カナダ進出企業、現地従業員数は新型コロナ禍前から「減少」が「増加」上回る、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(北米編)
(カナダ、日本)
米州課
2023年01月05日
ジェトロが2022年9月に実施したアンケート調査(注1)「2022年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」では、カナダ進出日系企業の経営上の課題として「従業員の賃金上昇」や「従業員(一般社員)の確保」が挙げられた(2022年12月28日記事参照)。雇用確保の難しさは、新型コロナ禍前からの現地従業員数の変化にも表れているほか、雇用確保のために勤務体制を柔軟にする企業もみられた。
新型コロナ禍前からの現地従業員数の変化について、「横ばい」と回答した割合が57.8%と最多だったものの、「減少」は23.7%と、「増加」(18.5%)を上回る結果となった。「減少」と回答した割合を業種別にみると、特に旅行・娯楽業(62.5%)や自動車等(33.3%)で高かった(添付資料1参照)。「減少」の要因には、待遇のより良い企業への転職やリモートワークの活用を通じた働き方効率化などが挙がった。「増加」の要因は需要や生産量の増加、現地化の促進などだった。
今後1~2年間での現地従業員数の変化については、「増加」を予定すると回答した企業が36.3%となり、「減少」(4.4%)を上回った。業種別では、特に運輸業や金融保険業で6割強(ともに62.5%)が「増加」と回答した(添付資料2参照)。一方で、過去1年間で実際に従業員を増加したと回答した割合と、今後の増加を予定する企業の割合を比較すると、2018年以降は前者が後者を大きく下回っており、労働需給の逼迫や新型コロナの影響などにより、予定どおりに雇用を拡大することができていない状況が浮かび上がる。
リモートワークが可能な職種の従業員の勤務体制については、2021年9月時点で「原則出社」は22.6%だったが、2022年9月時点(以下、2022年時点)では30.5%に上昇した(添付資料3参照)。2022年時点で「原則出社」と回答した割合を産業別にみると、製造業では51.0%だったのに対し、非製造業では16.9%にとどまった。2023年1月以降、「原則出社」を予定している企業は31.2%(製造業46.0%、非製造業21.3%)で、リモートワーク制度を活用予定の企業は68.8%(製造業54.0%、非製造業78.7%)だった。
新型コロナ禍をきっかけとした柔軟な勤務体制の広がりにより、リモートワークを好むカナダ人の割合は増えている。カナダで職業能力開発を行うフューチャー・スキルズ・センターが2022年9月に発表した調査(注2)によると、過去3カ月で少なくとも数日間は在宅で勤務した人のうち78%が職場よりも在宅での勤務を好むと回答し、その割合は2020年12月時点(64%)から14ポイント上昇した。労働需給が逼迫する中、雇用機会を喪失しないためにリモートワーク制度を活用する企業は今後も一定数みられると考えられる。
(注1)調査実施期間は9月8~30日(日本時間)。調査対象は在カナダ日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資や間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業と日本企業の支店の計184社。有効回答数は138社(有効回答率75.0%)。調査は原則として年1回実施しており、カナダでは1989年以降これが33回目。
(注2)同調査は2022年3月1日から4月18日にかけて実施され、18歳以上のカナダ人6,604人が回答した。
(滝本慎一郎)
(カナダ、日本)
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