2023年1月8日から新型コロナウイルスへの対応を調整、感染者の隔離措置やリスク地区指定を撤廃
(中国)
北京発
2022年12月28日
中国国務院共同防疫メカニズムは12月26日、「新型コロナウイルスによる感染に対して『乙類として分類し、乙類として管理する』を実施する全体計画案の通知」を発表した。
通知では、新型コロナウイルスの感染拡大防止・抑制と経済社会発展をより効率的に統合するため、新型コロナウイルスの感染に対する対応を「乙類として分類し、甲類として管理する」から「乙類として分類し、乙類として管理する」に調整し、調整後に発生する可能性のあるリスクに有効に対処するため、伝染病予防法に基づいて今回の計画案を策定したとしている(注1、注2)。
通知では、今回の変更の背景として、ウイルスの変異、感染拡大の変化、防疫経験の蓄積などにより、中国の新型コロナウイルス感染拡大防止・抑制は新たな情勢、新たな任務に直面し、防疫対応も新しい段階に入ったとの認識を示した上で、ウイルスの病原性の低下、重症化リスクの低下、治療対応能力の向上などを挙げ、各種の要素を総合的に評価した結果、今回の変更の基本的な条件を満たしていると判断したと説明した。
通知では、1月8日以降、新型コロナウイルス感染者に対して隔離措置を実施せず、濃厚接触者の判定を行わず、高・低リスク地区についても指定しないとした。感染者に対しては、レベル別・種類別の治療(注3)を行い、検査については「検査を希望する者が検査を受ける」方式に調整するとした(注4)。
このほか、高齢者などを対象とする2回目のブースター接種(4回目接種)の実施による、高齢者のワクチン接種率の引き上げ、新型コロナウイルスの感染治療用医薬品や検査試薬の備蓄(注5)、医療資源に対する投資拡大(注6)などについても規定された。
なお、今後も国内外のウイルス変異状況を動態的に追跡し、ウイルスの感染力、病原性、免疫回避能力などの重要な変化を評価し、タイムリーに判断して対応措置を取ること、感染拡大の強度や医療資源に与える負荷、社会の運営状況などをリアルタイムかつ総合的に評価し、感染拡大のピークを抑えるために動態的に集団活動や人の移動の制限措置を取ることもあると規定された(注7)。
(注1)伝染病予防法では感染症を甲類、乙類、丙類の3種に分類しており、乙類伝染病として指定された感染症や突発的な原因不明の感染症について甲類伝染病の予防・抑制措置を取る必要がある場合、国務院衛生行政部門が国務院に報告し、承認を得た上で公布・実施するものと規定されている。新型コロナウイルス感染拡大当初の2020年1月20日、国家衛生健康委員会は公告(2020年第1号)を発表し、新型コロナウイルス感染による肺炎を伝染病予防法上の乙類伝染病に指定する一方、甲類伝染病として予防・抑制措置を取ることとし、また、同肺炎を国境衛生検疫法に規定する検疫伝染病の対象に組み入れた。これまで新型コロナ防疫対応は上記の指定を根拠として実施されてきた。
(注2)国家衛生健康委員会も2022年12月26日、公告を発表し、新型コロナウイルス肺炎を新型コロナウイルス感染症に改称し、2023年1月8日から、新型コロナウイルスの感染に対して伝染病予防法に規定された甲類伝染病としての予防抑制措置を解除するとともに、国境衛生検疫法の規定に基づく伝染病の検疫管理対象からも外すとした。
(注3)通知では、重篤な基礎疾患のない無症状感染者、軽症者は自宅療養、一般的な症状の患者、高齢で重篤な基礎疾患があるものの容体が安定している無症状感染者・軽症者は準指定医療機関で治療を行う、肺炎を主要な症状とする重症者、重篤者、血液透析を必要とする患者は指定医療機関で集中治療を受ける、基礎疾患がある重症者、重篤者、および基礎疾患があり末端医療機関や準指定医療機関の治療能力を超える場合は三級病院で治療を受ける、と規定した。また、地級市を単位として、指定医療機関、準指定医療機関、総合病院で新型コロナウイルス感染者の治療用病床使用率が80%に達した場合、医療機関はアラートを発すること、医療資源に大幅な不足が生じたり、医療サービスが大きな打撃を受けたりした地級市については、省レベルの衛生部門が省内から人や物資を集めて支援を行い、必要な時には地域をまたいでの医療資源の支援派遣を国に申請するものとされた。
(注4)発熱や呼吸器症状のある外来患者、重症化リスクの高い入院患者、症状のある医療関係者について抗原検査あるいはPCR検査を行うとされた。
(注5)県レベル以上の医療機関は約3カ月分の漢方薬、抗ウイルス薬、解熱剤などを適時備蓄すること、末端の医療衛生機関はサービス提供範囲の人口の15~20%に供給できるよう備蓄を行うこと、人口密集地域ではより余裕をもって備蓄することなどが盛り込まれた。
(注6)入院用病床や重症患者用の病床の準備に重点を置き、高流量の呼吸治療装置、人工呼吸器、ECMOなどの重症患者治療用設備を十分に整えるなどとされた。
(注7)2022年12月27日に公表された「重点施設・機関・人員に関する乙類対応の防疫ガイドライン」によると、感染拡大が深刻な場合は、短期的に以下の人流減少のための措置を取ることができるとされている。
- 会議場、体育館などのスポーツ施設、文化施設、市場・スーパーマーケット、展示会場などでの不要不急の大型イベントの中止または延期。
- デパートやスーパーマーケット、銀行、市場などの営業施設におけるプロモーションなどの人が集まる活動の中止、スーパーマーケットや銀行の営業時間短縮。
- 比較的密室性が高い、娯楽・レジャー施設、入浴施設、宗教施設の営業・開放の一時停止。
- 駅や港、公園、観光地などの広い空間や開放的な公共の場における、旅客の流れの誘導の強化による、人の密集防止。
- 飲食店における、同時に食事する人数の制限、あるいは店内飲食の提供中止。
(小宮昇平)
(中国)
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