ロシア・ウクライナ情勢下におけるロシア進出日系企業アンケート調査結果 (2023年1月) ―侵攻から1年、厳しさ増す日系企業を取り巻く情勢―

2023年02月22日

ジェトロは2023年1月24日~31日、ロシアに所在する日系企業198社に対し、侵攻から約1年におけるロシア事業の現状と今後の見通しに関するアンケート調査を実施しました。調査結果の詳細は以下のとおりです。

調査結果のポイント

  • ロシア進出日系企業のうち、一部もしくは全部の事業停止を行う割合は前回調査(2022年8月)から11.1ポイント増加し、全体の6割に達した。「通常通り」(35.4%)は10.4ポイント減少した。「撤退済みもしくは撤退を決定」は全体の4.0%(前回4.7%)だった。
  • 撤退や事業停止の要因として、本社のロシアビジネス方針の変更が最も多く、次いでレピュテーションリスクや物流の停滞が挙がった。「通常通り」と回答した企業は、事業運営上の困難として物流の停滞のほか、決済の困難や対ロ制裁を挙げた。
  • 在ロ日系企業の景況感は、軍事侵攻をきっかけに、リーマンショック後並みに落ち込んだ2022年5月を底にやや回復したが引き続きマイナス。足元の景況DI(マイナス49)は、製品・材料の輸入停止や、販売・出荷の停止によって収益が減少していることが影響。2カ月後の景況見通しDI(マイナス49)は、情勢の長期化を不安視する声が複数あった。
  • 今後半年から1年後の事業展開見通しでは、判断を保留していた企業が減り、今後の方針を決定したとみられる企業が増えた。前回調査と比べ「不明・該当せず」(14.1%)が7.4ポイント減少した一方、「撤退」(10.1%)が4.5ポイント、「縮小」(37.4%)が1.9ポイント増加した。
  • 日本人駐在員をロシアから退避させている企業は、過去3回の調査と比べ縮小し66.7%となった。他方、駐在員全員がロシアに残留している企業の割合は過去調査の中で最も多い27.3%となった。ロシア拠点に所属する駐在員数が減少した企業の割合は約半数だった。

本調査について

  • ジェトロは2023年1月24日~31日、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業およびサンクトペテルブルク日本商工会加盟企業の198社(注)を対象にアンケート調査を実施。99社より回答を得た(有効回答率50.0%)。
    (注)両組織に加盟する企業がいるため、重複を除いた企業数
  • 設問項目:1.現時点の事業ステータス 2.自社の景況感 3.今後の事業展開見通し 4.駐在員の状況

1. 現時点の事業ステータス

  • 回答企業のうち60.6%が「一部もしくは全面的に事業(操業)を停止」と回答。「通常どおり(今後の対応を検討中を含む)」は35.4%、「撤退済みもしくは撤退を決定」は4.0%だった(図1)。

    図1:現時点の事業ステータス

    図1 現時点の事業ステータスについて。有効回答数は、今回調査が99社、2022年8月25日~31日調査が107社、2022年4月15日~19日調査が111社、2022年3月24日~28日調査が97社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、今回調査で「撤退済み/撤退を決定」が4.0%、「全面的な事業(操業)停止(一時的な停止を含む)」が17.2%、「一部事業(操業)の停止(一時的な停止を含む)」が43.4%、「通常通り」が35.4%、「その他」は回答なしだった。 2022年8月25日~31日調査で「撤退済み/撤退を決定」が4.7%、「全面的な事業(操業)停止(一時的な停止を含む)」が17.8%、「一部事業(操業)の停止(一時的な停止を含む)」が31.8%、「通常通り」が45.8%、「その他」は回答なしだった。 2022年4月15日~19日調査で「撤退済み/撤退を決定」が0.9%、「全面的な事業(操業)停止(一時的な停止を含む)」が9.9%、「一部事業(操業)の停止(一時的な停止を含む)」が45.0%、「通常通り」が44.1%、「その他」は回答なしだった。 2022年3月24日~28日調査で「全面的な事業(操業)停止(一時的な停止を含む)」が6.2%、「一部事業(操業)の停止(一時的な停止を含む)」が37.1%、「通常通り」が55.7%、「その他」が1.0%、「撤退済み/撤退を決定」は回答なしだった。 なお、前回調査(2022年8月)の構成比率は、小数第2位を四捨五入しているため合計が100%にならない。

