山元醸造株式会社

弊社が海外向けの事業を始めたのは今から35年ほど前、シンガポール向けの輸出でした。当時はインフラや保管状態が悪く、様々なトラブルがありましたが、工夫を積み重ねて少しずつ改善しながら事業を進めていました。

本格的に輸出に力を入れ始めたのは、10年ほど前です。取引先の商社にISOの取得について相談したところ、国際的に通用するISO22000の取得を勧められました。醤油・味噌でISO22000を取得するのは極めてハードルが高く、食品安全マネジメントチームを設立して必死に勉強しました。その甲斐あって、北陸で初めて醤油・味噌でISO22000を取得することができ、その結果として「海外にも紹介しやすい」と言ってもらえるようになりました。

また、弊社が240年以上の歴史を持つ老舗であることも海外の方に魅力に映るようです。木樽を見るためにわざわざ欧州から訪日するバイヤーもいます。弊社はオーナー企業であるからこそ、一貫した方針を持ち、創業時からの伝統を守り続けています。 弊社は、この「伝統」と「革新」、加えてローカルの魅力がうまく融合して、海外に紹介できる商品として選んでもらえているのだと思います。

ジェトロの専門家と出会えたことは弊社にとって大きな収穫でした。初回の面談で、目が合った瞬間から通じ合うものがありました。専門家のアドバイスは時に厳しいこともありますが、現地での交渉の際など大変参考になっています。弊社の海外営業担当にとっては、まさに「第二の上司」のような存在です。特に東南アジアでの商談の際には、現地に駐在経験のある専門家に同行いただいたおかげで、日本とは異なる商習慣を理解することができました。専門家は商談相手が遠回しに断ろうとしていることに気づいていても、弊社は気づいていないといったこともありました。弊社だけで海外に行っていたら気づけなかったことに気づかせてくれるのは助かります。

また、海外に出張した際は現地のジェトロ事務所に訪問し、情報提供を受けています。その他にも、ジェトロや地銀が開催する海外バイヤーとの商談会ではその効果を大変実感しています。

海外展開の方法についてよく聞かれますが、私は「地域の強みを打ち出し、海外に伝えていくこと」が大切だと考えています。弊社のコンセプトは「Made in Toyama」です。海外で商談する際は、商品の前にまず富山の宣伝をします。立山連峰や雪に代表される富山の地形・気候・土壌によって、美味しい米と地下水が生まれます。北陸の冬は、厳しい寒さで雑菌が少なく、降り積もる雪で湿度が高いため、寒仕込みには最適な条件が揃っています。この富山ならではの強みを米国で紹介した際には、驚くべきことにスタンディングオベーションを受けました。このような経験から、ただ商品を海外に売り込むのではなく、地域ならではの強みを発信することが重要だと思います。

加えて、相手の嗜好にあった商品を作ることも心掛けています。味噌は日本国内でも地域ごとに嗜好が違うのだから、海外ではなおさらですよね。マーケットに合わせた商品作りが、海外でも受け入れられているのではないかと思います。