米FRB、政策金利0.25ポイント引き上げ、2022年利上げは7回見込み、前回3回見込みから大幅増

(米国)

ニューヨーク発

2022年03月17日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月15、16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標0.00~0.25%を0.25ポイント引き上げ、0.25~0.50%とすることを決定した(添付資料図参照)。2020年3月から続けてきたゼロ金利政策を解除し、量的緩和策も今月で終了することから(2021年12月17日)、今後は金利の引き上げペースと量的引き締めの実施時期に焦点が移る。なお、今回の決定に関し、9人のFOMC委員の中で、ジェームズ・ブラード委員(セントルイス連邦銀行総裁)は金利引き上げ幅を0.5ポイントとすべきとして、唯一反対票を投じた。

今回の声明文では、ロシアによるウクライナへの侵攻について、米国経済への影響は極めて不透明としながらも、短期的にはロシアの侵攻とそれに関連する(地政学的)出来事がインフレにさらなる上昇圧力をかけ、経済活動を圧迫する可能性があるとして、警戒感を示した。また、今後のFOMCでFRBが保有する資産の削減を始めることを予定しているとして、早期に資産縮小の開始決定を行う可能性を示唆した。

今回の会合では、全地区連銀総裁らを含むFOMC参加者16人による中長期見通しも示された。緊迫化するウクライナ情勢や長期化する高インフレなどを背景に、2022年の実質GDP成長率は2.8%と、前回12月の4.0%から大幅に下方改定された。また、2022年のインフレ率(コアCPE)は4.1%と、前回の2.7%から大きく上方改定されている。他方、FF金利引き上げについて、2022年の利上げ見込み回数に関する委員の中央値は、前回は3回だったが、物価見通しの上方改定などにより、今回は7回となった。2022年のFOMCは残り6回あるが、この見込みどおりに進む場合、今後の会合で毎回利上げが行われる想定となる。また、利上げは2023年以降も引き続き行われる見込みで、2023年のFF金利の中央値は2.8%と、長期均衡金利と見込む2.4%を上回る水準となっている(添付資料表参照)。

ジェローム・パウエルFRB議長は会議後の記者会見で、今後の利上げについて「経済は非常に堅調であり、タイトな労働市場と高インフレを背景に、FOMCはFF金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切と予想する」として次回以降の継続的な利上げを明言するとともに、FRB保有資産の縮小について「早ければ次回5月の会合」で今後の縮小計画を決定する可能性があると述べた。長期化する高インフレについては「ロシアのウクライナ侵攻による原油やそのほかの財の価格上昇は、国内の短期的なインフレにさらに上昇圧力をかけるだろう」とし、「金融政策を適切に行えば、労働市場が堅調な間はインフレ率が2%に戻ると予想している」と述べつつも、「戻るにはこれまでの予想よりも時間がかかるだろう」として、高インフレが長期化する可能性があるとの認識を示した。

エネルギー価格高騰によるコストプッシュ型インフレが進み、景気後退とインフレが同時進行するスタグフレーションも指摘される中、パウエル議長は今後1年の景気後退の可能性を否定し、インフレ抑制を重視して利上げを優先するとともに、資産縮小にも取り組む姿勢を示した。しかし、2015年12月以来のゼロ金利からの利上げになることに加え、FRBの保有資産は新型コロナウイルス感染拡大前(2020年2月)から4兆ドル以上積み上がっていることから、コストプッシュのインフレを抑制しつつ雇用最大化も実現するという難しい政策バランスがFRBに求められている。

(宮野慶太)

(米国)

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