    ※前回調査(2022年8月)の構成比率は、小数第2位を四捨五入しているため合計が100%にならない。

  • 「撤退済みもしくは撤退を決定」と回答した企業4社のうち、ロシア市場からの撤退方法(複数回答)について、50.0%が「事業売却せず事業の清算のみ」を挙げ、「その他」(50.0%)として「再開時期未定の休眠」、「調整中」といった回答があった(図2)。
  • 撤退に至った外部要因(複数回答)については、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」(100.0%)、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」および「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」(各75.0%)が上位だった(図3)。
  • 撤退に至った内部要因(複数回答)では、「レピュテーションリスクの回避」(75.0%)、「対ロ制裁措置の履行含むコンプライアンスの順守の優先」(50.0%)が挙がった(図4)。

    図2:撤退方法(複数回答)

    図2 撤退方法(複数回答)について。有効回答数は4社。 「事業売却せず事業の清算のみ」が50.0%、「その他」が50.0%。「現地パートナーへの譲渡、売却」、「現地他社、投資家への譲渡、売却」、「州政府/地方自治体への譲渡、売却」、「第三国企業への譲渡、売却」、「現地経営陣への譲渡、売却」への回答はなし。

    図3:撤退の外部要因(複数回答)

    図3 撤退の外部要因(複数回答)について。有効回答数は4社。 それぞれの選択肢に回答した割合は、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が100%、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が75.0%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が75.0%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が50.0%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が50.0%、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が50.0%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が25.0%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が25.0%、「ルーブル為替の不安定化」が25.0%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が25.0%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が25.0%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が25.0%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が25.0%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が25.0%だった。回答がなかった選択肢は、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)、「日本政府による対ロ制裁(その他)」、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」、「ロシア事業の収益性低下」、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」、「特になし」、「その他」だった。

    図4:撤退の内部要因(複数回答)

    図4 撤退の内部要因(複数回答)について。有効回答数は4社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「レピュテーションリスクの回避」が75.0%、「対ロ制裁措置の履行含むコンプライアンス順守の優先」が50.0%、「全事業におけるロシア市場の割合が小ささ」が25.0%、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が25.0%、「特になし」が25.0%だった。回答がなかった選択肢は、「市場参入・拡大時の投資コスト回収完了」、「ビジネスモデル再構築のコストの大きさ」、「その他」だった。
  • 「一部事業の停止」もしくは「全面的な事業停止」と回答した企業60社のうち、事業停止に至った要因について、61.7%が「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」を挙げ、次いで「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」(60.0%)、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」(48.3%)を挙げた(図5)。
  • 事業停止後に行った対応について、33.3%の企業が「特になし」と答え、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」(21.7%)、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」(20.0%)が続いた(図6)。

    図5:事業停止の要因(複数回答)

    図5 事業停止の要因(複数回答)について。有効回答数は60社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が61.7%、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」が60.0%、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が48.3%、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が40.0%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が38.3%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が36.7%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が33.3%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が26.7%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」が23.3%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が20.0%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が20.0%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が18.3%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が18.3%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)」が18.3%、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」が13.3%、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)」が13.3%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」が13.3%、「ロシア事業の収益性低下」が10.0%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」が8.3%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が6.7%、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)」が6.7%、「ルーブル為替の不安定化」が5.0%、「日本政府による対ロ制裁(その他)」が5.0%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」が5.0%、「「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が5.0%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が1.7%、ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」が1.7%だった。回答がなかった選択肢は、「特になし」、「その他」だった。

    図6:事業停止後の対応(複数回答)

