欧州委、標準化における国際的な主導権確保に向けた戦略を発表
(EU)
ブリュッセル発
2022年02月04日
欧州委員会は2月2日、標準化を通じてEUの国際的な競争力を強化すべく、新たな標準化戦略を発表(プレスリリース)した。同戦略では、EUが気候変動への対応やデジタル化への移行を主導し、急速な発展の続く技術規格に民主的な価値を組み込んでいくためには、より戦略的なアプローチが必要とした。また、国際的な規格の策定において、EUはこれまで主導的な役割を担ってきたが、近年、EU域外の国々が標準化を積極的に推し進めるなど地政学的な変化がみられるとして危機感を示している。欧州委のティエリー・ブルトン委員(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)は同日、技術規格は戦略的に重要で、EUの技術的な主権の確保と、域外国への依存を減らし、EUの価値を守るためには、今後もEUが主導的な立場を維持する必要があると強調した。
欧州規格と国際的な標準化の両面から、優先分野の対応強化を急ぐ
欧州委はまず、「欧州グリーン・ディール」や「欧州のデジタル化」といったEUの政策に沿ったかたちで、欧州規格の迅速な策定を目指すとしている。今回、同時に発表された2022年欧州標準化のための事業計画で選定された優先分野は以下のとおり。
- 欧州グリーン・ディール、欧州のデジタル化、単一市場の強靭(きょうじん)化に関連した既存の規格の見直し
- 新型コロナウイルス用ワクチンと医薬品の生産
- 重要な原材料(バッテリーおよびバッテリー廃棄物)
- 気候変動に適応したインフラとその資材としての低炭素セメント
- 水素技術とその関連部品
- 水素の輸送と貯蔵
- 半導体の安全性・真贋(しんがん)・信頼性の認証に関する規格
- データスペースにおけるスマートコントラクト(契約の条件・執行内容を事前に設定したプログラムによる取引プロセスの自動化)
また、欧州規格は欧州の代表者によって決定されるべきだとして、標準化規則の改正案も提案している。欧州標準化制度においては、官民パートナーシップを基にした3つの欧州標準化機関(注)が中心的な役割を担っているが、近年は、EU域外を本拠地とする大企業の過剰な影響力が問題視されている。この改正案では、欧州標準化機関のガバナンスを強化し、欧州規格の重要な決定に関しては、各ステークホルダーを含むEUおよびEEA(欧州経済領域)加盟国の標準化当局が行うとしている。
さらに、今回の戦略では、国際的な規格の策定におけるEUの主導権を向上するために、EUと加盟国の標準化当局との協力を強化するとしている。そのために、EUにとって国際的に重要な優先分野を選定し、こうした分野でのEUと加盟国の政治的な調整を行うハイレベル会議を開催するとしている。
(注)欧州標準化委員会(CEN)、欧州電気標準化委員会(CENELEC)、欧州電気通信標準化機構(ETSI)。
(吉沼啓介)
(EU)
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