「ジェトロ 2021年度 海外進出日系企業実態調査―全世界編―」の発表 ―ビジネス正常化へ道半ば。販売価格の引き上げや調達先の見直しが進む―

2021年11月30日

「2021年度 海外進出日系企業実態調査」(調査結果)PDFファイル(1.9MB)

ジェトロは2021年8~9月にかけて、海外82カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店、駐在員事務所)1万8,932社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。7,575社より有効回答を得ました(有効回答率40%)。

本調査は、北米、中南米、欧州、アジア大洋州などの主要地域別※に、原則年1回、ビジネスの最前線にいる進出日系企業の活動実態を把握するために実施しているもの。昨年度に続き、全地域で調査時期を統一し、全地域で共通化しました。

これらの海外進出日系企業活動の実態を、全世界横断的に比較し、レポートにまとめました。主要地域別の結果に先んじて、世界共通の設問項目(1.営業利益見通し、2.今後の事業展開、3.脱炭素化の取組み、4.サプライチェーンにおける人権尊重に関する方針、5.デジタル関連技術の活用)について結果を報告します。

※ 各地域の詳細な調査結果については、12月初旬以降、随時公表予定です。

本調査の結果ポイント

  • 2021年の日系企業の業績は全世界的に上向くも、回復の勢いは力強さを欠く。黒字企業の割合は6割を超えるも、過去10年間で2番目に低い。リーマンショック直後の2010年との比較でも回復のペースは鈍い。景気回復・需要増に沸く一部の業界と、経済活動制限が直撃する旅行などのサービス業との間の業種間格差が一段と拡大。
  • 今後1~2年で、事業の「拡大」を見込む日系企業の割合は前年から増加するも、長引く新型コロナの影響による先行きの不透明感で、新型コロナ発生前の2019年の水準には戻らず。
  • 半導体不足や鉄鋼など原材料価格の上昇、コンテナ不足による海外輸送コストの増加など、経済活動再開に伴うサプライチェーンの混乱が、広範な業種に影響。生産コストの増加を価格に転嫁せざるを得ない状況の下、「販売価格の見直し」に取り組む企業の割合が前年から約8割増加。また、サプライチェーンの強靭化を目的に、調達先見直しや複数調達化に取り組む企業の割合も、それぞれ前年比で6割、4割の増加。
  • 脱炭素化(温室効果ガスの排出削減)については、すでに取り組んでいる企業の割合が3割を超えるも、大企業と中小企業との取り組み状況に大きな格差あり。進出先国の法令や炭素税などの税制が、企業の取り組みを促す強制力となっている実態が明らかに。
  • 世界全体で約5割の企業がサプライチェーンにおける人権尊重の方針を有し、そのうち半数が調達先へも準拠を求めている。人権デューディリジェンスの義務化(法制化)で先行する欧州との取引などを通じて認識が浸透する一方、東南アジアでの認識、取り組みの遅れが目立つ。
  • 日系企業の間では、マーケティング機能の強化や販売先拡大を目的に、ECやクラウド技術の活用が進展。他方、過半数の企業がデジタル技術を扱う人材不足の課題に直面。

(注) Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合(%)から「悪化」する割合を差し引いた数値

ジェトロ海外調査部(担当:森、伊藤)
Tel:03-3582-5177