・マクヘイル 料理長
ナレーション: ちゅう房で腕をふるっているのは、ヘッドシェフのマクヘイルさん。
映像説明: 調理台の上。マクヘイル料理長が乳白色の液体が入った銀色の寸胴鍋に白い粉がついた乾燥昆布(かんそうこんぶ)を3枚入れている。 紺色のタイル壁のちゅう房。マクヘイル料理長がコンロに置かれた具材が入った銀色の片手鍋の中のスープをスプーンで口に運び、味見をして軽くうなずいている。
ナレーション: この日は、昆布(こんぶ)の出汁を使った新しい料理を出すという。
映像説明: まな板の上。オレンジ色(いろ)のくん製マスを包丁で刻んでいる手元。 白いテーブルクロスが掛けられたテーブルの上。淡い水色の丸皿(まるざら)の中央にだ円形に盛りつけられた刻まれたくん製マスに、クリーム色(いろ)のソースを添えていく。刻まれたくん製マスの上には香草が添えられている。
ナレーション: 一度、くん製したマスを細かく刻み、昆布(こんぶ)で出汁をとったジャガイモのソースを添える。
映像説明: 紺色のタイル壁のちゅう房。マクヘイル料理長がインタビューに答える。
マクヘイル料理長・英語: 西洋人の舌には、じゃがいもは、なじみがあるので(昆布(こんぶ)の味が)すぐに分かると思います。 昆布出汁(こんぶだし)が入っていることで、さらにおいしくなっています。 より満足感が得られる味になり、さらにコクが出ます。
映像説明: 白い壁の店内。窓際にはベージュ色(いろ)の草花が飾られている。グレーのスーツを着た外国人男性が白いテーブルクロスが掛けられた窓際の丸テーブルに座り、淡い水色の丸皿(まるざら)に盛りつけられた、ジャガイモのソースが添えられた、くん製マスの料理をうなずきながらスプーンで口に運ぶ。料理が盛りつけられた皿の横には水が入ったグラスとナプキンが置かれている。
ナレーション: この料理に、食べた客も大絶賛だ。
映像説明: 白い壁の店内。くん製マスの料理が盛りつけられた皿が置かれたテーブルに座り、グレーのスーツを着た外国人男性がインタビューに答える。 淡い水色の丸皿(まるざら)に、刻まれたくん製マスの周りにジャガイモのソースが添えられた料理が盛りつけられている。刻まれたマスの上には香草と揚げられた棒状のものが添えられている。ジャガイモのソースの周りに緑色(みどりいろ)のパウダーがふりかけられている。 白い壁の店内。グレーのスーツを着た外国人男性が話を続ける。
グレーのスーツを着た外国人男性・英語: マスとの組み合わせは、とても良かったと思います。 刻んだマスは非常に柔らかく、魚介類の塩気と昆布(こんぶ)の香ばしさ、 ソースのコクがうまく調和しています。 この組み合わせは完璧なトライアングルですね。とても好きな味です。
映像説明: 倉庫の中。通路の両脇の棚に大量のダンボール箱が積み上げられている。白いTシャツを着て黄色いヘルメットをかぶった納谷専務と青い服を着て黒いヘルメットをかぶった男性が積み上げられたダンボール箱を指さしながら歩き、話をしている。 倉庫の一角。ビニールで包まれ、ダンボール材で挟まれた乾燥昆布(かんそうこんぶ)が積みあげられた前で、納谷専務が乾燥昆布(かんそうこんぶ)を鼻に近づけ、香りを確認したり、眺めている。青い服を着て黒いヘルメットをかぶった男性がその様子を見ている。
サイドテロップ(画面右上にほぼ常時表示): 新技術開発で10年ぶり オーストラリアへ輸出
ナレーション: 昆布(こんぶ)の出汁を西洋料理へと広げてきた納谷さんは、今、新たな商品開発に挑戦している。
映像説明: 研究室のような室内。壁際にはさまざまな機械が置かれている。白いノーカラーシャツを着た納谷専務がインタビューに答える。
テロップ: 丸善納谷商店 納谷 太郎 専務
納谷専務: えー、オーストラリアにいるシェフたちから、要は日本(にほん)の昆布(こんぶ)が欲しいということで依頼をもらったんですけども、 輸出しようとしたらですね、オーストラリアにはヨウ素(ようそ)の摂取基準があるということが分かったんですね。
映像説明: 海中。昆布(こんぶ)が潮の流れでゆれている。(映像提供 丸善納谷商店)
テロップ: ヨウ素(ようそ) 主に海藻類に含まれている栄養素
ナレーション: ヨウ素(ようそ)とは、主に海藻類に含まれている栄養素。