    図6 事業停止後の対応(複数回答)について。有効回答数は60社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」が21.7%、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」が20.0%、「ロシア拠点で完結した資金運営」が18.3%、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が13.3%、「決済手段・通貨の多様化」が13.3%、「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」が8.3%、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」が8.3%、「その他」が6.7%、「特になし」が33.3%だった。
  • 「通常どおり(今後の対応を検討中を含む)」と回答した企業35社は、事業運営上の困難として「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」(68.6%)を挙げ、次いで「決済の困難(ロシア国外との決済)」および「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」(各62.9%)を挙げた(図7)。
  • 事業運営上の対応について、45.7%が「決済手段・通貨の多様化」を挙げ、次いで「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」、「取引相手・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」(各28.6%)を挙げた(図8)。

    図7:事業運営上の困難(複数回答)

    図7 事業運営上の困難(複数回答)について。有効回答数は35社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「物流(空路、陸路、海運)の混乱・停滞」が68.6%、「決済の困難(ロシア国内外との決済)」が62.9%、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が62.9%、「商品、原材料、部品、サービス調達の困難・制限」が45.7%、「ルーブル為替の不安定化」が45.7%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が42.9%、「ロシアの政治・経済状況の不確実性の増大」が42.9%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が40.0%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(金融分野の制限)」が37.1%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(金融分野の制限)」が34.3%、「ロシア拠点の勤務体制の維持・変更(駐在員不在、現地従業員の増減など)」が31.4%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(物流・輸送にかかる制限)」が28.6%、「物流コストおよび商品、原材料、部品、サービス調達コストの上昇」が25.7%、「レピュテーションリスク回避を目的とした自社の事業活動の自粛」が25.7%、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス方針の変更」が22.9%、「レピュテーションリスク回避を目的とした他社の事業活動の自粛」が22.9%、「日本政府による対ロ制裁(新規投資禁止)」が22.9%、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(特定個人・法人との取引制限)」が22.9%、「ロシア事業の収益性低下」が22.9%、「ロシア、欧米諸国の取引先との関係変化」が20.0%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(製品・サービスの輸出入制限)」が17.1%、「事業継続によるレピュテーションリスクの顕在化」が11.4%、「日本政府による対ロ制裁(日本への輸入禁止)」が11.4%、「日本政府による対ロ制裁(その他)」が11.4%、「ロシア国内での販売の著しい減少」が8.6%、「ロシアによる制裁への対抗策・報復措置(その他)」が5.7%、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」が2.9%、「その他」が0.0%、「特になし」が2.9%だった。

    図8:事業運営上の対応(複数回答)

    図8 事業運営上の対応(複数回答)について。有効回答数は35社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「決済手段・通貨の多様化」が45.7%、「輸出管理遵守に向けた取扱商品の見直し」が28.6%、「取引相手国・地域の見直し(同盟・友好国/対立国の関係整理)」が28.6%、「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」が22.9%、「ロシア拠点で完結した資金運営」が17.1%、「輸出管理遵守に向けた取引先の見直し」が8.6%、「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」が5.7%、「その他」が8.6%、「特になし」が17.1%だった。

2. 自社の景況感

  • 自社の景況DI(注)(最近の状況)は2008年に起きたリーマンショック後並みに落ち込んだ2022年5月を底にやや回復したがマイナスが続く。前回比8ポイント上昇のマイナス49で、3期連続のマイナス(図9)。在ロ日系企業の多くが、製品・材料の輸入停止や、販売・出荷の停止によって収益が減少している。
    (注)景気動向指数〔ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)〕:景況感DIは「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした企業の比率を引いた数値。
  • 自社の景況見通しDI(2カ月後の状況)は前回比12ポイント増のマイナス49。3期連続のマイナス(図10)。情勢の長期化を不安視する声が複数寄せられた。

    図9:自社の景況DI(最近の状況)

