2022年の米国年末商戦、インフレや値引きで伸びは前年より鈍化を予想、全米小売業協会
(米国)
ニューヨーク発
2022年11月04日
全米小売業協会(NRF)は11月3日、2022年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)が前年同期比6~8%増の9,426~9,604億ドルになるとの見通しを発表した。2021年の売上高は8,893億ドル、伸び率は前年同期比13.5%増で、ともに過去最高水準を記録したが、2022年は伸びが減速する見込みだ。高インフレが長期化していることに加えて、小売り各社では過剰在庫を解消するために大幅な値引きを実施しており、これらが業績悪化につながるとの懸念が高まっている。
ネット販売を含む無店舗小売りは前年同期比10~12%増の2,628~2,676億ドルと、2021年の2,389億ドルを上回ると予想する。ネット販売は引き続き重要な販路であり続けるが、店舗での買い物も増え、伝統的な年末商戦の購買体験を求める動きも強まるとみられる。
同期間の小売業者による臨時雇用者数は45万~60万人になると見込み、2021年の66万9,800人を下回る予想としている。
発表について、NRFのマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は「消費者はインフレや物価上昇の圧力を感じており、所得水準の違いによって個人の支出行動には違いが見られるものの、回復力を保ち、購買行動を続ける」と述べた。一方で、同氏は同日の電話会見で、食料品やエネルギー価格の上昇に伴いって消費者は購買に慎重になっており、場合によっては貯蓄を切り崩して一気に支出することを抑えるために、「クッション的措置」として、クレジットカードを利用することもあると指摘し、これによって、プレゼントや年末年始の出費に影響が出る可能性があると述べている(CNBC11月3日)。
2021年の年末商戦は、小売り各社がサプライチェーンの混乱による品不足を避けるため、商品の発注を前倒しで在庫を確保し、消費活動も活発だった。しかし、高インフレが続いていることに加えて、2022年に入ってから消費者の購買行動が物品よりも外食や旅行などのサービスに支出する傾向が強まり、ウォルマートやナイキなどの大手小売業では在庫処理の対応に追われていると報じられている。ナイキが9月に発表した第1四半期(1~3月)決算では、北米の在庫が前年比で65%と急増、既に販売シーズンが過ぎた商品が大量に届いている。また、百貨店チェーンのノードストロームでも在庫圧縮のために大幅な値引きを計画している(「リテールダイブ」10月11日)。
NRFが実施したアンケート調査(注)によると、消費者の約半数(46%)は11月前からホリデーショッピングを開始するとした。インフレが進む中、家計への負担が集中しないよう購入時期を分散させている動きがみられる。消費者が早めに買い物を始める理由として、回答者の60%は「ギフトショッピングの予算を分散させるため」が最大で、前年の54%から上昇している。ギフトやその他のホリデー商品に対する1人当たりの平均支出予定額は832.84ドルで、過去10年間の平均(826.12ドル)とほぼ同水準となっている。購入方法別には、ネット購入が56%と最も多かったが、前年と比べてディスカウント店や中古品店を利用すると回答した消費者はいずれも増加しており、物価高で低価格店への需要が増えている様子がうかがえる。
なお、NRFは2022年通年の小売売上高については、前年比6~8%増の4兆8,600億ドルを上回ると見込んでいる。
(注)調査は10月3~7日に米国の消費者8,284人を対象に行われた。
(樫葉さくら)
(米国)
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