12月の米小売売上高は前月比1.1%減、1年ぶりの減少幅
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月19日
米国商務省の速報(1月18日付)によると、12月の小売売上高(季節調整値)は前月比1.1%減の6,771億ドルで、2カ月連続の減少となった(添付資料表参照)。2021年12月(1.2%減)以来の減少幅となり、ブルームバーグがまとめた市場予想の0.9%減より大きかった。なお、11月の売上高は、前月比0.6%減(速報値)から1.0%減に下方修正された(2022年12月16日記事参照)。
ガソリンスタンド、自動車・同部品、無店舗小売りなどが押し下げ要因
売上高の減少は13業種中10業種と広範囲にわたった。業種別にみると、ガソリンスタンドが前月比4.6%減の596億ドル、寄与度マイナス0.42ポイントと、全体を最も押し下げた。次いで、自動車・同部品が1.2%減の1,244億ドル(寄与度マイナス0.23ポイント)、無店舗小売りが1.1%減の1,094億ドル(同マイナス0.19ポイント)で、減少に寄与した。一方、建材・園芸用品は前月比0.3%増の423億ドル(寄与度プラス0.02ポイント)と増加した。
今回の発表を受け、米国のリスク分析会社リスク・マネジメント・ソリューションズ(RMS)でチーフエコノミストを務めるジョセフ・ブリュスエラス氏は「インフレ率の上昇によるラグの影響は、米国の家計に重くのしかかっている。米国の一般の消費者がインフレ調整後の賃金の減少にいまだに動揺していることは明らかだ」と指摘した上、「2023年は緩やかな景気後退の方向になっている」との見通しを付け加えた。
米国のホリデーシーズンは、11~12月にかけて消費活動が活発になることが期待されるが、2022年は一部の小売業者が過剰在庫を解消するために大幅な値引きを実施し、これが10月にギフトショッピングを引き込んだとアナリストは述べている。一部の小売業者は、ホリデーショッピング期間の販売が予想よりも低調だったと述べており、百貨店大手のメイシーズなどは売り上げ低迷を警告している。ウォルマートやターゲットなどは2月に小売り各社が12月の売上高を含む四半期決算を発表する予定で、各社の業績発表に注目が集まる(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版1月18日)。
一方、民間調査会社コンファレンスボードが12月21日に発表した12月の消費者信頼感指数は108.3と、11月(101.4)より6.9ポイント上昇し、4月以来(108.6)8カ月ぶりの高水準となった。内訳をみると、現況指数は147.2(11月:138.3)で8.9ポイント上昇した。6カ月先の景況見通しを示す期待指数は82.4(11月:76.7)で5.7ポイント上昇した。ただ、期待指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まっていることを示しており、先行きに対する消費者の懸念は依然として高止まりしている。
コンファレンスボードの経済指標シニアディレクターのリン・フランコ氏は、消費者信頼感が改善した背景について「インフレ期待は12月に後退し、2021年9月以来の低水準となったが、最近のガソリン価格の下落が主因となった」としており、景気や雇用市場の堅調さに対する消費者の好意的な見方により、現況指数と期待指数がともに上昇したと述べた。先行きについては「(消費者の)旅行への意欲は改善したものの、住宅や大型家電の購入計画はさらに冷え込んだ」「消費者の嗜好(しこう)が高額商品からサービスへシフトすることは、インフレや利上げによる逆風と同様に2023年も続く」との見方を示した。
(樫葉さくら)
(米国)
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