    図9 自社景況DI(最近の状況)の推移。 在ロシア日系企業の2009年4月から2023年1月までの自社景況DIの推移は順に、2009年4月がマイナス69、6月がマイナス60、8月がマイナス56、10月がマイナス42、2010年1月がマイナス25、3月がマイナス20、5月が5、7月が18、9月が27、11月が38、2011年2月が44、6月が33、9月が39、12月が41、2012年2月が51、7月が28、12月が25、2013年2月が21、6月が24、11月が1、2014年2月が7、6月が7,11月がマイナス23、2015年4月がマイナス32、9月がマイナス36、2016年1月がマイナス28、4月がマイナス24、9月がマイナス13、2017年2月が10、6月が1、9月が22、2018年1月が30、4月が27、9月が21、2019年1月が33、4月が27、9月が13、2020年1月が3、5月がマイナス59、10月がマイナス4、2021年1月が5、4月が19、9月が33、2022年1月が29、5月がマイナス63、8月がマイナス57、2023年1月がマイナス49だった。

    図10:自社の景況見通しDI(2カ月後の状況)

    図10 自社の景況見通しDI(2カ月後の状況)の推移。 在ロシア日系企業の2009年4月から2023年1月までの自社景況DIの推移は順に、2009年4月がマイナス61、6月がマイナス54、8月がマイナス39、10月がマイナス29、2010年1月がマイナス10、3月が0、5月が17、7月が27、9月が35、11月が38、2011年2月が46、6月が36、9月が27、12月が33、2012年2月が51、7月が26、12月が23、2013年2月が28、6月が22、11月が9、2014年2月が8、6月が8,11月がマイナス38、2015年4月がマイナス30、9月がマイナス29、2016年1月がマイナス36、4月がマイナス17、9月がマイナス7、2017年2月が15、6月が9、9月が24、2018年1月が30、4月が22、9月が17、2019年1月が25、4月が24、9月が16、2020年1月がマイナス1、5月がマイナス62、10月がマイナス10、2021年1月が10、4月が22、9月が23、2022年1月が14、5月がマイナス67、8月がマイナス61、2023年1月がマイナス49だった。
  • 景況もしくは景況見通しについて「さほど良くない」または「悪い」と回答した企業79社は、景況感に影響した要因(複数回答)として、順に「欧米諸国の対ロ制裁による制限」(65.8%)、「日本政府の対ロ制裁による制限」(63.3%)、「自社の事業活動の自粛」(57.0%)を挙げた(図11)。

    図11:景況感「悪い」、「さほど良くない」の要因(複数回答)

    図11 景況感「悪い」、「さほど良くない」の要因(複数回答)について。有効回答数は79社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「欧米諸国の対ロ制裁による制限」が65.8%、「日本政府の対ロ制裁による制限」が63.3%、「自社の事業活動の自粛」が57.0%、「物流の混乱・停滞」が35.4%、「他社の事業活動の自粛」が29.1%、「ロシアの対抗措置による制限」が26.6%、「ロシア市場における需要縮小」が24.1%、「在庫の不足・枯渇」が22.8%、「為替変動」が20.3%、「販路の縮小」が13.9%、「ロシア市場における購買力低下」が11.4%、「調達コストの増大」が11.4%、「競合他社の台頭」が6.3%、「生産の縮小」が3.8%、「その他」が5.1%だった。
  • 景況もしくは景況見通しについて「良い」と回答した企業8社は、景況感に影響を与えた要因(複数回答)として、「競合他社の撤退によるビジネスチャンス拡大」(37.5%)を挙げたほか、「その他」(50.0%)として、「パンデミックが終息傾向」、「原材料価格の安定」、「ルーブル高がポジティブに作用」と回答した。(図12)。

    図12:景況感「良い」の要因(複数回答)

    図12 景況感「良い」の要因(複数回答)について。有効回答数は8社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「競合他社の撤退によるビジネスチャンス拡大」が37.5%、「対ロ制裁やロシアによる制裁への対抗策の影響範囲外」が25.0%、「ロシア市場における需要拡大」が12.5%、「物流ルートの再構築・再開」が12.5%、「商品、原材料、部品、サービスの調達再開」が12.5%、「その他」が50.0%だった。回答がなかった選択肢は、「ロシア政府による規制緩和」、「本社・在欧統括会社などの対ロシアビジネス続行の意向」、「ウクライナへの軍事侵攻以外に起因する要因」だった。

