3月のインフレ率は記録的水準の7.0%、燃料価格高騰が響く
(英国)
ロンドン発
2022年04月15日
英国国家統計局(ONS)は4月13日、2022年3月の消費者物価指数(CPI)上昇率を前年同月比7.0%と発表、1997年の統計開始以降で最も高い数値となった。また、住宅費を含む消費者物価指数(CPIH)も、同6.2%で、2006年の統計開始以降の最高値となっている。
燃料価格の高騰は著しい。ガソリンの平均価格は1リットル当たり160.2ペンス(約264円、1ポンド=100ペンス、1ポンド=約165円、前年同月は123.7ペンス)、軽油の平均価格は同170.5ペンスとどちらも過去最高値になっている。さらに、自動車燃料と潤滑油の年間の価格上昇率は30.7%と、1989年1月以降で最も高い値となった。
2022年4月からエネルギー価格上限の引き上げも行われており、ONSは、4月の上昇率にその影響が出るとしている(2022年2月7日記事参照)。
ゴールドマン・サックスとドイツ銀行のエコノミストは、新型コロナウイルス感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻によってさらに悪化した燃料価格高騰、サプライチェーンの混乱のため、4月のCPIは9.0%を超え、さらに今後9.2%まで上昇する可能性があると述べている(「ガーディアン」紙4月13日)。
経済調査会社キャピタルエコノミクスのベサニー・ベケット氏はONSの発表に先立つ4月8日、ウクライナ情勢と中国でのロックダウンの複合的な影響などもあり、今後数カ月のインフレ予測の上振れリスクの懸念が高まっていると指摘していた。また、同社のルース・グレゴリー氏も13日、ONSの発表を受け、イングランド銀行への利上げ圧力が急速に強まっており、5月の金融政策委員会で政策金利を現在の0.75%から1%へ、2023年には少なくとも2%への利上げが実施されると予想した。
リシ・スーナック財務相は、サプライチェーンとエネルギー価格の世界的な高騰が、ウクライナにおけるロシアの侵略によってさらに悪化した可能性があるとし、国民の負担軽減のため2022年度(2022年4月~2023年3月)に約220億ポンド規模の家計支援を行うと述べた(「ガーディアン」紙4月13日)。
ONSの企業に対するアンケート調査(3月21日~4月3日)では、今後1カ月間の主な懸念として、「燃料価格」と「インフレ」が他の項目と比べて高い回答割合を示した。特に比率が高かった業種は、「燃料価格」では宿泊・飲食サービス業(35.1%)、「インフレ」では建設業(43.6%)と製造業(30.0%)だった。
英国小売業協会のヘレン・ディキンソン最高責任者(Chief Executive)は、小売業者はインフレの影響を受けながらも、低価格商品(value range)の拡充や、必需品価格の低下に取り組んでいるとした。
(島村英莉)
(英国)
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