英政府、北アイルランド問題解決に向けEUと新枠組みに合意

(英国、EU)

ロンドン発

2023年02月28日

英国政府は2月27日、EUからの離脱協定の一部である北アイルランド議定書(以下、議定書)にかかる問題点の解決に向け、新たな枠組み「ウィンザー・フレームワーク外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表した。同枠組みは、英国のリシ・スナク首相と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の間で合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたもの。

同枠組みは、「物品の移動」「食品」「小包」「VAT・物品税」「医薬品」「植物・種子・機械・樹木」「補助金管理」「ペット」「動物用医薬品」などの項目からなる。

枠組みの主な内容は以下のとおり。

  • グレートブリテンから北アイルランド向けに物品を移送する事業者に対する書類手続き、検査などを不要とし、通常の商業情報の提供のみを求める(グリーンレーン)。物品がEU向けの場合は、完全な通関検査および管理の対象となる(レッドレーン)。
  • 小売事業者に対しては、物品がEU向けでないことを示すため、物品に「not for EU」というマークの表示を義務付ける。義務は段階的に導入する。
  • 議定書では北アイルランドへの移送が認められていなかった冷蔵肉の移送を認める。
  • 北アイルランド向けの医薬品については英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が認証を行う。
  • EUのルールを適用するとしていた北アイルランドにおけるVAT(付加価値税)、物品税について、酒税改革など英国側の重要な変更を適用可能にする。政府補助金については、北アイルランド・EU間の物品や電力の取引に影響を与えうる企業に提供される援助がある場合に(特定の企業・製品へ国家援助を原則禁止する)EUの国家援助規制PDFファイル(319KB)を適用するとしていたが、適用条件を厳格化し、真に実質的な影響がある場合のみへと限定する。
  • 北アイルランドに適用されるEUの物品規制が変更・置き換えられる際に、北アイルランド議会が反対した場合、英国政府は当該規制と関連するEU司法裁判所の解釈の適用を拒否することができる(注1)。ただし、同制度の発動には北アイルランド議会の2つ以上の政党の議員計30人の支持が必要となるほか、当該規制が住民の日々の生活に重大な影響を及ぼす場合に限定される。

今後、英EU合同委員会で承認を行った後、双方で法制化に向けた手続きを行う。運用については段階的に行うとしており、物品や食品、ペット、植物の移送は2023年中、その他の取り決めは2024年中に導入するとしている(注2)。

なお、今回の合意に伴い、議会に提出済みの北アイルランド議定書法案(2022年6月14日記事参照)についても審議を進めないとした。

(注1)北アイルランド議会が所在するストーモントにちなんで、「スト―モント・ブレーキ」と呼ばれる。

(注2)業界別の解説は英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(山田恭之)

(英国、EU)

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