ロシア、ウクライナ東部の分離独立派支配地域を国家承認

(ロシア、ウクライナ)

モスクワ発

2022年02月24日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部でロシアへの編入を求めるウクライナ東部の分離独立派が実効支配する「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」を国家として承認する大統領令に署名した(2022年2月21日付大統領令第71号、第72号)。同時に、国防省に対して両地域での平和維持活動を行うよう指示した。

両地域の独立承認に先立って行われたフランスのエマニュエル・マクロン大統領およびドイツのオラフ・ショルツ首相との電話会談では、両者から失意が伝えられた。

国際社会からは非難が相次いでいる。EUの欧州委員会ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と欧州理事会(EU首脳会議)シャルル・ミシェル常任議長はツイッターで、「ウクライナにおいて分離派が占拠する領土の承認は、国際法、ウクライナの領土保全、ミンスク協定の重大な違反」とロシアの対応を非難した。

また、2月22日に行われた国連安全保障理事会において、リンダ・トーマス・グリーンフィールド米国大使は「(今回の国家承認は)ウクライナ侵攻への口実だ」と非難した。

他方、ロシア国内では、政府に批判的なメディアも含め「悪い中ではましな選択」との意見がみられる。政治学者のアッバス・ガリヤモフ氏は「ロシア側も戦争を望んでいない」とし、国家承認はプーチン大統領にとって、行き詰った状況から抜け出すための戦争に代わる選択肢だったとの認識を示した(ドシチ2022年2月21日)。

政治学者のイワン・プレオブラジェンスキー氏は「国家承認によって想定される経済制裁は、ロシアがウクライナに侵攻した場合に比べ小規模になるだろう」との見方を示した。その一方で、2月21日に開催された拡大安全保障会議で「ドネツクおよびルガンスク両人民共和国」のロシアへの編入が言及されたことに触れ、事態がここでと止まるかは不透明としている(ドシチ2022年2月21日)。

ウクライナ東部での軍事的緊張の悪化が報じられた、2月21日のモスクワ証券取引所指数の終値は前日比10.5%下落の3,036ポイント、RTS指数は13.21%下落の1,207ポイントとなった。翌22日は独立承認を受けて下落から始まり、午前10時までにモスクワ証券取引所指数は前日比7.28%減、RTS指数は8.38%下落した(レンタ・ルー2月22日)。

(菱川奈津子)

(ロシア、ウクライナ)

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