映像説明: 青空の下の港。白い帆のような屋根のシドニー・オペラハウスが建っている。手前を船舶が航行している。 街なか。茶色い建物の前の歩道に街路樹が植えられている。車道を挟んで手前の歩道を大勢の人が歩いている。
ナレーション: しかし、もともと海藻を食べる習慣のなかったオーストラリアの人々。
映像説明: オーストラリア政府のウェブサイト。上部にはコンテナがたくさん並んだ写真が掲載されている。下部には英語で文章が書かれており、「Imported Food Inspection Scheme risk food」の文字に赤い下線がひかれる。(オーストラリア政府ウェブサイト)
テロップ: 輸入食品検査制度におけるリスク食品
映像説明: ページが切り替わり、テスト結果の「iodine」、「Maximum level 1000mg/kg dry weight(マキシマム レベル ワンサウザンド ミリグラム パー キログラム ドライ ウェイト」の文字に、それぞれ赤い下線がひかれる。(オーストラリア政府ウェブサイト)
テロップ: ヨウ素(ようそ)
テロップ: 最大レベル1000mg/kg(せんミリグラム パー キログラム) 乾燥した重量
ナレーション: 2010年、輸入食品のヨウ素(ようそ)の含有量に上限が設けられた。過剰に摂取してしまうと、健康上のリスクにもなるからだ。
映像説明: 白い机の上。さまざまな昆布(こんぶ)の商品が並べられている。青で縁取り(ふちどり)されたパッケージに白い器に椎茸やにんじんなどが入ったスープの写真と「JAPANESE KOMBU(ジャパニーズ コンブ)」などと書かれた商品。透明の袋に「一等検 真昆布(まこんぶ) 高級だし用」などと書かれた商品。透明の袋に「だし昆布(こんぶ)」などと書かれた商品。透明の袋に「おいしく粘る とろろ」などと書かれた商品。
ナレーション: 日本の一般的な昆布(こんぶ)は、この基準の3倍から4倍ものヨウ素(ようそ)が含まれていることが分かった。
映像説明: クリーム色(いろ)の壁の室内。マスクを2重に付けた納谷専務が机の上のノートパソコンに向かっている。
ナレーション: なんとかこの量を減らさなければ、輸出することができない。
映像説明: 雲が浮かぶ空の下。白い外壁の2階建ての建物の外観。奥の出入り口に向かって、建物沿いに歩道と車道が設けられている。右側には芝生があり、芝生の奥には「北海道立工業技術センター」と書かれた看板が設置されている。
テロップ: 北海道立工業技術センター
ナレーション: そこで相談に訪れたのが、地域の中小企業の研究開発を支援する施設。
映像説明: クリーム色(いろ)の壁の室内。壁際に設置されたホワイトボードには数値などが書かれている。白衣を着て眼鏡をかけた男性がホワイトボードを指さしながら話をしている。納谷専務が机の上のノートパソコンとホワイトボードを交互に見ながら話を聞いている。 白衣を着て眼鏡をかけた男性がホワイトボードに書き込みながら話をしている。
テロップ: 北海道立工業技術センター 研究開発部 木下 康宣(きのした やすのり) 博士(はくし)(水産化学)
ナレーション: 食品分野を担当している木下さんは、水産科学分野の博士(はくし)でもある。
映像説明: 研究室のような室内。銀色や白い箱型の機械があり、奥の白い棚にはさまざまな容器が置かれている。手前の黒い机の上には透明の袋に入った数種類の乾燥昆布(かんそうこんぶ)の商品や2台のノートパソコン、3本の遠沈管(えんちんかん)が立てられたラックが置かれている。木下博士(はくし)が机の上の透明の袋に入った乾燥昆布(かんそうこんぶ)を指さしながら納谷専務に話をしている。納谷専務がうなずきながら話を聞いている。 さまざまな容器が置かれた白い棚の前。納谷専務が3本の遠沈管(えんちんかん)が建てられたラックを持ち上げたり、胸元に下ろして眺めている。木下博士(はくし)が、納谷専務が持つラックに立てられた遠沈管(えんちんかん)を目で追いながら話をしている。
ナレーション: 木下さんは、技術の開発と同時に、商売として成り立つよう、コストも重要だと話す。
