お知らせ・記者発表
「ジェトロ 2020年度 海外進出日系企業実態調査 ―全世界編―」 ―新型コロナで過去最悪の景況感。その中で新たな経営・販売戦略を構築する日本企業―
2020年12月04日
本調査の結果概要:
- 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界市場の消失は、海外進出日系企業の業績に、過去に類を見ない規模のダメージを与えた。約9,000社へのアンケート結果に基づく日系企業の景況感は、アジア通貨危機やリーマンショック、東日本大震災などの危機前後を下回る過去最低の水準に沈んだことが明らかに。
- その中で、8割を超える日系企業は、2021年中のビジネス正常化を見込み、新たな事業戦略・ビジネスモデルの構築を急ぐ。積極的なデジタル活用に加え、リモート型オペレーションや現場の自動化による「非接触型」へのシフト、調達・供給ルートの「多元化・多角化」によるリスク分散などに意欲的に取り組む姿勢が浮き彫りとなった。
本調査について:
- ジェトロは2020年9月、海外86カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店、駐在員事務所)1万9,087社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。9,182社より有効回答を得ました(有効回答率48.1%)。
- 本調査は、北米、中南米、欧州、アジア大洋州などの主要地域別※に、原則年1回、ビジネスの最前線にいる進出日系企業の活動実態を把握するために実施しているもの。本年度については、全地域で調査時期を統一したことに加え、営業利益見通しや、今後の事業展開の方向性、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等の主要テーマの設問を全地域で共通化しました。
- これに伴い、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって未曽有の危機下にある海外進出日系企業活動の実態を、全世界横断的に比較することが可能になりました。
※各地域の状況については、全体を3地域程度に大括りし、12月中旬を目途に公表予定です。
調査結果の主なポイント
- 営業利益見通し
- 世界の日系企業9,000社のうち、2020年に黒字を見込む企業の割合は48%。前年の65%から17ポイント低下し、リーマンショック直後の2009年をも下回った。また赤字の割合も過去最高を更新(配布資料のスライド1-1)。
- 新型コロナを受けた進出先市場の消失は、全世界で、日本企業の企業活動に過去に類を見ないダメージを与えた(1-1)。
- 営業利益が前年比で悪化する企業は約6割。特に輸送機器・同部品や、ホテル/旅行、飲食、人材紹介等の業種で悪化が深刻。景況感を示すDI値(注)は、全ての対象地域で過去最低値を更新(1-3)。
- 2021年の見通しは、反動増により、前年比「改善」の割合が「悪化」の割合を大きく上回る(1-6)。
- 今後の事業展開
- 日系企業9,000社の4割は、今後1~2年で事業を「拡大」する計画。しかし、コロナ禍の影響により、同割合は前年比10ポイント以上低下。ほとんどの地域で、「拡大」意欲が過去最低に(2-1)。
- 一方、事業の縮小や第3国への撤退の割合は合わせて1割未満で、コロナ禍でも大幅な増加は見られず(2-1)。
- 感染拡大の影響とビジネス見直しの状況
- ビジネス正常化の時期は、2021年の前半、後半の見込みがいずれも3割強。北東アジアの回復が先行(3-1)。
- 新型コロナを受けて、進出企業は事業戦略・ビジネスモデルをデジタル化にシフト。在宅勤務やテレワークの活用拡大に加え、バーチャル展示会の活用や、AI利用の推進、などに意欲的に取り組む姿勢が顕著(3-2)。
- また、リスク分散と耐性強化を織り込んだ経営・ビジネスモデルを志向。そのキーワードは、「非対面・非接触」へのシフト、販売や調達の「多元化・多角化」、およびバリューチェーン全体の「可視化」の推進(3-5)。
- コロナ危機を契機に、日本人駐在員の削減、経営の現地化など、合理化・効率化を模索する動きも進展(3-5)。
(注) Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合(%)から「悪化」する割合を差し引いた数値
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ジェトロ海外調査部 (担当:伊藤、新田、甲斐野)
Tel:03-3582-5177