米半導体大手ウルフスピード、ドイツに工場新設

(ドイツ、米国)

ミュンヘン発

2023年02月07日

米半導体大手ウルフスピードは2月1日、ドイツ西部ザールラント州に200ミリメートルの炭化ケイ素(SiC)半導体ウエハー工場を新設すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

建設地はフランス国境に近いザールラント州エンスドルフ。広さ14ヘクタールの石炭火力発電所の跡地に建設する。同社にとって初の欧州工場となる。工場は2023年上期に着工予定だが、ドイツ連邦政府などからの同工場の建設プロジェクトへの助成を欧州委員会が承認することを前提としている。これは、EUでは原則として国家補助は禁止するが、欧州経済振興にかなうなどの条件を満たす場合、例外的に認める「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に基づく(注)。

ウルフスピードはザールラント州に工場を新設する理由として、(1)地理的に欧州の中心に位置すること、(2)顧客や協業先に近いことを挙げた。2月1日に建設予定地で行われた式典には、オラフ・ショルツ首相、ロベルト・ハーベック経済・気候保護相、アンケ・レーリンガー・ザールラント州首相らが出席した。

ロイター(2月1日付)などによると、生産開始は2027年の見込み。新たに雇用する従業員数は600~1,000人を予定する。

今回の工場新設に際して、ドイツの自動車部品大手ZFフリードリヒスハーフェンがウルフスピードと戦略的提携を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ZFはウルフスピードの新工場に数億ユーロ規模で投資し、ウルフスピードの株式を取得する。また、両社は電気自動車(EV)や再生可能エネルギー向けのSiC半導体の研究開発を共同で行う共同研究施設も設立する。両社は2019年から、SiCインバータを活用した高効率電気パワートレインの開発で協業しており、今回の戦略的提携は両社の協力をさらに深めるものとなる。

需要が急増するSiC半導体

SiC半導体は、EV、エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー向けなどで、需要が急速に拡大している。ウルフスピードは1月4日、メルセデス・ベンツにEV向けのSiCデバイスを供給すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ドイツの半導体大手インフィニオン・テクノロジーズは2022年11月、自動車大手ステランティスと、複数年で10億ユーロを超えるSiC半導体を供給する覚書を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。自動車部品大手ボッシュはドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州ロイトリンゲンにある自社半導体工場で、2021年12月からSiC半導体を大量生産している。2022年7月のボッシュの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、SiC半導体市場は年3割拡大しているという。

(注)EUの半導体政策の概要は、ジェトロ調査レポート「EUの半導体政策と半導体法案の概要PDFファイル(558KB)」(2022年8月)参照。

(高塚一)

(ドイツ、米国)

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