米教育省、学生ローン返済の一時停止について4度目の延長決定、8月31日まで
(米国)
ニューヨーク発
2022年04月11日
米国教育省は4月6日、新型コロナウイルス対応で導入した学生ローン返済の一時停止措置を2022年8月31日まで延長することを発表した。2021年12月にも延長されて、5月1日が期限だったが(2021年12月24日記事参照)、今回で4回目の延長となる。
ジョー・バイデン大統領は声明で「(新型コロナウイルスのパンデミックによる)経済的な混乱から、依然として回復しきっていない。(予定どおり5月に終了した場合)何百万人もの人がローン延滞とデフォルトに直面する」と述べた。米国の学生ローンの債務者は4,100万人、債務残高は約1兆6,000億ドルで、非住宅ローン債務に占める金額は最大となっている(2022年2月16日記事参照)。今回の延長により、750万人が学生ローンのデフォルトを理由とする賃金の差し押さえなどから免れる見通しだ(「ワシントン・ポスト」紙電子版4月6日)。エリザベス・ウォレン上院議員(民主党、マサチューセッツ州)をはじめとする民主党の連邦議会議員が引き続き債務者1人当たり最大5万ドルの債務放棄を求めるなど、政治的に学生ローン返済の停止延長を求める声は大きく、11月の中間選挙を前に一定の配慮を見せたかたちだ。
他方、今回の延長は問題の先送りにすぎず、次の期限となる8月末に同制度を終了できるかは未知数だ。加えて、学生ローン返済を一時停止することで、一部の学生が財政的余裕を持ち、アルバイトなどの労働に消極的になれば、労働の供給量が減少して賃金上昇や高インフレに拍車がかかることになる。今回の延長に関して、ローレンス・サマーズ元財務長官が「誤ったマクロ経済政策だ」と述べる(「ウォールストリート・ジャーナル」紙4月6日)など、一部の専門家から批判の声が上がっている。3月の消費者物価は4月13日に発表されるが、本件延長の影響を含め、直近の物価水準の動向が注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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