「脱炭素」達成に向け、原発6基以上を建設へ
(フランス)
パリ発
2022年02月17日
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月10日、原子力発電所向け低速蒸気タービンを製造する米国ゼネラル・エレクトリック(GE)のフランス東部ベルフォール工場を訪問し、2050年でのカーボンニュートラル達成に向けたエネルギー政策を発表した。「フランスを30年以内に化石燃料依存から脱却する世界で最初の主要国とし、気候変動対策の模範となりつつ、エネルギーと産業の独立性を強化する」ことが目的となる。
マクロン大統領は化石燃料からの脱却に伴い、最大60%の低炭素電力の増産が必要になると指摘し、再生可能エネルギーと原子力の2本立てで電力の供給力を増やす方針を示した。
原子力については、既存原発の運転を延長しつつ、EPR(欧州加圧水型炉)を改良したEPR2の建設計画に着手する。具体的には、運転開始から40年を超えた既存原発のうち、安全性が確保できる原発の運転を延長するとともに、フランス電力(EDF)と原子力安全局(ASN)が50年を超えた原子炉の運転延長に関わる安全基準について調査を開始する。原子炉建設では、6基のEPR2建設に着手するほか、8基のEPR2追加新設についても検討する。EPR2の1号機は2028年に着工し、2035年での運転開始を目指す。
これとは別に、2030年までに10億ユーロをかけて小型モジュール炉(SMR)など革新的な原子炉の開発を促す。このうち5億ユーロをEDFが進めるSMR開発プロジェクト「NUWARD」(プレスリリース)に充て、残りの5億ユーロは応募により選定されたプロジェクトに投資する予定で、これにより2050年までに25ギガワット(GW)の電力供給を見込む。
再生可能エネルギーについては、太陽光発電の導入量を2050年までに現在の10倍に当たる100GW超に引き上げるほか、洋上風力発電施設を2050年までに50カ所設置し、40GWの導入を目指す。陸上風力については、発電施設の建設に対する地元住民の反発が根強いことから、従来の目標を下方修正し、2050年までに2021年末の導入量18.5GWを倍増する。次世代浮体式洋上風力発電などの研究開発には、投資プラン「フランス2030」(2021年10月14日記事参照)の枠内で10億ユーロを投資する。
マクロン大統領の発表に合わせて、EDFは同日、GEの低速蒸気タービン製造事業の一部買収について同社と合意したと発表した(プレスリリース)。買収にはEDFの原発施設に導入されている低速蒸気タービン「アラベル」の製造事業が含まれる。アラベルの技術などはEPR2、SMRの建設にも採用される予定で、EDFは買収により原発建設のカギを握る技術や能力の獲得強化を図るとした。
(山崎あき)
(フランス)
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