3. 今後の事業展開見通し

  • 今後半年から1年後の事業展開見通しでは、「維持」と「縮小」が各37.4%で最も多く、「不明・該当せず」(14.1%)、「撤退」(10.1%)、「拡大」(1.0%)が続いた(図13)。前回調査(2022年8月)では、維持=37.4%、縮小=35.5%、不明・該当せず=21.5%、撤退=5.6%、拡大は回答がなかった。
  • 侵攻約1年に寄せたコメントでは、「仮に停戦しても、経済制裁が解かれるには5年、10年かかる可能性もあり、現在の環境は当面好転しない前提で考えざるを得ない」、「長期化によるロシア経済の更なる悪化を憂慮」などビジネス環境に対するネガティブな見方のほか、「自律的ではなく、横を見ながらの自主規制」、「ロシア国内の現状や外資企業の実態が日本に正しく伝わっておらず、したたかな対応を打つ欧米企業と比べ、政府や企業が極端に慎重な事業判断を促している事に強い懸念」、「本社とロシア側の温度差を感じた一年」など、制裁措置や活動自粛の実施とロシア事業の存続・利益追求との間で板挟みにある様子が見られた。

    図13:今後半年から1年後の事業見通し

    図13 今後半年から1年後の事業見通しについて。有効回答数は、今回調査が99社、2022年8月25日~31日調査が107社、2022年4月15日~19日調査が109社、2022年3月24日~28日調査が97社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、今回調査で「拡大」が1.0%、「維持」が37.4%、「縮小」が37.4%、「撤退」が10.1%、「不明・該当せず」が14.1%だった。 2022年8月25日~31日調査では、「拡大」が0%、「維持」が37.4%、「縮小」が35.5%、「撤退」が5.6%、「不明・該当せず」が21.5%だった。 2022年4月15日~19日調査で「拡大」が0.9%、「維持」が30.0%、「縮小」が35.5%、「撤退」が5.5%、「不明・該当せず」が28.2%だった。 2022年3月24日~28日調査で「拡大」が2.1%、「維持」が24.7%、「縮小」が38.1%、「撤退」が6.2%、「不明・該当せず」が28.9%だった。

4. 駐在員の状況

  • 駐在員の一部もしくは全員を退避させている企業は、全体の66.7%と前回(78.4%)から11.7ポイント減少した。他方、駐在員全員がロシアに残留している割合は前回調査から5.8ポイント増加し27.3%となった(図14)。

    図14:駐在員のロシア国外への退避

    図14 駐在員のロシア国外への退避について。有効回答数は、今回調査が99社、2022年8月25日~31日調査が107社、2022年4月15日~19日調査が109社、2022年3月24日~28日調査が97社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、今回調査で「0%(駐在員全員がロシアに残留)」が27.3%、「50%未満」が7.1%、「50%以上」が10.1%、「100%(駐在員全員が退避)」が49.5%、「当初からロシア拠点には駐在員を配置していない」が6.1%だった。 2022年8月25日~31日調査では、「0%(駐在員全員がロシアに残留)」が21.5%、「50%未満」が5.6%、「50%以上」が12.1%、「100%(駐在員全員が退避)」が60.7%だった。 2022年4月15日~19日調査では、「0%(駐在員全員がロシアに残留)」が14.4%、「50%未満」が3.6%、「50%以上」が7.2%、「100%(駐在員全員が退避)」が74.8%だった。 2022年3月24日~28日調査では、「0%(駐在員全員がロシアに残留)」が18.6%、「50%未満」が6.2%、「50%以上」が8.2%、「100%(駐在員全員が退避)」が67.0%だった。 なお、選択肢「当初からロシア拠点には駐在員を配置していない」は今回調査より追加。
  • 駐在員の一部もしくは全員を退避させた企業66社のうち、ロシア拠点への帰還・出張(注)の可能性について、「現時点では不明」(28.8%)が最も多く、次いで「帰還・出張の予定はない」(27.3%)だった。過去に出張したことがあるもしくは予定がある企業は37.9%だった。すでに帰還しているもしくは予定している企業は6.0%だった(図15)。

