サンチェス首相が中国を公式訪問、ウクライナ情勢や通商関係にも言及
(スペイン、中国、EU)
マドリード発
2023年04月06日
スペインのペドロ・サンチェス首相は3月30~31日に中国を公式訪問し、最高指導部の習近平国家主席や李強首相らと個別に会談した(3月31日付首相府プレスリリース)。
今回の訪問は両国の外交関係樹立50周年の節目として、中国政府からの招待を受けたもので、第一義的には新型コロナウイルス感染拡大で停滞気味だった両国関係の再開を目指すものだった。経済・通商協力の強化の一環として、電気自動車(EV)の製造や、医薬、再生可能エネルギー分野での連携再開について協議されたほか、スペイン産の柿やアーモンドの対中輸出の実質的合意もなされた。観光分野では、3月中旬にスペインへの団体旅行が解禁されたことを受け、中国人観光客への観光ビザ発給迅速化への取り組みを再確認した。
スペインが2023年下半期のEU理事会(閣僚理事会)の議長国を務めることを視野に入れ、各会談では2国間関係だけでなく、ウクライナ情勢やEU・中国間の経済・通商関係についても話し合われた。サンチェス首相は習国家主席に対し、スペインはウクライナ独自の和平案を支持することを明確にし、同国のボロディミル・ゼレンスキー大統領との対話を促した。また、市場アクセスの相互主義化やルールの尊重に基づく、釣り合いの取れた協力関係の必要性を訴えた。
インフラやエネルギー分野での連携でウィンウィンと強調
サンチェス首相は会談に先立つ3月30日、中国の海南省で開催されたボアオ・アジアフォーラムの年次総会で基調講演を行った。講演では、「誰も経済の分断や戦争を望んでいない」として、「欧州とアジアは国際的な課題に対処し、世界の経済発展を促進するために力を合わせるべき」と述べた。
また、中国とEUは、輸送、エネルギー、医療インフラなどのビジネス分野で世界のために協力することが可能と述べた。中国系の建設大手がスペインの企業に投資することにより、中南米で両国企業の共同プロジェクト開発の機会も生まれているとして、中国とEUひいてはスペインは、経済やその他の分野でウィンウィン(win-win)のパートナーであり続けなければいけない、と強調した。一方で、互恵的な協力関係をさらに深化させていくことが求められるが、それは各国の主権尊重、ならびに国内外企業間の対等な立場での競争といったルールの尊重に基づくことが前提だ、と釘を刺した。
今回のサンチェス首相訪問を皮切りに、4月6日には欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とフランスのエマニュエル・マクロン大統領が訪中の予定。また、報道によると、日程は未定だがEUのジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委副委員長兼任)ら、欧州の要人が相次いで中国を訪問する予定だ。
(伊藤裕規子)
(スペイン、中国、EU)
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