ジェトロ 2022年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

2022年12月20日

ジェトロは2022年9月、アフリカ24カ国(回答は21カ国)に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を以下のとおり発表します。

調査結果のポイント

ウクライナ情勢の影響大きく、黒字が5割下回る ―足元苦しくも、拡大路線は変わらず―
  1. 営業利益見通し
    • 8割弱の企業がウクライナ侵攻がビジネスに影響と回答。物流コストや原材料等のコスト上昇や為替変動の影響を受け、黒字が5割を下回った。2023年は改善を見込む。
  2. 今後の事業展開
    • 今後の事業展開は拡大が前年から5.9ポイント増の54.5%。ナイジェリア、ガーナ、エチオピアでは6割以上が拡大を見込む。人口増加を背景に約7割の企業が今後5年間でアフリカの重要性が増すと回答。
  3. アフリカの投資環境
    • 投資環境ではコートジボワール、エジプト、ケニアなどで政治・社会情勢が改善と評価。一方で規制・法令の整備、運用はエジプト、ナイジェリアなどを中心に依然として大きな課題。不安定な為替も54.2%の企業が課題と認識。
  4. 有望ビジネス分野・注目国
    • 有望ビジネス分野は消費市場が変わらずトップ。2番目に資源・エネルギーが浮上、特に太陽光に高い期待。注目国はケニア、南ア、ナイジェリアの上位3カ国は変わらず。ガーナ、タンザニアも注目度が上昇。

本調査について

  • ジェトロは2022年9月8日~9月30日、アフリカ24カ国に拠点を有する日系企業302社を対象にオンラインによるアンケート調査を実施。うち21カ国、231社より有効回答(有効回答率76.5%)。
    (内訳:モロッコ22社、エジプト29社、アルジェリア6社、チュニジア3社、ナイジェリア19社、ガーナ12社、コートジボワール7社、セネガル7社、ブルキナファソ1社、ケニア38社、タンザニア6社、エチオピア8社、ウガンダ3社、ルワンダ3社、南アフリカ共和国46社、モザンビーク9社、ザンビア5社、アンゴラ1社、マダガスカル3社、モーリシャス2社、ジンバブエ1社)
  • 設問項目:
    1.営業利益見通し 2.今後の事業展開 3.アフリカの投資環境  4.有望ビジネス分野・注目国

調査の結果概要

1.営業利益見通し

  • 2022年の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業の割合は、前年比0.3ポイント減となる48.9%となり、5割を下回った。一方、赤字は1.7ポイント増の23.6%で、いずれも新型コロナ前と同水準となった。【資料6頁】
  • 国別でみると、南ア、ケニア、エジプト、モロッコ、エチオピアで半数以上が「黒字」と回答した。ガーナでは、黒字が前年から13.3ポイント増加したものの、それ以上に赤字が増え、赤字が黒字を上回った。【資料6頁】

営業利益見込み推移

2022年の営業利益見込みを「黒字」と回答した企業の割合は、前年比0.3ポイント減となる48.9%、赤字は1.7ポイント増の23.6%で、いずれも新型コロナ前と同水準となった。

2022年営業利益見込み推移

国別でみると、 南ア、ケニア、エジプト、モロッコ、エチオピアで半数以上が「黒字」と回答した。ガーナでは、黒字が前年から13.3ポイント増加したものの、それ以上に赤字が増え、赤字が黒字を上回った。
  • 過去3年(2020-22年)の黒字回答の推移を国別でみると、(1)南ア、エジプト、コートジボワールは新型コロナ禍の2020年の水準に迫る落ち込み、(2)ケニア、モロッコ、ナイジェリア、ガーナは新型コロナ禍の2020年から右肩上がり。(3)モザンビーク、エチオピアは2021年に落ち込むも、2022年は回復基調。各国の回復状況に差が出ている。【資料7頁】

主要国における黒字企業の割合の推移

過去3年(2020-22年)の黒字回答の推移を国別でみると、(1)南ア、エジプト、コートジボワールは新型コロナ禍の2020年の水準に迫る落ち込み、(2)ケニア、モロッコ、ナイジェリア、ガーナは新型コロナ禍の2020年から右肩上がり。(3)モザンビーク、エチオピアは2021年に落ち込むも、2022年は回復基調。各国の回復状況に差が出ている。
  • 前年と比較した2022年の営業利益見込みは、約4割が「改善」と回答した一方、悪化を見込む企業の割合が微増となった(「悪化」19.4%、前年比2.9ポイント増)。その理由として、「物流コストの上昇」を挙げた企業が約半数と、最も多かった。また、8割弱の企業が、ウクライナ侵攻がビジネスに影響したと回答した。【資料8、11、12頁】
  • 2023年は、約5割の企業が改善を見込んでいる(前年比9.6ポイント増)。「悪化」は13.2ポイント減り、6.2%となった。改善の理由には、「輸出量の増加による売り上げ増加」や、「新型コロナに起因する行動制限緩和の影響」などが挙げられた。【資料8、10頁】