映像説明: 研究室のような室内。白い機械が置かれた前で、木下博士(はくし)がインタビューに答える。 さまざまな容器が置かれた白い棚の前。黒い机の上に透明の袋に入った数種類の乾燥昆布(かんそうこんぶ)と2台のノートパソコン、3本の遠沈管(えんちんかん)が立てられたラックが置かれている。木下博士(はくし)が薄い黄色い液体が入った透明の小さなカップを納谷専務に手渡す。納谷専務が受け取った小さなカップを鼻に近づけ、香りを確認する。 遠沈管(えんちんかん)に入っている薄い黄色い液体を透明の小さなカップに注ぐ。 木下博士(はくし)と納谷専務が話をしている。 研究室のような室内。白い機械が置かれた前で、木下博士(はくし)が話を続ける。
木下博士(はくし): ヨウ素(ようそ)を抜くだけだと、ある意味簡単かもしれないんですけども、やっぱり乾燥昆布(かんそうこんぶ)として輸出する以上は、 昆布(こんぶ)が持ってるうまみとかそういったところを、乏しいものにしないっていう工夫というのが絶対条件としてあると。 ま、やっぱり現場で使えるあのリーズナブルな技術をうまく組み立てなければ、産業的には、まあ、意味がないかなというところが、まあ、なかなか難しいとこでしたね。
映像説明: 研究室のような室内の一角。黒い机の上に白い箱型の機械とデスクトップパソコンが置かれている。木下博士(はくし)がパソコン画面を指さしながら話をしている。隣に座る納谷専務がパソコン画面を見ながら話を聞いている。 納谷専務がパソコン画面を指さしながら話をする。
ナレーション: 3年の月日をかけ、ついに、うまみはそのままに、ヨウ素(ようそ)を低減させる技術を確立。現在、国際特許を申請中だ。
映像説明: 白い机の上。透明の袋に「Naya Kombu(ナヤ コンブ)」「HOKKAIDO(ホッカイドウ)」「Dried Sea Vegetable」「KOMBU(コンブ)」「昆布(こんぶ)」などと書かれたラベルが貼られた乾燥昆布(かんそうこんぶ)の商品が置かれている。ナレーション: この夏から、オーストラリアへの輸出を開始した。
映像説明: クリーム色(いろ)の壁の室内。透明の袋に入った乾燥昆布(かんそうこんぶ)の商品とノートパソコンが置かれた机の前で、納谷専務がインタビューに答える。
納谷専務: やはり(オーストラリアは)断トツ、ヨウ素(ようそ)の規制値(きせいち)が厳しいので、そこでまあちゃんと商売ができてるっていうことが、 逆にうちのブランド力を高めるんじゃないかなというふうに考えてます。
映像説明: 漁船の上。白いTシャツの上に赤いライフジャケットを着て、マスクをつけた納谷専務が引き上げた茶色い昆布(こんぶ)を広げて眺めている。 白い壁のキッチン。アンジェロさんがコンロの上の鍋から味噌汁を木製の器によそう。 こげ茶色の布地の上。乾燥椎茸が入った透明の袋に、産地の項目欄に「高知県四万十町(しまんとちょう)」や木種(こだね)の項目欄に「クヌギ、ナラ」などと書かれたラベルが貼り付けられている。 店内。グレーの服の上に青い法被を着たライナーさんが商品が並んだ棚を背景に、商品を手に持ちながら接客をしている。 白い壁の店内。グレーのスーツを着た外国人男性が白いテーブルクロスが掛けられたテーブルで、淡い水色の丸皿に盛りつけられたくん製マスの料理をスプーンで口に運ぶ。 研究室のような室内。さまざまな容器が置かれた棚の前で、納谷専務が3本の遠沈管(えんちんかん)が立てられたラックを持ち上げ、木下博士(はくし)と眺めている。 ちゅう房。マクヘイル料理長が銀色のトレイに置かれた白い粉が付いた乾燥昆布(かんそうこんぶ)をハサミで3枚にカットし、乳白色の液体が入った銀色の寸胴鍋の中に入れている。
ナレーション: 世界中で和食が親しまれるようになっても、まだまだ知られていない日本の出汁。需要が高まるビーガン市場や西洋料理との出会いによって、その可能性は大きく広がっている。技術開発で規制を乗り越え、やがて新たな「世界の出汁」となるかもしれない。
映像説明: 薄い黄緑色(きみどりいろ)を基調としたコンピューターグラフィックスの背景画。緑を基調とした、中が空洞になった地球儀が回転している。
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