エネルギー集約型の企業へ補助、低炭素技術の導入促進へ
(英国)
ロンドン発
2023年05月16日
英国政府は5月9日、エネルギー集約型の企業向け補助金の提供を発表した。今回の補助の対象となる企業は食品・飲料製造や化学プラントなどを中心とした26社で、総額約2,430万ポンド(約41億670万円、1ポンド=約169円)。補助を受けた企業は生産工程に低炭素技術を導入する。
対象企業のうち、三菱ケミカルは310万ポンドの資金提供を受ける。同社は生産過程で生じる排ガスを燃焼して、エネルギーを生成する最新技術を導入する。また、トヨタのダービー工場には約28万ポンドが割り当てられる。同社は空気の代わりに静電気を利用するエアレス塗装機を導入し、電力消費の削減を図る。
英国政府はエネルギー集約型産業での低炭素技術導入による炭素排出削減支援のため、産業エネルギー転換ファンド(IETF)を設けている。当初は2027年までに約3億1,500万ポンドの拠出を予定していたが、3月に1億8,500万ポンドの追加拠出を発表。今回発表の支援は当初分からの割り当てとなり、追加分は2024年初頭に募集が開始される予定。
エネルギー料金割引のさらなる対策も提示
企業向けのエネルギー料金支援策として、4月から「エネルギー料金割引スキーム」が提供されている(2023年1月11日記事参照)。同スキームは2024年3月末までの措置で、エネルギーの卸売価格が政府の設定した閾値を超えた場合に、その超過分の一定金額を割り引く。エネルギー集約型・貿易型産業については、国際競争のため顧客への価格転嫁が困難として、標準よりも高い割引水準を設けている。
2023年2月には、英国の産業のさらなる国際競争力強化を目的として、エネルギー集約型産業向けの電力コスト軽減策「British Industry Supercharger」が新たに発表された(英国政府プレスリリース)。電気料金の再生可能エネルギー関連賦課金(注)、容量市場コストを免除し、さらにネットワーク利用額相当分を補助するスキーム。意見公募などの諸手続きを経て、既述のエネルギー料金割引スキームに代わり、2024年4月から適用する予定となっている。
(注)再生可能エネルギーを推進するための差額決済契約(Contracts for Difference:CfD)制度、再生可能エネルギー購入義務(Renewables Obligation:RO)制度、固定価格買い取り(Feed-in Tariffs:FIT)制度の費用として、電力会社から消費者に転嫁される料金。
(菅野真)
(英国)
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