    (注)「帰還」は期間を定めずロシアに戻り業務に復帰すること、「出張」は一定期間ロシアに滞在して業務を行い、再び退避地に戻ることを指す。

    図15:ロシアへの帰還、出張の予定

    図15 ロシアへの帰還、出張の予定について。有効回答数は、今回調査が66社、2022年8月25日~31日調査が84社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、今回調査で「今後ロシア拠点への帰還を予定」が3.0%、「今後ロシア拠点への出張を予定」が18.2%、「アンケート回答時点ですでにロシア拠点へ帰還している」が3.0%、「アンケート回答時点ですでにロシア拠点へ出張中である(したことがある)」が19.7%、「帰還・出張の予定はない」が27.3%、「現時点では不明」が28.8%だった。 2022年8月25日~31日調査では、「今後ロシア拠点への帰還を予定」が13.1%、「今後ロシア拠点への出張を予定」が22.6%、「アンケート回答時点ですでにロシア拠点へ帰還している」が9.5%、「アンケート回答時点ですでにロシア拠点へ出張中である(したことがある)」が16.7%、「帰還・出張の予定はない」が21.4%、「現時点では不明」が16.7%だった。 なお、「帰還」は期間を定めずロシアに戻り業務に復帰すること、「出張」は一定期間ロシアに滞在して業務を行い、再び退避地に戻ることを指す。
  • 回答時点ですでにロシア拠点へ帰還・出張したもしくは今後帰還・出張を予定している29社のうち、帰還・出張をする人物(複数回答)について、82.8%が「ロシア拠点の代表者」と回答。「『ロシア拠点の代表者』以外の駐在員」は44.8%だった(図16)。
  • 帰還・出張の目的は、「労働許可の維持・更新、査証取得」(75.9%)、「拠点運営維持にかかる行政手続き」(62.1%)が上位を占めた(図17)。

    図16:帰還・出張する人物(複数回答)

    図16 帰還・出張する人物(複数回答)について。有効回答数は29社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「ロシア拠点の代表者」が82.8%、「上記「ロシア拠点の代表者」以外の駐在員」が44.8%だった。回答がなかった選択肢は、「現時点では不明」「その他」だった。

    図17:帰還・出張の目的(複数回答)

    図17 帰還・出張の目的(複数回答)について。有効回答数は、29社。 それぞれの選択肢の回答割合は、「労働許可の維持・更新、査証取得」が75.9%、「拠点運営維持にかかる行政手続き」62.1%、「現地採用社員の管理(採用、削減含む)」が44.8%、「駐在員、拠点運営にかかる税務処理」が31.0%、「在ロシア顧客への対応」が24.1%、「退避・帰任した駐在員の荷物処理・住居解約」が24.1%、「拠点閉鎖・売却に関する社内手続き」が20.7%、「通常業務の実施・再開に向けた現地調査」が17.2%、「事業継続に向けたパートナー企業との調整」が13.8%、「拠点閉鎖・売却に向けた対外的な手続き(税務調査など含む)」が13.8%、「通常業務の実施・再開」が6.9%、「自社ロシア事業の売却先の選定」が3.4%、「その他」は回答がなかった。
  • 侵攻後約1年でロシア拠点に所属する駐在員数が「減少」した企業は全体の50.5%、「不変」と回答した企業は49.5%だった。「増加」したと回答した企業はなかった(図18)。

    図18:ロシア拠点の駐在員数の増減

    図18 ロシア拠点の駐在員数の増減について。有効回答数は、製造業・非製造業の合計で99社、製造業で8社、非製造業で91社だった。 それぞれの選択肢の回答割合は、製造業・非製造業の合計で「増加」が0%、「減少」が50.5%、「不変」が49.5%だった。 製造業では、「増加」が0%、「減少」が62.5%、「不変」が37.5%だった。 非製造業では、「増加」が0%、「減少」が49.5%、「不変」が50.5%だった。

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