バイデン米政権、「インド太平洋戦略」を発表
(米国、中国、日本、オーストラリア、韓国、フィリピン、タイ)
米州課
2022年02月14日
米国のバイデン政権は2月11日、世界人口の半数以上および世界経済の約3分の2を占めるインド太平洋地域における同国の方針として「インド太平洋戦略」を発表した。米国は第二次世界大戦後、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイとの同盟条約を通じてインド太平洋地域との関係を強固なものにしたが、今後、同盟国およびパートナー国とともに同地域の発展に貢献しなければ、国益を増進させることはできない、と危機感をにじませている。
本戦略は、インド太平洋地域で影響力の拡大を図る中国に対抗して、米国による関与の強化を示すものだ。今後10年間の米国の取り組みは、インド太平洋および世界に恩恵をもたらしてきた規則や規範が中国によって変更されるかどうかを左右するとし、バイデン政権は、同盟国、パートナー国、地域機関とともに、次の5つの目的を追求していくことを明らかにした。
1. 自由で開かれたインド太平洋の推進
米国は(同地域における)情報公開および表現の自由を強化し、他国による干渉とも戦うとした。また、米国は南シナ海や東シナ海などの海洋状況に対する法に基づくアプローチを支援し、新興技術、インターネット、サイバー空間についてパートナー国とともに共通の取り組みを進展させる。
2. 地域内外における連携の構築
特に同盟を結ぶ5カ国(オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、タイ)および地域を主導するパートナー国(注)との関係を深化させる。
3. 地域の繁栄の促進
2021年から構想の実現に向けた作業が進む「インド太平洋経済枠組み」を21世紀にとって重要な多国間パートナーシップと位置付け、デジタル経済やエネルギー転換、気候変動への取り組みに生かす(2022年2月9日地域・分析レポート参照)。
4. インド太平洋における安全保障の強化
パートナー国とともに台湾海峡の平和と安定を維持し、台湾の将来が彼らの願いや利益に基づいて決められる環境を確保する。併せて、米国は朝鮮半島の完全な非核化を実現し、北朝鮮による人権侵害に対処するために対話の継続を求め、同国の挑発に対応できるよう韓国および日本との拡大抑止や連携を強化する。
5. 国境を越えた脅威に対する地域の回復力の構築
世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べてセ氏1.5度に抑制するために中国に行動を促し、インド太平洋地域が温室効果ガスの排出量を実質ゼロの社会を創れるようにパートナー国と協力する。また、新型コロナウイルスの収束や共通の脅威に対する回復力を構築するために、当該地域と連携していく。
(注)インド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ニュージーランド、シンガポール、台湾、ベトナム、太平洋島しょ国。
(片岡一生)
(米国、中国、日本、オーストラリア、韓国、フィリピン、タイ)
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