2.今後の事業展開

  • 今後の事業展開は、「拡大」と答えた企業が前年から5.9ポイント増の54.5%だった。【資料15頁】
  • 国別でみると、ナイジェリア、ガーナ、エチオピアでは6割以上が「拡大」を見込んでいる。特にナイジェリア(68.4%、36.8ポイント増)とガーナ(66.7%、26.7ポイント増)は、大幅に「拡大」が増えた。【資料15頁】
  • 事業拡大の理由で、最も多かったのは「成長性、潜在力の高さ」で約5割。一方、事業を縮小・撤退する理由は「コストの増加」が最多で約3割を占めた。【資料16、17頁】
  • 海外戦略におけるアフリカの位置づけについて、約半数が5年前と比較して「重要性が増した」と回答し、「成長市場」や「資源開発」、「建設需要」などを理由に挙げた。一方、「重要性が低下した」と回答した理由に、「電力供給の悪化に伴う伸び悩み」といった声が聞かれた。【資料26頁】
  • 今後5年間で重要性が増すと回答した企業は約7割で、9.1ポイント増加した。人口増に加え中間層の増加に伴う購買力の向上や、インフラ需要の増大などが理由として挙げられた。【資料26頁】

今後1~2年の事業展開の方向性

今後の事業展開は、「拡大」と答えた企業が前年から5.9ポイント増の54.5%だった。


 国別でみると、ナイジェリア、ガーナ、エチオピアでは6割以上が「拡大」を見込んでいる。特にナイジェリア(68.4%、36.8ポイント増)とガーナ(66.7%、26.7ポイント増)は、大幅に「拡大」が増えた。

3.アフリカの投資環境

  • アフリカに拠点を構える理由として最も多かったのは「市場の将来性」で8割を超えた。経済成長や人口増加に伴う中間層の増大に期待する企業が多い。【資料28頁】
  • 投資環境面での魅力としては、7割弱の企業が「市場規模/成長性」と回答し、ナイジェリア、エジプト、ガーナ、ケニア、モロッコで平均を上回った。「周辺国の市場規模/成長性」を魅力と答える企業も多く、モロッコ、ガーナ、ケニア、南ア、エジプトなどでその割合が高かった。【資料29頁】
  • 投資環境面で改善した点は、「政治・社会情勢」が約2割で最も高かった。特にケニア、エジプト、モザンビーク、コートジボワールで平均を上回った。【資料30頁】
  • 一方、投資環境面での課題は、約7割の企業が「規制・法令の整備、運用」をアフリカ投資のリスクと回答し、エジプト、ナイジェリア、モザンビーク、エチオピアで平均を上回った。「財政・金融・為替面」も、54.2%の企業が課題と回答している。「不安定な政治・社会情勢」(52.4%)では、南ア、ナイジェリア、エチオピアで8割を超えた。【資料33頁】
  • FTA・関税同盟の利用状況について、アフリカ域内外のFTA・関税同盟を利用している企業の割合は2007年から約3倍に増加。AfCFTAについては、6割以上の企業が利用を検討している。ビジネス機会の拡大のほか、関税の撤廃・削減や税関手続きの簡素化を期待する声が多い。【資料39、40頁】

4.有望ビジネス分野・注目国

  • 今後の有望ビジネス分野は、人口増を背景に「消費市場」が44.6%でトップ。その中でも「食品」が6割弱、「輸送機器」が半数以上を占めている。続いて「資源・エネルギー」が「インフラ」を抜き2位に浮上。特に太陽光のポテンシャルが注目されている。【資料42頁】

有望視するビジネス分野(複数回答)

今後の有望ビジネス分野は、人口増を背景に「消費市場」が44.6%でトップ。その中でも「食品」が6割弱、「輸送機器」が半数以上を占めている。続いて「資源・エネルギー」が「インフラ」を抜き2位に浮上。特に太陽光のポテンシャルが注目されている。
  • 2022年における今後の注目国では、上位3カ国はケニア、南ア、ナイジェリアで今年も変動しなかった。トップのケニアはスタートアップの勃興やインフラ需要の拡大が注目されている。ガーナ(4位)、タンザニア(5位)も前年から割合が上昇した。ガーナは、政治の安定や経済規模の拡大、言語面での障壁の低さなどもあり、西アフリカの拠点として注目されている。【資料47、48頁】

ジェトロ海外調査部(担当:佐藤、井澤)
Tel:03-3582-5180